【 Photo by Shunsuke Kudo 】
少年は一人だった
いつだって一人だった
夕暮れ時の寂しさや
キレイだけど寂しそうな風景を感じると
泣いてしまうと知った時から少年は
夕焼けが始まると 寂しそうな風景を見ると
一目散に走り始めるようになった
行き先はなかった
ただただ走った
彼が寂しさから逃げる方法は
それしかなかった
彼が走り終わるのは
いつでも陽が落ちた後だった
そして暗くなった街角で
星空を見ながら思った
いつになれば
夕陽から逃げないでいられるのだろう
どうすれば寂しくならないのだろう
寂しさから逃げちゃいけないって
大人は言うけれど
みんなこの
「ワ~~~~」って叫びたい気持ちを
どうしてるんだろう
ウッってこみ上げて
目頭が熱くなる
この衝動はどうしているんだろう
少年はいつだって一人で考えていた
少年は大人になった
そしてまだ一人だった
いろんな人と出逢ったけれど
気がつくと 一人になっていた
もう少年は走らなくなっていた
夕焼けやキレイな風景に背を向けることを覚えたから
寂しいのには変わらなかったけれど
背中に当たる夕陽のぬくもりだけは心地よかった
大人になった少年は恋をした
確かに恋は寂しさを消してくれたけれど
一人になった時の寂しさはより大きくなった
そして大人の少年は結婚をする
これで永遠に一人にはならないと思ったが
一人なんて 一人になるなんて簡単なことだった
大人の少年は愕然とする
一度知ってしまった暖かな暮らし
その後の寂しさはこれまでの寂しさとは
比べものになんてならなかった
また一人だった
どうしようもなく一人だった
大人の少年の肩に桜の花びらが一枚落ちてきた
頭の上には満開の桜の木があった
その横には白い月も浮かんでいた
その寂しさがキレイだった
昔だったら走ってたなと思ったら
横で泣きべそが聞こえてきた
横であの頃の少年が座って
泣きじゃくっていた
泣いたっていいんだよ
自分の口から出たのは
思いもしない言葉だった
月もずっと一人
桜だって花が散れば 誰もが忘れる
だけど寂しさは大好きな人に逢えば
すぐに飛んでいく
その時は歓びしかないんだ
二人で撮った写真の中の二人は
笑っているだろ 幸せそうだろ
また逢えばいいんだよ
夢の中でもどこででも
いつか大きな歓びが寂しさを包み込んで
寂しさが消えるまで
逢い続ければいいのさ
話終わると 寂しがり屋の少年は 消えていた
もう一度空を見た
やっぱり桜と月はとてもキレイだった
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