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day by day

癒さぬ傷口が 栄光への入口

吉川晃司と私(2002)~PANDORA~

2019-10-29 | キッカワ。

オリジナルアルバム「HOT ROD」(1999/8/25)
映像作品 LIVE・DOCUMENT「HOT ROD MAN 」(2000/4/26)
シングル「ナイフ」(2000/9/27)
LIVE/ベストアルバム「Spirit×ナイフ」(2000/12/20)


今思うと、それほどたいしたインターバルではなかったかもしれない。
吉川晃司はレコード会社を徳間ジャパンへと移籍、そして2002年8月からのツアーに先駆けて6/26にはシングル「パンドーラ」、8/7に待望のオリジナルアルバム「PANDORA」がリリースされた。

アルバム発売前の7月、東京と大阪ではプレツアーとも言えるライブイベントが開催されている。

ONE NIGHT SPECIAL LIVE Propaganda 2002

東京ではNHKホールでの開催だったが大阪ではライブハウスであるなんばHatch。私はNHKには行っていないのでもしかしたらメニューも違ったかもしれない。
なんばHatchは今でこそミナミのライブハウスとしてzeppと並びよく使われる会場だが、FM大阪が新しく出来た湊町リバープレイスへスタジオを移転したのと時を同じくして新設でオープンしたライブハウスだった。
杮落しはSOPHIA。
なのに、なぜかその前日に「プレオープン」として開催されたのがこの吉川晃司のライブイベントだった。
この時の日記にはセットリストまでは記録しておらず、いつも参考にさせて頂いているセトリサイトにも掲載されていないのではっきりしたセットリストの記憶はないのだがこのオープニングに──

奴が現れた。

流れてきた映像は、絵もアテレコもヘタウマなアニメーション。
遺跡の発掘現場からなぜか出土した古いフィルム。
「少しだけお見せしよう」
と言われて映し出されたのが『GO!GO!伏見ジェット』というタイトルだった。

新曲のPVのメガホンを三池崇史監督がとり、吉川晃司が浪人姿となってひたすら向かってくる敵をばったばったと斬りむすんでゆく痛快チャンバラビデオとなった旨は、今ほど情報が溢れていなかった当時でも事前に耳には入っていた。
浪人侍姿にサングラスのようなゴーグルを装着して登場した吉川晃司の伏見ジェットは、もちろん同じく三池監督による「漂流街」に登場した吉川演じるヤクザ「伏見」から生まれたキャラクターである。
映画の中で伏見が拳銃を撃ちまくっていたように、刀を軽々と振り回し敵をなぎ倒してゆく伏見ジェット。外連味満タンのSF娯楽時代劇で最後にはなぜか巨大化したカマキリの化け物と戦うべく背中からジェット噴射器を出して空を飛び巨大カマキリに立ち向かう。いやお前は最終兵器彼女か。仮面の忍者赤影か。

と、本人が登場する前に一通りつっこみ終わったところでやっと本人登場。新曲披露──という流れだった。

このPVは(アルバムの初回盤に封入されていたような気もするが)後にシングル「The Gundogs」「恋のジェリーフィッシュ」との3曲で伏見ジェット三部作と呼ばれ、The Gundogsとは2連でクリップ集としてもリリースされている。


と、ここまでものすごくナチュラルに「PV(プロモーションビデオ)」と書いてきたが現在一般的に使われているのは「MV(ミュージックビデオ)」の方なので以降はそのように記述します。だってそれが普通だったんだよこの世代の人間はよ。ビデオクリップって言い方ですらちょっとカッコつけた言い方だったんだよすまんな。

とにかくパンドーラのチャンバラMV上映のイメージが強かったこのイベントライブだったが、ここで新しいアルバム「PANDORA」に収録されている曲が次々と演奏されうわーっ!となった記憶も強い。吉川晃司の楽曲はCDよりライブで聴かなければ良さがわからないとかねてから思っている私がCDより先にライブで新曲を聴いたらこれはよほどの駄作でない限り気に入るに決まっている。

ツアーに先駆けて聴いたそんなアルバム「PANDORA」は、1曲目からTOKYO CIRCUS-The Gundogs-Fame&Money-crackと畳みかけてきて、ミディアムにバラードが箸休め的に入ったと思ったらマシンガンジョーパンドーラ。なんだこの曲順。

