day by day

癒さぬ傷口が 栄光への入口

吉川晃司と私(1986)~鮮烈すぎる出会い~

2005-04-04 | キッカワ。
大阪厚生年金会館大ホール。

1986年、「DRASTIC MODERN TIME TOUR」のチケットが発売される。
85年末録画した「仮設!吉川晃司」のビデオを見まくった私は、吉川晃司のコンサートに行ってみたい気分になっていた。
しかしまだライブになどほとんど行ったこともなく、「ぴあ」もまだ関西上陸しておらず、情報誌といえば「Lマガ」くらいのもの。正直言ってコンサートのチケット───それも、吉川晃司のようなとりにくそうな歌手のチケットなどどうやって取ればいいものかよくわかっていなかったのが当時の私。
そんな時、吉川晃司ファンの友人「なち」と共通の友人である「けーこ」が告知の切れ端を持って大学に来た。

「キッカワのコンサート、郵便振替で申し込みやって。申し込んでみよか?」

今思えばあれが運命の一言だったのだと思う。

プレイガイドで並んだり電話をかけたりということがまだ億劫だと感じていた私だったので「郵便振替で申し込み」というのは非常に魅力的な入手方法だった。
当の吉川ファンのなちは私とは逆に徐々に吉川離れしはじめていた頃だったので、声をかけてくれたけーこと二人で申し込んだ。まだ吉川晃司のシングル曲しか知らなかったので、なちに吉川のアルバムのカセットテープを借りてテープ→テープのダビングの音質激悪予習テープを作り、聞きまくる。
もう既にこの時点で殆ど「ファン」である。
しかし、それはまだ「出会い」とは呼べなかった。

やがて、チケットが送られてきた。

変わった大きさの、洒落たデザインのチケット。
わくわくしながら座席番号を見た。

1階A列31番・32番。

私は目を疑ってすぐけーこに電話した。
「1階A列って、A列って、もしかして一番前!?」

「試しに行ってみようか」
そう言って申し込んだチケットが最前列。
会場へ行って座席についてみると本当に最前列の中央だった。
私とけーこは始まる前から興奮で貧血を起こしそうな状態になっていた。

どこか薄暗いホール内。
ざわざわとざわめく観客たち。
ステージ上のセットが異様に巨大に見える。
スタッフが出てきてギターのチューニングをしている。
場内アナウンスが入る。
真夏でクーラーの入った場内なのに、既に汗をかいている。

突然暗闇になった。

途端に跳ね上がる声、声、声。

声と同時に身体も跳ね上がる。

聞こえてきたイントロは「Mis Fit」。アルバム「MODERN TIME」の1曲目。
すぐに聞こえてくる吉川の声。しかし本人の姿はまだ見えない。
じりじりと焦らされ、ビートが跳ねた瞬間吉川晃司の姿が現れた。

この時、初めて───
私は、吉川晃司に出会った。

最前列、バックバンド「Papa」のメンバーの顔のひとつひとつ、動きのひとつひとつが見える。
吉川晃司のしなやかな動きが、汗が、メイクが全部見える。

まるでこれが初めてだなんて思えないくらい、一瞬でその「場」に溶けてしまった。

もう忘れてしまったけれど、その時のセットリストは直後には全部覚えていたのだから我ながらすごいと思う。
なにしろ帰宅すると例の音質激悪の予習テープから更に編集してこのライブの曲順のテープを作ったのだから。
それほど、それは鮮烈だった。

今もファンに愛され続ける、そして先だっての20周年の時にずっと「この頃の気持ちを忘れないでいたい」と吉川が歌った「INNOCENT SKY」
私には、まだこの歌詞の意味はよくわからなかった。
ただ、悲しいでも嬉しいでもないのに、涙がこみ上げるという感覚を音楽で初めて味わった。

そういえば、大学の斜面一面に満開になった躑躅の花。
ただそれを見ただけで涙が出そうになった、そんな感覚が心の中でまだ裸でいた頃。

殆ど身動きできずにそのまだ上手いとはいえない歌を全身で受け止めていた。


終演後。
私とけーこは、ものすごく大きなパンフレットを手にけーこの家へ向かった。

そのパンフレットには色んな言葉や、友人たちのコメントが載っていた。
その中にあった中で、最も印象的だった言葉。
「真ん中にダイヤモンドがあってその周りは粘土みたいに毎日グニャグニャ変わる」

18年後の今も、吉川晃司はその言葉を地でいっている。

だから、今も目が離せない。
同じ輝きを放つダイヤモンドを包む粘土は、今日も形を変え続けているのだから。

※20th Ani.live golden yearsのパンフにこの文章が載ってました。わざわざモダンタイムツアーのパンフ出してこなくてすんで助かったw正確には↓
いつも粘土みたいに原形をとどめないヤツでいたいと思う。
粘土の中心にダイヤモンドが入っていて、その基本的なダイヤモンドは変わんないんだ。
毎日毎日粘土の形がグニャグニャに変わる。



---吉川晃司と私 buck number---
【1】(1984~85)~出会う前~
【2】(1986)~鮮烈すぎる出会い~
【3】(1986~1988)~解体への…~
【4】(1989~1990)~COMPLEX~
【5】(1991)~LUNATIC LUNACY~
【6】(1992)~Shyness Overdrive~
【7】(1993)~10th Anniversary~
【8】(1994)~My Dear Cloudy Heart~
【9】(1995)~FOREVER ROAD~
【10】(1996)~BEAT∞SPEED~
【11】(1996~97)~0015→HEROIC Rendezvous~
【12】(1999)~HOT ROD~
【13】(2000)~HOT ROD MAN RETURNS~
【14】(2001)~SOLID SOUL~
【15】(2002)~PANDORA~
【16】(2003)~Jellyfish&Chips~
【17】(2004)~20th Anniversary~
【18】(2005)~エンジェルチャイムが鳴る夜に~
【19】(2006)~Savannah Night~
【20】(2007)~TARZAN~
【21】(2008)~SEMPO,and・・・~
【22】(2009)~25周年、両刃の剣を携え~
【23】(2010)~夏と冬のGROOVE~
【24】(2011)~日本一心~
【25】(2012)~愚~
【26】(2013)~SAMURAI ROCK~
【27】(2014)~反発の30年~
【28】(2015)~骨折してもシンバルキック~
【29】(2016)~WILD LIPS~
【30】(2017)~ライブこそ人生~
【31】(2018)~武道館で、笑顔の再会を~
【32】(2019)~吉川晃司、起動。~
【33】(2020)~空に放つ矢のように~
【34】(2021)~BELLING CAT~
【35】(2022)~OVER THE 9~
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