獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

朝井まかて『ボタニカ』 その6

2023-10-26 01:34:23 | 読書

これまで見てきたように実際の牧野富太郎とドラマの槙野万太郎にはだいぶ言動に違うところがありました。

そんなこんなで、『ボタニカ』の内容をそのままドラマにしたら、お茶の間の奥様たちの多くは目をそむけたかもしれません。
実際、私がとくとくと本の内容を、妻に話して聞かせると、
「聞くんじゃなかった。恨む」と言われました。

さて、実際の富太郎が、このような男性であったとしても、当時の時代背景を考えると、それほど倫理に反するとはいえないでしょう。
郷里の正妻とは別に、赴任先でお妾さんを囲っていた幕末の志士や明治の有力者はざらにいます。
ちょっと思いつくだけでも、西郷隆盛の愛加那さんとか、吉田松陰の妹を娶った久坂玄瑞の場合は京都の芸妓お辰とか。渋沢栄一にもお妾さんはいたし。

時には、スエの気持ちを考えずに行動する富太郎でしたが、スエと子どもたちに対する愛情は深いものでした。
でも、草花の採集のため、家を空けることが、半端なく多かった。

こんな富太郎ですが、周囲の人から愛されていたのは、ドラマの万太郎と同じです。


思うのですが、ドラマを制作するにあたり、当時の時代背景を詳しく伝えながら正確に人物を描けばいいというものではないでしょう。
そういう意味で、牧野富太郎の本質を失わずに、周囲に好かれるキャラクターという共通点を持った万太郎を描き出した脚本家の腕は素晴らしいと思いました。


鎌倉時代を生きた日蓮を、現代人の目から批判的に評価することはいくらでもできるでしょう。
「四箇格言なんてナンセンス」
「法華経至上主義なんて誤り」
しかし、鎌倉時代を生きた日蓮の本質を抽出し、それを現代人にも受け入れられるように再構築してみせることも必要ではないかと思います。

私はかつて、対話ブログで参加者の質問をきっかけに、レヴィストロースの「構造主義」を持ちだしましたが、構造主義的に言えば、鎌倉時代の日蓮の本質を〈構造〉として取り出すのです。
その時々で、もっとも正しいことは何か、徹底的に調べること。
「智者」にその義が破られれば、あっさりそれを認めること。
正しいことを広めるためには、権力者がいかに弾圧をかけても屈しないこと。
それらを〈構造〉として現代にも活かしていきたい。


私はそう考えます。


獅子風蓮



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