獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

友岡雅弥さんの「地の塩」その15)目の前の何かをいつくしむこと

2024-05-29 01:31:19 | 友岡雅弥

友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。


カテゴリー: SALT OF THE EARTH

「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。

 


Salt31 - 「土」をいつくしむこと

2018年8月13日 投稿
友岡雅弥


野村胡堂の「銭形平次捕物控」は、300数十を超える大連作シリーズです。

その中に「土への愛着」というとても現代的なタイトルの一作品があり ます。

強欲な金貸しに、先祖から伝わる土地を奪われた初老の松蔵。
平次の子分の八五郎は、「土は日本国中どこの土でも同じ」などとデリカシーのないところを見せますが、

松蔵は、「私一家の汗を何百年吸い込んだ土」と語ります。

彼はなんとにくむべき強欲の金貸しのところに、タダ働きの労働者として住みこんでいるのです。

たしかに、強欲金貸しは憎んでも憎みきれない相手かも知れませんが、彼が(タダで)管理をまかされたのは「愛する土」だったのです。

強欲金貸しは殺され、彼の悪が露見し、土地はすべて松蔵のもとに帰ります。

この短編の最後は、土をもみほぐし、においをかぎ、撫でる松蔵の姿の描写です。

胡堂は、平次シリーズ執筆の「意図」を明確に記しています(『随筆 銭形平次打明け話』)

「庶民に同情しようと思い定めた」
「侍階級に対する反抗を企てていた」

胡堂の先祖は、「全くの水呑み百姓である」(同)。また、歴史にも名を残す天保の「三閉伊一揆」に、先祖の幾人もが加わっています。

「胡堂」はペンネーム。「胡」は「異民族」の意味です。また、彼はよく知られたクラシック音楽の評論家でもありました。

クラシック評論の時のペンネームは「あらえびす」。「えびす」は「胡」と同じく「異民族」。「あらえびす」は、「おとなしくなった異民族」を示す「にぎえびす」とはちがい、まだ反抗のちから盛んな異民族のことです。

そんな胡堂ですが、彼が最も尊敬し愛したのが、故郷・岩手で先祖からの土地を受け継ぎ、それを更に豊かにしていった弟さんです。

彼は、一揆に加わった先祖を尊敬しつつも、それは「昔物語に過ぎない」(同)と述べて、弟さんの「今」と対照させるのです。

時間をかけながら少しづつ社会を変えること。そして、実効ある変革って、目の前の何かをいつくしむことなのかなあ、って思ったりしています。

 

 


解説
時間をかけながら少しづつ社会を変えること。そして、実効ある変革って、目の前の何かをいつくしむことなのかなあ、って思ったりしています。

心に刺さる言葉です。


友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。

 


獅子風蓮



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。