
私は哲学の訓練も受けていなければ、中世哲学についてちゃんと講義を受けたこともない。が、卒業論文のために、スピノザを読まなければならなかったことから──というのは嘘で、卒業論文をダシにスピノザを読みたかったのであるが──、引っかかっている事柄が哲学の方面で沢山ある。大学院の時は、必要があって、エックハルトやスコトゥスとかを読まなければならなかった。芥川龍之介の演習の前に、落合仁司の『地中海の無限者』を何が何だか分からないまま読んだのは
最近読んだなかでのヒットは、上の八木雄二の本である。多くのことを教えられた。テリー・イーグルトンの『宗教とは何か』よりもよほど私には啓蒙的であった。
ただ、私は、八木氏が言うように、ヨーロッパの論争的伝統に対して、日本の文化的伝統が「源氏」や歌合わせのような文学主義だとはあまり考えていない。