も一つ 諺
機嫌キヅマを取る。
×着褄 ○気褄
あおむし様の調査でも初出題であり、全く聞いたことのない慣用句です。機嫌を取ると言いますから、機嫌とキヅマは、同義で、機嫌=キヅマでしょう。さて、どう書くか。
問題用紙には、先ず、気付間って書きましたが、これでは万葉仮名です。ヅは連濁、従ってキ+ツマと考えました。つまと言えば、国字で褄が思い浮かびました。そして、気褄と一旦正解に達したのです。
唯、気褄ではどうも意味がよくわかりません。褄が、着物のどの部分かよくわからないのですが、端っこでしょう。それと、気をくっつけてどういう意味なのか。それと、機嫌は、音読み+音読みですが、気褄だと、重箱読みになります。全く根拠はないのですが、機嫌が双方音読みなら、キヅマは双方訓読みではないかと思いました。きの訓読みと言えば、着があります。着褄を取る、着物の端っこを取って、「ねえねえ、お兄さん、寄ってらっしゃいよ」 これだと思いました。
「辞典」の気の見出し熟語に、気褄が載っています。そういえば、気の付く熟語には、結構重箱読みがありますね。1級配当漢字の見出し熟語は、全部一度は書いて見たのですが、常用や準1級のところまではとても手が回りませんでした。一つ一つ順番に見ていくのはとても疲れますから普通はできることではありません。常用や準1級の漢字を引いたときに、下に準1級や1級の配当漢字(▲が付いています)が使われている熟語に少しでも目を通すことが肝要かなあと思います。
「日本国語大辞典」(旧版)によると、気褄は、歌舞伎や人情本で使われ、円朝も、創作落語「真景累ヶ淵」で使っています。青空文庫にありましたのでその部分を引用しますと、
隅「さお酌致しましょう」
富「これはどうも、まア一寸一杯、左様ですか」
隅「私は大きな物でなくっちゃア酔わないから、大きな物でほっと酔って胸を晴したいの、いやな客の機嫌気褄(きづま)を取って、いやな気分だからねえ、富さん今夜は世話をやかせますよ」
富「大きな物で、え湯呑で上りますか、御酒は些(ちっ)とも飲(あが)らなかったんですが、血に交われば赤くなるとか、妙でげすなア、お酌を致しましょう、これは妙だ、どうも大きな物でぐうと上れるのは妙でげすな、是は恐入りましたな」
隅「私は酔って富さんに我儘な事をいうけれども、富さんや聞いておくれな」
どうも、気褄を取るは、相手の気持ちを全面的に理解するのではなく、表面的・部分的、つまり気持ちの端っこだけで付き合うという意味のようです。「大言海」にも、「キツマ(気端)の意か」とあります。
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実は、着物着る人間には「褄」を取る、合わせる、というのは理解しやすい言葉なのです。
ご参考になれば幸いです。
初トラバありがとうございます。褄について、「辞典」には、「着物の衽のへりの部分」とあり、衽については、「前身ごろの襟から裾まで縫いつける半幅の布」とあります。褄は、裾だけでなく、襟の近くのことも言うのかなあと疑問だったのです。
貴殿の記事で参照されたきもの辞典に、褄は、「長着の裾、衽の角の部分」とありましたから、やはり裾の方ですよね。「辞典」のへりという説明は、ちょっとわかりにくいと思います。
>実は、着物着る人間には「褄」を取る、合わせる、というのは理解しやすい言葉なのです。
着物は、旅館で浴衣を着るぐらいですので、褄など意識したことありませんでした。褄を取るって、芸者になることなんですね。
着付けの時に、褄が肝腎な部分だとすると、気褄を取るも、芸者が、客の気持ちの肝要な部分を押さえるということなのかもわかりませんね。
大変参考になりました。1級の着物漢字は、任せましたよ。