
じゃ、私の将来は? 皆様もご存じのとおり、
自分の事は一番気になるもの!
見える、見える!けれども言えません。
その時になったら、さっそく申し上げますがね。
ではいったい、この中で一番幸福な人はどなたでしょう?
一番幸福な人? こりゃすぐ見つかります!
それはおっと、うっかり言えません――
どうやら、悲しい思いをする人がたくさんありそうです。
だれが一番長生きか? そこの婦人か、あそこの紳士か?
いや、こんな事を言ったら、なおいけない!
ではこれにしようか? だめ!あれにしようか? だめ!
では、これは? ああ、何がなんだかわからなくなってしまった。
だれかのごきげんをそこなわないかと心配です……
――「幸福の長靴」(大畑末吉)
戦後文学の「変身譚」の系譜を講義したうえで、澤西祐典「貝殻人間」を演習で扱っている。アンデルセンの童話のほうが、最初から大人の問題を扱っているような気がしないではなかった。戦後の変形譚がちゃんと人間への復帰を主題にし続けないから。。。とわたくしは思っている。