ポリドール時代のアルバムから何かが変わってきている気は少ししていた。ただまだ少し火薬が湿気っている感じだった。
1999年から3年。この爆発力をずっとずっと溜め込んできたのか。
これを引っ提げたアルバムツアーがすごくならないわけがない──予感はしていた。


8月16日から始まったツアー
KOJI KIKKAWA CONCERT TOUR 2002 "スマッシュTHEパンドーラ"

私は大阪以外どの会場に行ったのかちょっと記憶が曖昧なのだが、とにかくファイナルの印象があまりにも強烈すぎて、そのせいもあって後にこのファイナルが円盤化された時にバカみたいに見たせいもちょっとあるかもしれないと思う。
約2か月、10月19日のNHKホールがツアーファイナルだった。
私は3階席。ちょっと近隣の方の体積()もありけっこう窮屈な思いもした。──開演までは。

吉川晃司のライブに集まるファンはそれまで、何というか少しクールというかスカシてるというか。とにかく、ライブの最中はバカみたいに相当盛り上がるくせに終わったら「あ、もう段取りは終わりだよね。終わった終わったーお疲れ~」みたいな空気がすぐに充満する雰囲気だった。
アンコールも、一旦座って汗をふいて水分補給してはー疲れたと言って同行者とちょっとおしゃべりして、それからだれかが始めたアンコールに乗っかっていく──みたいな、アンコールはお約束でどうせ絶対出てくるでしょというちょっと舐めた態度の人も多かった印象だった。
他のライブに行くと予定アンコールが終わっても喝采が止まないとかもう1回出てくるまで粘るとか、引っ込んで姿が見えなくなった瞬間からアンコールの拍手が始まるとか、そういう熱意みたいなのは普通なのだと知ることが出来たのだがなにしろ吉川の客席はなぜかそこまで熱意があるように見えなかった。少なくとも私はそう感じていた。

ところがこの日は違っていた。
自分だけの印象なのかと思っていたら、後にライブレポートや映像化された際のライナーノートなどにも「伝説のライブ」的に書かれていた。ああ、あれは本当に「何か」が降りてきていたライブだったのだ。

繰り返すが3階席のそれもわりと後ろの方だった。いつもならもう少し冷静に見ていてもおかしくない場所だった。
その場所から見下ろす会場全体が、ものすごい熱を放って渦を巻くようだった。
「予定アンコール」という言い方もあまり好ましいものではないが、実際用意されている曲はあるわけで。このツアーでは2回のアンコールで3曲を演奏されるのがいつものパターンだった。
最後に「せつなさを殺せない」をやってしまえば、だいたいの客は満足してほっと息をついて帰路につくものなのだ。

すさまじい盛り上がりで
「せつなさ」が終わって
客電がついて
「本日の公演はすべて終了しました」のアナウンスがかかった。
ステージには早くも撤収作業に入ろうとスタッフがうろうろし始めていた。
会場には、イノセントスカイが流れ始めていた。

けれど、誰もステージに背を向けなかった。
(※誰も、というのは盛ってます。帰った人もいるかと思う)
だれかが音頭をとったわけでもなく、みんな口々に、流れるBGMに合わせて

イノセントスカイを歌っていた。

その声は徐々に歌っていなかった人を誘い、やがて会場いっぱいの大合唱になった。


この時の光景が、このライブを映像化した作品の中で「主人公」だった照明スタッフの女性の目線から記録されていた。
いつものように片付けようとしていた彼女。
やむことなく、それどころか大きくなっていく「イノセントスカイ」の大合唱。
それを見て戸惑った彼女の撤収の手が止まる。
「えっ、やらないよね…?」

そして

再び客電が落ち、ステージにライトが当たった。
こんなのこれまで見たことなかった。
客電がついたのに呼ばれて出てくる吉川晃司の姿なんて。

「これがほんとのアンコールだな」

笑いながら吉川晃司は言った。
LUNATIC LUNACY。

OK、ばらしてやろうか。


この時のセトリ(拾いもの)


TOKYO CIRCUS
ナイフ
パンドーラ
Fame & Money
You Gotta Chance~ダンスで夏を抱きしめて~
にくまれそうなNEWフェイス
RAIN-DANCEがきこえる
Little my girl
すべてはこの夜に
終わらないSun Set
もしも僕が君ならば
Juicy Lovin'
MAJESTIC BABY
マシンガンジョー
Crack
LOVIN' NOISE
FANTASIA
The Gundogs
Fall in Dream

