(24.3.1 8に漢字皇子さまのブログへのリンク追加)
狭義の三点セットは、(狭)
広義の三点セットは、(広)
三点セット外は、(外)と付記します。
(広)3 しんろうに迷う者をしてその本道に還る 〇蜃楼 ×心労
蜃楼は、「辞典」の見出し語にはありませんが、頻出四字熟語海市しんろう(蜃楼)6-1K 15-3K 22-1Kから類推可能です。四字熟語を構成する二字熟語で、「辞典」の見出し語にないものです。これは私は想起するのがいつも難しいです。
「しんろう」と言えば、心労や新郎だけでなく、蜃楼も浮かぶといいのですね。文章題の書き取りは同音異義語がどれだけ想起できるかです。尚、「辞典」の見出し語には、「しんろう」と読む熟語として、滲漏もあります。
(狭)5 かく人の貴重なる嗜好をきそくして、まったく自由の権を圧制し 〇羈束 ×跪塞
羈束11-3Y=征18頁は、「辞典」の見出し語にあり、読み問題の書き取り問題への転化ですし、文意も取りやすいので、これはできないといけないなあ。
「辞典」の見出し語には、「きそく」の同音異義語は、規則、驥足があります。二字熟語が想起できなかったときは、国語辞典で同音異義語を探し、「辞典」の見出し語にあるかチェックするのが、語彙力増強の一方法と思います。尚、跪塞という熟語は、「大漢和」にもありません。
(狭)6 日耳曼(ゲルマン)のいてき来て、その国を侵すに及び 〇夷狄 ×夷敵
狄は、本試験新出でしょうか。南蛮北狄、夷蛮戎狄、蛮夷戎狄という四字熟語もありますから、これもできないといけないなあ。夷敵という熟語も、「大漢和」にもありません。
(外)7 その人民ら柔懦にして国を思うの心なく、しはいして寇を禦ぐの力なく 〇弛廃 ×雌拝
私は文意を取り違えました。「寇を禦ぐ」ためにはどうするかと考え、先ず、雌伏を想起し、そこから適当に雌拝と書きましたが、こんな熟語は「大漢和」にもありません。
直前の文から、「柔懦」=「国を思うの心なく」ですから、「しはい」=「寇を禦ぐの力なく」と考えなければいけませんでした。ただ、そう考えても、弛廃という熟語は、「辞典」には全く載っておらず、全く知らない熟語ですから解けませんでした。
octave様は、準1級四字熟語の綱紀廃弛から想起できたと述べておられます。「しはい」で熟語が想起できないときは、ひっくり返し熟語の「はいし」を考え、四字熟語を構成する二字熟語で「はいし」を考えるという方法ですが、これは高級な解法ですね。弛廃は、準1級+常用の熟語です。「日国」によれば、「日本外史 源氏前記」や鴎外の「青年」に用例があるようですが、現在はあまり人口に膾炙していない熟語ですし、私は、この問題は、今回の最難問と思います。
(狭)8 友山短才浅慮の身を以て御前にしせきし親しく叡旨を拝承し、 〇咫尺 ×尸席
咫尺6-1Y 6-3Y 13-1Y 15-2Yも、「辞典」の見出し語の読み問題から書き取り問題への転化です。ただ、漢字皇子さまのブログでご指摘のとおり、「辞典」に拠ると、咫尺には、
1極めて近い距離
2貴人に間近で会うこと
3短いこと。簡単なこと
と複数の意味があるのですが、私は、1の意味の名詞的用法しか知りませんでしたので、この文意からは想起できなかったと思います。過去問を引用し、上記の意味の番号を付記しますと
目的地は咫尺(1)の間だ6-1Y
余が宅と先生の塾とは咫尺(1)にて6-3Y
威 厳にして咫尺(2)する能わず 13-1Y=征21頁
咫尺を弁ぜざるほどの霧である 15-2Y←「咫尺を弁ぜず」という成語あり
13-1を解いたとき、「咫尺する」と、(2)の意味で動詞的に使用されることに留意していませんでした。今回の問題は(2)の意味です。過去問の読み問題を解いたとき、「辞典」の見出し語の熟語の意味を確認しておくこと、複数の意味があるときは特に注意することが必要でしょう。
尚、(3)の意味からは、簡単≒咫尺という類義語問題が作れますね。また、この機会に天威咫尺、天顔咫尺という四字熟語も憶えておこう。
(狭)9 皇国こうあんにして外国に要せらるるを宸憂あらせられ・・(岩倉具視「済時策」) 〇苟安 ×浩安
これも文意を取り違えました。岩倉具視は、公家ですから、天皇は、身内の公家には、皇国は、立派に安定していると楽観論を述べたと考えてしまいました。浩然の気あたりから、浩安という熟語を創作してしまいましたが、「大漢和」にもありません。
天皇は「外国に要せらるるを宸憂」しているのですから、意味は全く逆で、皇国の状態が心配な状態だと述べたのです。かりそめの安楽=苟安 が正解です。「辞典」の見出し語にあっても、私には想起できない熟語でした。苟且偸安から想起するのかな。
尚、「済時策」が書かれたのは、1867(慶応3)年3月ですから、既に明治天皇が、満14歳で践祚しています。取り巻きが良かったとは言え、若い天皇が、国家の状況を正確に把握していることは驚きです。
以上、文章題書き取り10問中6問間違いました。六割も間違ってはいけませんが、それでも合格点に達するのですから、文章題対策は、一番後回しでいいような気がします。
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