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day by day

癒さぬ傷口が 栄光への入口

吉川晃司と私(1999)~HOT ROD~

2019-07-31 | キッカワ。
世界は世紀末を迎えた。
子どもの頃に流行ったノストラダムスの大予言。
1999年7の月は目前に迫っている。
大人の世界では、恐怖の大王よりも2000年問題の方が興味を集めていた。

そんな年の初め。
実質の吉川晃司デビュー15周年記念日は特には何も無く過ぎ去り、そのすぐ後にライブアルバムとシングルがリリースされた。
例の、映像作品としてはリリースされなかったHEROIC Rendezvousツアーが音源となっているライブアルバムだ。
「GOLDEN YEARS VOL.Ⅳ」──タイトルにもツアー名は冠せられることはなかった。

そして同時にリリースされたシングルは「Glow In The Dark」。

これを最初に聴いた時に、比喩ではなくこれまでに無かった感覚に囚われた。

──もう何も言わなくてもいい、名前のない星屑になろう

当時自分の精神状態に何かあったのか、もう今では朧なのだがもしかしたらそういったことも関係しているのかもしれない。とにかく、冒頭の1フレーズを聴いただけで胸が締め付けられたようで、泣きそうになった。

「何だこれ。何だこの歌…」

今でも聴くと泣けてくるのだが、何がそこまで響いてくるのかいまだに私はうまく説明できない。そんなに頻繁にはセットリストに入ってこない曲だ。しかしこの曲は多分初聴ではこれまで聴いたどの曲よりも私の心を掴んだ曲になった。

事務所のごたごたや独立や、例の事件などを経た吉川晃司の内に何が起こっているのだろうと思った。

そして7月に恐怖の大王が落ちてくることもなく、8月、無事に吉川晃司の新しいアルバムがリリースされた。
それが「HOT ROD」である。

先行シングルでもあったGlow In The Darkに心を掴まれたまま半年を過ごした私は、このアルバムを聴いてドキドキが止まらなくなった。
1曲目「CRY/MARIA-不覚なキス-」
これはおそらく夫のある女と恋に落ちてしまう男の歌だが、正直言って歌詞はわりとどうでも良かった。1曲目が終わる前から「まいったなぁ…」と思いながら聴いていた。
何これ。好きすぎる。

この1曲目を含めこのアルバムは、これまでとは全く違う傾向の歌詞が登場する。歌詞を書いているのが吉川本人と松井五郎といういつもの二人だけでなく、前田たかひろ氏が加わっていたのだ。それだけでもこのアルバムは少し毛色が違う。
「~しちゃう」なんて吉川だったら絶対書かない歌詞の「Lovin' Noise」もそうだ。
曲は吉川なのに乗っかる歌詞や言い回しが新鮮で、全然違う世界が見えてくるようだった。

実を言うと、それぞれの曲を思い浮かべながらこの文章を書いているだけでドキドキそわそわしてじっとしていられなくなっている。
多分自分が意識しているよりずっと私はこのアルバム「HOT LOD」が好きなのだ。
いや、LEVEL WELLやHEROIC Rendezvousの時には始まっていたのに私が追いついていなかったのだろうと思う。

皮肉な話だが、この『苦難』の数年にポリドールからリリースされたこの2枚のアルバムは、中身もどこか他のアルバムとは一線を画しているように思う。そして私はこれらがとても好きだ。プロモーションに力を入れてくれてな(いように思え)たってまあいいか。これらをリリースしてくれただけで有難かった。

この、私がすごく好きだな!!と思ったアルバムがリリースされてすぐにツアーが始まった。

1999/9/1~ KOJI KIKKAWA CONCERT TOUR 1999"HOT ROD MAN"

この頃には私は個人サイトを立ち上げて日記を書いていたので、レポートと呼べるほどのものではないがライブ日記を書き始めていた。
このブログにも抜粋したものを転記してアップしている。
日々の「日記」の中に書いたもので特にライブレポートと意識して書いていないので驚くほどあっさりした感想を書いているのだが、心の中に残っているのはもっと強烈な記憶だった。

【K2】KOJI KIKKAWA CONCERT TOUR 1999 "HOT ROD MAN" - day by day



この時のセトリ(拾いもの)


