2021明治安田生命J2リーグ第2節 アルビレックス新潟-V·ファーレン長崎をDAZNで観戦しました。結果は1-0で新潟の勝利。
この試合は開幕戦とは異なり3バックで臨んだ長崎。そしてセンターフォワードには27都倉。
長崎が3バック(相手ボール時は5バック)にしたのは、新潟のその強みを消したいというのが大きな理由でしょう。ゾーンではなく、マークする相手がある程度決まっているようなはめに行くようなプレッシング。
この試合は単に負けたこと以上に疑問が残る点が多かったので、そのことについて書きます。
【3バックで得られたもの】
この試合は開幕戦とは異なり3バックで臨んだ長崎。そしてセンターフォワードには27都倉。
·新潟の特徴
新潟の特徴というのは、ボールを保持し後方から繋ぎながら前線の4枚が間で受け、サイドバックのオーバーラップを絡めながら幅を一杯に使いフィニッシュまでというサッカー(ざっくりしすぎな説明)。
特にストロングと感じるのは10本間と31堀米が絡む左サイド。2人だけで運ぶことも仕掛けることも出来るので、前節の相手·北九州はかなり手を焼いている印象でした。
中央の9鈴木と33高木もスペースで受けて前進出来るので、ここも脅威。
·5バックのメリット(新潟が一人少なくなるまで)
長崎が3バック(相手ボール時は5バック)にしたのは、新潟のその強みを消したいというのが大きな理由でしょう。ゾーンではなく、マークする相手がある程度決まっているようなはめに行くようなプレッシング。
特に新潟の左サイドは長崎の右サイド名倉·毎熊で2対2を崩さないような意識が見て取れました。これは4バックでも出来ますが、逆サイドを使われた時にスペースを与えてしまうリスクが大きいというのもあり、5バックなのかもしれません。
ただ、立ち上がりはまずまずだったようですが、新潟はボランチがセンターバックの脇に下りたりしながら、上手くそこを外してきたので、前進を許す展開。それでもペナルティエリア内で決定機を作られることはなかったので、そういう意味では5バック作戦は前半はある程度上手くいったと言えるのかもしれません。
·都倉起用のメリット
センターフォワードが都倉だったのは、押し込まれた状態からでもキープ力があり、そこを起点に前進出来るから。実際に彼はそのタスクをこなし、前進することが出来ていました。
【3バックで失ったもの】
こういう見出しを付けると、フォーメーションそのものが原因と誤解を与えてしまうかもしれませんが、問題にしたいのは3バックにするならするで、ボールを保持したときの準備が出来ていたのかという点です。
·前の人数足りない問題(新潟が一人少なくなるまで)
前述のとおり、都倉作戦で前進出来るのでカウンターも打てるし、それ自体はOKとしても、問題は遅攻になったとき。
4バック、例えば開幕戦で言えば、ボールを持ったときに右サイドでは毎熊+名倉+ルアンが絡みながら相手を崩していくのに対し、この新潟戦は崩しの部分は、その良さが失われ、特に左サイドはルアン·米田の2人だけで完結しようとするのがほとんど。
相手の守備ブロックを引き出したり動かしたりしながらスペースと時間を得るには、それなりの人数が必要です。サイドに3枚いれば相手も3枚必要になり、相手が動かされることによってスペースが空いてくるというメリットを享受出来なくなっていました。
3バックにするならば、「ボランチ(秋野·カイオ)がサイドに流れて絡む」か「3バックの両側(新里·二見)が上がって絡む」かいずれかが必要なのではないかと思います。
昇格した2017年の長崎は3バックでしたが、ボランチやセンターフォワード(ファンマ)がサイドでシャドーやウイングバックとトライアングルを作って絡むことで相手を引き出し、そこからクロスを入れることで得点していました。
しかし、ここではその準備はあまりされていないように感じました。新里·二見よりは秋野·カイオが絡むことが求められているように見えましたが、2人ともその素振りは見せるものの即興的で、仕込まれた形はないようでした。
吉田 孝行 監督 コメント
