Situation Normal

忘れないように……

元旦の新聞一面

2009-01-06 17:00:44 | 映画 - その他
朝日新聞の元旦の第一面は『陰るハリウッド』で、記事は第二面の『「ボリウッド」花盛り』へと続いた。これは大晦日から続く連載 世界変動の第二回。

ラジオ・テレビ欄だけをまとめた紙面には『007 慰めの報酬』『天使と悪魔』『ターミネーター4』他の一面広告が入るなど、ハリウッド映画が一番の広告主と言えるような元旦の紙面に大胆なことをしたなと、まず驚きました。しかし残念ながら、肝心の記事を読むと、少しズレてると感じました。

記事はまず映画『スラムドッグ$ミリオネア』の話から始まります。『トレインスポッティング』などのヒット作で知られるダニー・ボイル監督の最新作です。細かいですが、邦題表記が記事では『スラムドッグ・ミリオネア』と間違ってました(正しくは、中黒ではなくドル記号)。

この映画は小説『ぼくと1ルピーの神様』を原作としており、大金がもらえるクイズ番組が絡んだインドが舞台のお話です。このクイズ番組は、みのもんたの司会で日本でもヒットした「クイズ$ミリオネア」のインド版。元はイギリスの Who Wants to Be a Millionaire? という番組で、世界中で各国版が作られてます。昨年日本でも公開された2006年のフランス映画『ぼくの大切なともだち』でも、この番組のフランス版が出てきます。

記事では、インド人俳優のみが出演するイギリス製作のこの映画が、アメリカで好評となっていることを伝え、ハリウッド大作の低調を描いてます。記事曰く「ハリウッドに染みついてきた「打ち上げ花火」的な映画そのものの行き詰まり」です。

その代表として映画『ダークナイト』が挙げられています。曰く「昨年最大のヒット作「ダークナイト」は、米国で史上2位の興行収入を記録したが、第2の市場の日本では、外国映画で16位に低迷」

この記者は『ダークナイト』を観てないんだろうなぁ。私には、打ち上げ花火的な映画と『ダークナイト』は対極にあり、『ダークナイト』が日本でヒットしなかった原因は全く違うところにあるように思います。

『ダークナイト』は非常にクオリティの高い作品であり、アカデミー賞で作品賞なども狙えるくらいの映画だと思います。まぁ、アメリカで12月公開のアカデミー賞狙いの作品群にはじき出されるんだけど。

そして、日本でヒットしなかった原因は、アメコミは馴染みがない、バットマン映画はこれまでも日本では大ヒットに至っていない、一般にも馴染みのある人気スターが出てないと日本では大ヒットしない、などなど色々あると思います。


そして、第二面の記事『「ボリウッド」花盛り』。

インド映画といえばボリウッド (Bollywood) か、うーん。パンジャーブ語映画はパンジャーブ州の Punjwood で製作されてるし、テルグ語映画はアーンドラ・プラデーシュ州のトリウッド (Tollywood) で製作されてるし……って、そんなマニアックな話はいいのか。

記事には「(インドの)国民の識字率が低く字幕映画が敬遠される事情もあり、ハリウッド映画も寄せ付けない」とある。しかし、世界中で公開されるタイプのハリウッド映画って、日本では字幕スーパーを入れて公開されてるけど、世界的には吹き替えのほうが多いのでは。字幕だから敬遠されているというのは的を外している。

そのあと記事は、ハリウッドの映画会社がインドや日本や中国でも製作を行うようになってきていることを告げている。記事では最近の流れのように書いているが、その動きはここ10年くらいで何度も行われては失敗してなどの繰り返しなのではないだろうか。


長々と書きましたが、記事全体の内容はいいと思ってます。ただ、その代表として『ダークナイト』が日本でヒットしなかったことを持ってきたことに首を傾げてしまい、筆をとりました。

日本での映画の興行成績を見て問題と感じるのは、質の高い作品がヒットしないことだと思います。テレビドラマの映画化作品など、批評家に低い評価の作品などがヒット作の多くを占め、質の高い作品はヒットしないし、それどころか劇場公開もされずに終わっていったりしていってます。

打ち上げ花火的なCG頼りのハリウッド大作の問題よりも、そっちの方が重大です。そして、打ち上げ花火の代表として『ダークナイト』を持ってきてしまう記者も、映画館に足を運ばない今の人々の一人と感じました。


〈連載〉世界変動 - ニュース特集
〈連載―世界変動〉陰るハリウッド
〈連載―世界変動〉「ボリウッド」花盛り

アート系映画、真冬の次には カンヌ話題作でも未公開


追記
映画館で『ダークナイト』の予告編がかかってました。2009年1月24日(土)から松竹チェーンのメイン館6館で再公開されるそうです。アメリカでもIMAX版が1月23日に再公開。ジョーカー役の故ヒース・レジャーはアカデミー賞の助演男優賞の大本命ですからね。

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