=アンコール=
GIVE ME A BREAK

=アンコール2=
ユメノヒト
せつなさを殺せない

=アンコール3=
LUNATIC LUNACY



単なる印象なのだけど。
これを境に吉川晃司と客席のファンの距離はこれまでと比べ物にならないくらい近づいた気がしている。
肩の力が抜けたように、
自由に泳げるように、

ステージの上の無敵の吉川はもっと自由になった。

おまえはおまえを脱ぎ捨てろ。





そして何かが爆発したツアーは10月に終了したのだが前年で味をしめたのかなんなのか。12月にはまたクリスマスミニツアーが行われた。今回は仙台大阪名古屋東京福岡の5都市6公演。うち大阪と東京2本の3本に参戦。

X'mas Carol Drive 2002

ブラックサンタクロースのラバー人形(わりと大きい)がついたサイリウムがプレゼント(笑)されたのだが吉川ファン場内演出に協力してくれなさすぎ問題は昔から根強いのでみんなこれをどのタイミングで点灯して振ればいいのかわからずキョドる。
だいたいライブハウスでサイリウム配られてもほんとこまる(真顔)。

前年もそうだったが、このX'mas Carol Driveはちょっと気楽にリラックスしてやる感じがいい。


SOLITUDE
マシンガンジョー
キャンドルの瞳
パンドーラ
Fame & Money
Crack
サムライ
I'M IN BLUE
SACRIFICE
No No サーキュレーション
A-LA-BA LA-M-BA
IMAGINE HEROES
FANTASIA
TOKYO CIRCUS
The Gundogs
BOY'S LIFE

=アンコール=
AFTER THE RAIN
見上げてごらん夜の星を
Happy Xmas(War Is Over)

東京1日目は整理番号2ケタ台げと。いいポジションで見れた。
こういうイベントライブは映像作品になりづらいので貴重な体験だと思う。
「サムライ」は沢田研二さんの、
「見上げてごらん…」は坂本九さんの
「Happy Xmas」はジョン・レノン&オノ・ヨーコの
それぞれの名曲のカバー。
偉大な先人の名曲をカバーするにはそれなりの自信が必要だと勝手に思っているのだがきっとそれが身についたんだろうなとこれまた勝手に思っている。
そしてジョン&ヨーコのこの歌をチョイスしたのは単なる有名なクリスマスソングだというだけでは──きっと無いのだろう。


---吉川晃司と私 buck number---
【1】(1984~85)~出会う前~
【2】(1986)~鮮烈すぎる出会い~
【3】(1986~1988)~解体への…~
【4】(1989~1990)~COMPLEX~
【5】(1991)~LUNATIC LUNACY~
【6】(1992)~Shyness Overdrive~
【7】(1993)~10th Anniversary~
【8】(1994)~My Dear Cloudy Heart~
【9】(1995)~FOREVER ROAD~
【10】(1996)~BEAT∞SPEED~
【11】(1996~97)~0015→HEROIC Rendezvous~
【12】(1999)~HOT ROD~
【13】(2000)~HOT ROD MAN RETURNS~
【14】(2001)~SOLID SOUL~
【15】(2002)~PANDORA~
【16】(2003)~Jellyfish&Chips~
【17】(2004)~20th Anniversary~
【18】(2005)~エンジェルチャイムが鳴る夜に~
【19】(2006)~Savannah Night~
【20】(2007)~TARZAN~
【21】(2008)~SEMPO,and・・・~
【22】(2009)~25周年、両刃の剣を携え~
【23】(2010)~夏と冬のGROOVE~
【24】(2011)~日本一心~
【25】(2012)~愚~
【26】(2013)~SAMURAI ROCK~
【27】(2014)~反発の30年~
【28】(2015)~骨折してもシンバルキック~
【29】(2016)~WILD LIPS~
【30】(2017)~ライブこそ人生~
【31】(2018)~武道館で、笑顔の再会を~
【32】(2019)~吉川晃司、起動。~
【33】(2020)~空に放つ矢のように~
【34】(2021)~BELLING CAT~
【35】(2022)~OVER THE 9~

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