--攻撃は後ろに重いシーンもあった。リズムが出なかった要因は。後ろに重くても、テンポよく回せばボールと人が一緒に前進できる。少し悪い時間は、一人ひとりの持つ時間が長く“止めて、考えて、パス”みたいなところでリズムが悪かった。
--前半、秋野 央樹とカイオ セザールが高い位置を取ったが使えず、うまくいかなかったか。秋野 央樹、カイオ セザール、名倉 巧、ルアンの4人に関しては、距離感よくボールを動かすというところで、真ん中での距離感は悪くないが、SBやウイングバックに入ったときのサポートは、もう1人絡んでくると3人の関係ができるが、2人の関係でやっていた。左でいうと、米田(隼也)とルアンだけの関係だった。そこにボランチが絡んでくるともっと面白いとハーフタイムに言っていた中で、相手が少なくなって出てこなくなった。もう少し改善の余地はある。
--前半、秋野 央樹とカイオ セザールが高い位置を取ったが使えず、うまくいかなかったか。秋野 央樹、カイオ セザール、名倉 巧、ルアンの4人に関しては、距離感よくボールを動かすというところで、真ん中での距離感は悪くないが、SBやウイングバックに入ったときのサポートは、もう1人絡んでくると3人の関係ができるが、2人の関係でやっていた。左でいうと、米田(隼也)とルアンだけの関係だった。そこにボランチが絡んでくるともっと面白いとハーフタイムに言っていた中で、相手が少なくなって出てこなくなった。もう少し改善の余地はある。
監督のコメントを読んでもボランチが絡んでほしかったことがわかりますが、準備していたというよりは試合中に即興でやってくれと要求しているように感じます。果たしてそれでそう上手くいくものなのか、個人的には疑問です。
·前に急ぎすぎ問題(新潟が一人少なくなってから)
不用意なファウルからフリーキックを与えて失点。直後に新潟の本間が2枚目のイエローで退場。これが後半12分。まだ時間は30分以上残されている状況でした。
二見→澤田の交代で、いつもの4バック(4-2-3-1)にはしましたが、何か3バックの流れを引きずったままで、いつもの戦いはしていないように見えました。
端的に言えば、ボールを早く手離しすぎだったと思います。
「どうせ相手は出てこないのだから、速く回して速くゴール前に入れろ」
そんなふうに見えました。
まあコーナーキックから都倉のヘディングシュートや都倉のポストからルアンのシュートなど、チャンスがなかったわけではないので、悪かったとも言えないのですが、去年から続く形を思い出してやったほうが相手は嫌だったのでは?と思います。
相手が出て来ないとは言っても、ずっとゴール前にいるわけではありません。長崎がボールを後ろに下げれば新潟はラインを上げますし、奪えればカウンターも狙ってきます。
時間はたっぷりあったわけなので、もっと前述のようにサイドで人数をかけてポケットを取りに行ったり、縦パスを出し入れして相手を動かしながら空いたところを使ったりすべきだったのでは。
ボールを速く動かすだけでは、相手のブロックは崩れないと思います。
結果論と言われるかもしれませんが、スタートから3バックにしてやり方を変えた流れで4バックに戻しても良さが出せず、昨年からの強みも失ってしまったように見えたので、これで良いのか?という疑問が拭えません。
【まとめ】
長いシーズンはこういう試合もあるという捉え方と、これを書く前にサガン鳥栖が保持4バック非保持5バックで素晴らしい試合をしたことが頭にあったので、とりあえず3バックを肯定した上で考えてみましたが、今シーズンのテーマが昨シーズンからの「積み上げ」であることを考えると、昨シーズンからの強みを出せなかったと感じたので、この試合を落としたことよりは内容についてのこの先への不安が拭えません。
ただ、始まったばかりでそれが課題だと言われればそれまでですし、次の愛媛戦は開幕戦の形に戻す可能性もあるわけで、この心配は杞憂に終わるかもしれません。
ただ、個人的には吉田監督が相手を動かすことよりもボールを速く動かすことにこだわっているように感じたことが気になる…。