FLASH BACK
Wired-Boy
A-LA-BA・LA-M-BA
ギラギラ
Glow In The Dark
ナーバス ビーナス
~ジェラシーを微笑みにかえて
~LA VIE EN ROSE
~HOT LIPS
~MARILYNE
~KISSに撃たれて眠りたい
~せつなさを殺せない
SOLITUDE
宵闇にまかせて -KISS & KISS-
HOT ROD
サイケデリックHIP
~BOMBERS
LEVEL WELL
BOY'S LIFE
アクセル
LOVIN' NOISE
HEROIC Rendezvous
SPEED
Brain SUGAR
Fall in Dream
PRETTY DOLL

=アンコール=
この雨の終わりに
FLASH BACK


このライブについては、『LIVE=LIFE』(25周年の時にリリースされたDVD-BOX)の感想エントリでも触れている。
闇の中、OP曲の「Frashback」が流れ始め、歌が始まっても姿を現さない吉川というあのパターンだ。
じらされてじらされて、サビで一気にライトに照らされた吉川晃司は、吹き付ける強い風に立ち向かっていた。風になびくラフに羽織ったシャツ、いつもならきちんとセットして出てきているはずの髪。

檻を破り息を潜め路地裏に
寂しさを待ち伏せる
傷ついたライオン


それは吉川のことだ。

誰も信じられる者がいなくても
たとえ眠る場所へ戻れなくても
飼われながら甘い夢はみたくない
ときめきに噛み付いて死ぬほうがいいだろう


それも吉川のことだ。

夏の風は今も胸に吹いてるか
どんなものも怖れないでいられた
愛の弱さ夢の脆さ知りすぎて
虚しさに捕われた
眠れないライオン


それも───


ミディアム曲が2曲しかなく他は吉川の曲の中でも激しい部類の曲を中心に構成されたセットリスト。
このアンコールでクールダウンのようにピアノの弾き語りで「この雨の終わりに」が歌われる。

この雨の終わりには 虹を信じよう

そう歌い終わると、最後の最後に再びオープニング曲であった「Flashback」の間奏に繋がり──


走り出せよ
ジャングルへ
もう一度
牙を剥け


そう叫んでこのライブは幕を閉じた。


もう一度。
牙を剥け。

それは、吉川晃司の反撃の狼煙だったのだ。

10月29日、東京国際フォーラムでのツアーファイナルに遠征した。
吉川の狼煙に焚きつけられてどこかいてもたってもいられなくなっていた私にも等しく、ミレニアムが近づいていた。



---吉川晃司と私 buck number---
【1】(1984~85)~出会う前~
【2】(1986)~鮮烈すぎる出会い~
【3】(1986~1988)~解体への…~
【4】(1989~1990)~COMPLEX~
【5】(1991)~LUNATIC LUNACY~
【6】(1992)~Shyness Overdrive~
【7】(1993)~10th Anniversary~
【8】(1994)~My Dear Cloudy Heart~
【9】(1995)~FOREVER ROAD~
【10】(1996)~BEAT∞SPEED~
【11】(1996~97)~0015→HEROIC Rendezvous~
【12】(1999)~HOT ROD~
【13】(2000)~HOT ROD MAN RETURNS~
【14】(2001)~SOLID SOUL~
【15】(2002)~PANDORA~
【16】(2003)~Jellyfish&Chips~
【17】(2004)~20th Anniversary~
【18】(2005)~エンジェルチャイムが鳴る夜に~
【19】(2006)~Savannah Night~
【20】(2007)~TARZAN~
【21】(2008)~SEMPO,and・・・~
【22】(2009)~25周年、両刃の剣を携え~
【23】(2010)~夏と冬のGROOVE~
【24】(2011)~日本一心~
【25】(2012)~愚~
【26】(2013)~SAMURAI ROCK~
【27】(2014)~反発の30年~
【28】(2015)~骨折してもシンバルキック~
【29】(2016)~WILD LIPS~
【30】(2017)~ライブこそ人生~
【31】(2018)~武道館で、笑顔の再会を~
【32】(2019)~吉川晃司、起動。~
【33】(2020)~空に放つ矢のように~
【34】(2021)~BELLING CAT~
【35】(2022)~OVER THE 9~
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