day by day

癒さぬ傷口が 栄光への入口

吉川晃司と私(1992)~Shyness Overdrive~

2005-06-05 | キッカワ。
1992年。
それはあるミュージシャンを愛する人々にとってはおそらく忘れることのできない年号ではないかと思う。
彼はカリスマと呼ばれた。
本人が望む望まざるにかかわらず、彼はそう呼ばれた。
私はそのミュージシャンにはとりわけ興味はなかったし、アルバムを1枚聴いたことがある程度でどちらかといえば「あまり好きにはなれない」部類の音楽だった。

けれど、彼が、ひとつだけ私の心に落としていったものがある。



91年のソロ復帰作・「Lunatic LION」で過剰なまでの疾走感を見せた吉川晃司は、92年に入って突然そのスピードを緩めた。
例えるなら直線を猛スピードで疾走し、コーナーに差し掛かってスピードを落としたという風に思える。つまり、コーナーを脱出すればまたトップスピードにのせるつもりなのは容易に想像できた。

92年の初頭に発売されたせつなさを殺せない。ファンにも愛されている楽曲だがヒットとまではいかずとも一般の人の耳にもそれなりに届いたものだと思う。続いて3月にはラブソングを集めたベストアルバム・TOO MUCH LOVEも発売された。
ちなみにこの頃から吉川晃司のアーティスト写真はちょっと妙な傾向だった。
吉川の持つ荒々しさを敢えて包み隠し、妙に「綺麗な」写真が多かったと記憶している。

…なんのブームだったんだろうなぁ…(笑)

8月にはアルバムの先行シングル、ジェラシーを微笑みにかえてが発売された。
ここらで私は少々彼の進みたい方角がわからなくなったのだが、とりあえず「せつなさを殺せない」が多少売れたせいか似た路線でキャッチーにいこうとしたのかなと想像したりしたものである。ともあれ、これはライブではノリにくいので個人的には評価しにくい。

そして9月。
結局前作から1年半のインターバルをおいてようやく新作・Shyness Overdriveが発表された。
第一印象は正直いって「?」
どうにもピンとこなかったのを覚えている。前作の疾走感とのギャップが激しかったのかもしれない。
よく聴きこんでいるうちにアルバム全体の印象はソフトである癖に、実はBlain SUGERFANTASIASEX CRIMEFall in Dreamなど今もライブで盛り上がる突っ走り系の曲が多く含まれていたことに気付く。
不思議な印象のアルバムだった。

同じ9月にはツアーが始まった。私は神戸・京都・大阪に参戦。
オープニングのFANTASIAで真っ赤なガウン姿で光を切り裂くように登場した姿が印象深い。
ファイナルの大阪はやはり年末だったが、アンコールで吉川のマネージャー氏がその赤ガウンを着て登場し、裏方さんたちのバンドによる演奏で「せつなさを殺せない」を。
めったに見れないお遊び企画でとても楽しく年末を過ごすことが出来て嬉しかった……。


さて、このアルバム「Shyness Overdrive」の最後から3曲目に、星の破片(かけら)という曲がある。

私はこの曲のタイトルを見た瞬間、あっと思った。


この年の4月に、一人のカリスマと呼ばれたミュージシャンがこの世を去った。
彼は吉川晃司と同い年で、音楽性はまるで違うものの若い頃は一緒につるんで遊んでいたというのは有名な話だった。

彼の曲の中に「太陽の破片」というものがあった。

あとで知ったことだが、彼の追悼式だか追悼イベントの時に、吉川はこの「星の破片」を歌ったのだという。

私はその曲を聴いて、その歌詞を読んだ。
悲しい歌だった。
私はその逝ってしまったミュージシャンの死を、申し訳ないが自分にとって悲しいことだとは受け止めてはいなかったけれど。
「星の破片」が悲しすぎて、涙が出てきた。

この曲を、吉川晃司がライブで歌っているのを私は聴いたことがない。
おそらく、普通のライブでは歌っていないと思う。

あの吉川に、こんな悲しい歌を書かせやがって。
いつか吉川がこの歌をライブで歌えるようになるまで、私は許さないからね。

そのミュージシャンの名前は、尾崎豊───という。


---吉川晃司と私 buck number---
【1】(1984~85)~出会う前~
【2】(1986)~鮮烈すぎる出会い~
【3】(1986~1988)~解体への…~
【4】(1989~1990)~COMPLEX~
【5】(1991)~LUNATIC LUNACY~
【6】(1992)~Shyness Overdrive~
【7】(1993)~10th Anniversary~
【8】(1994)~My Dear Cloudy Heart~
【9】(1995)~FOREVER ROAD~
【10】(1996)~BEAT∞SPEED~
【11】(1996~97)~0015→HEROIC Rendezvous~
【12】(1999)~HOT ROD~
【13】(2000)~HOT ROD MAN RETURNS~
【14】(2001)~SOLID SOUL~
【15】(2002)~PANDORA~
【16】(2003)~Jellyfish&Chips~
【17】(2004)~20th Anniversary~
【18】(2005)~エンジェルチャイムが鳴る夜に~
【19】(2006)~Savannah Night~
【20】(2007)~TARZAN~
【21】(2008)~SEMPO,and・・・~
【22】(2009)~25周年、両刃の剣を携え~
【23】(2010)~夏と冬のGROOVE~
【24】(2011)~日本一心~
【25】(2012)~愚~
【26】(2013)~SAMURAI ROCK~
【27】(2014)~反発の30年~
【28】(2015)~骨折してもシンバルキック~
【29】(2016)~WILD LIPS~
【30】(2017)~ライブこそ人生~
【31】(2018)~武道館で、笑顔の再会を~
【32】(2019)~吉川晃司、起動。~
【33】(2020)~空に放つ矢のように~
【34】(2021)~BELLING CAT~
【35】(2022)~OVER THE 9~
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4 Comments

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Unknown (マダムO)
2005-06-05 15:02:14
私はキッカワさんから派生してオザキを聴いて

そしてハマった人です(苦笑)

COMPLEX以前の頃、キッカワさんがやってたラジオで

オザキの音楽をかけてたこともあるし

ゲストに呼んでたこともあります。

すごく仲がよかった。

オザキが死んだ時私はかなり落ち込んだファンの一人です。

キッカワが今でも彼のことをコメントしないのは

それだけ友情(想い)が深かったんだろうなと思っています。

そうやって考えると、キッカワさんも色々な経験をしていますね。

それが今の吉川晃司につながっているんですな…。
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マダム (さいん)
2005-06-05 17:15:56
キッカワが「死んだやつの話をするのはフェアじゃない」と言ってたのを聞いたかインタビューで読んだかしたことがあります。キッカワらしいです(笑)

去年テレビに出まくってた時には、誰もが知ってるゴミ捨て場で寝てた話とか岡村ちゃんと一緒に遊んだ話とか、そういうのならしてましたけどね。

返信する
おばんです。 (shimaco)
2005-06-06 23:34:19
トラバありがとうございまーす!

やっぱり、「星の破片」は涙しますよね。切ない歌です。

いつの日かは、ライヴで歌ってくれるんだろうか…?

もし、そんな日があるのなら、その日まで付いていきましょう!
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shimacoさん (さいん)
2005-06-07 01:15:37
どーもです~^^

「時は流れても君だけはそのまま」

ってとこでぶわ~っときます(涙)

そですね、ぶっ倒れるまで全速力でついていかねば(笑)
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