人を刺す強さと白さ春の蚊や
長井秀和晩春の蚊と諍へり
力ずくで誰かを侵し春蚊去る
ともしびにありありと我れ春蚊刺す
潤君の恩師と呼ばれ春蚊出づ
制服の行く末を見て春蚊刺す
春の蚊はあくまで無言と知りてより
イアンスーチー女史春の蚊は刺さず去る
人間に教はりしこと春蚊撃つ
初蚊出て新宿路上火の臭い
純然たる天国の使者春蚊刺す
翔平につづく春の蚊鬱々と
煎餅をぱりんと割れば春の蚊去る
ランボーの地獄の季節に落花の日
止みてなほ落花の記憶あをあをと
暗澹たる人生落花の果てまでも
その一片吾もろともに落花せり
シンガーソングライターうぴ子落花の打ち続く
父母（おや）を見て親にはならず落花の日
月はなく暗黒の日の落花かな
ウクライナ劣化ウラン弾落花なほ
尾形大作無錫旅情の地に落花
落花せり人生何も知らぬふり
母子地蔵母子もろともに落花せり
千鳥ヶ淵の人生行路また落花
縄文巨木落花をまたも逃しけり
失恋ソングいつか忘れて落花の日
灯明を欠かさず落花の日を想ふ
ミスターボージャングル知らず知らずに落花かな
うぴ子 すみだライブフェス 錦糸公園 ３月２６日
春寒のシャッターお前は生きている
春寒し生きても死んでも同じこと去る
春寒や夢とは違ふあをさ満つ
人工とは知らず岩屋の春寒し
ストリートミュージシャンの晩春（はる）寒からう
春寒や首相（ひと）が死ぬ世を遠く見て
ウクライナまたも撃たれし余寒かな
料峭のこのごろ肉食妻帯す
野外ライブ観客はゼロ春寒し
相磯菜々の口ずさむ唄春寒し（3月２８日～浅草歌謡ナイト）
春寒の畳一枚まう一枚
ツイッター片言で読む春寒し
ポンコツのダイハツミゼット春寒し
クリープハイプ俳句のことか春寒し（男性四人組ユニット）
熱なしとコロナ８波の冬の月
何もなきでも何かある冬の月
妖精の一群に我れ冬の月
動物園脱け出すカバに冬の月
新宿路上の天使と呼ばれ冬の月（アイブリー）
死神の足音消して冬の月
中島みゆきの「FIGHT！」いまこそ冬の月
お持ち帰りの相手は誰に冬の月
冬の月東京千駄木団子坂
路上ライブまだまだ続く冬の月
２０句も並べば名句冬の月
紫野といふ少女に焦がれ冬の月
冬の月巨大ブランコ揺れ止まず
一匹の黒猫躍動冬の月
アイブリー LIVE 新宿南口 １２/３
さらばラバウル大谷翔平撃ち尽くす
天空の城のやうなラピュタ捨つべきか
アーロンの最後の闘い結露の夜（行列の出来るストリートミュージシャン）
ワシントン靴店俺たちの墓標とあり
君と見た景色のすべて凍結す
初紅葉私は大人になりたくない（紫野３句）
黄落やこびとのような私になる
紫野という少女の語る天変地異
蒼きものにことばはありや秋暑来る
バグといる秋分の日の闇の中
秋意あらた漱石全集改訂版
十日月だんだん私の月になる
脳内の〈わたし〉は誰か残る蝉
臨死体験まだまだ未熟後の月
冬月に追われ帰宅拒否症候群
安倍晋三撃たれるまでもなき晩夏
ゴスロリの愛ある言葉夏の夢
サマリアの水注がれて夏終る
晩夏光天国と地獄ぺらぺらと
スロースクワットいつまで続く世の終り