背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

『緑園の天使』

2010年04月18日 02時57分56秒 | アメリカ映画

 エリザベス・テーラーとミッキー・ルーニーの『緑園の天使』をビデオで観た。戦前の名子役二人の共演作である。1944年に製作されたMGMのカラー映画で、原題は“NATIONAL VELVET”。映画を観る前にこの原題を見たとき、どういう意味なのか分からなかった。VELVETはふつう、布地のビロードのことだし、それに形容詞のNATIONALが付いて、「国産のビロード」のことかな?変なタイトルだなと思っていた。邦題の『緑園の天使』とも結びつかない。が、映画を観て、やっと分かった。VELVETというのはリズ(エリザベス・テーラー)が演じる女の子(13,4歳くらい)の名前ではないか。名前としては風変わりなので、きっと愛称なのだろうと思って観ていたが、どうやら本当の名前(ファーストネイム)だった。それに、ベルベットというこの女の子も相当変わっていて、馬が異常なほど好きなのだ。彼女は、村人に買われてやって来た荒馬を愛し始め、この馬をもらいうけ、調教して、なんとロンドンの競馬に出走させようという夢に取りつかれる。この物語、イングランドの片田舎に住む一家の話で、時代は1920年代。要するに、子供が抱く大きな夢をついに実現させるというサクセス・ストーリー。結末を言えば、彼女の愛馬はロンドンの檜舞台で大活躍し、一着でゴールインする。(しかし、規定違反で失格してしまうのだが…)。それで、NATIONALという意味もやっと判明。ベルベットは一躍「国民的な」有名人になるわけで、原題の“NATIONAL VELVET”は、「国民的ヒロイン・ベルベット」ということだった。
 ミッキー・ルーニーの役は、放浪児で、名前はマイ、年齢は推定16,7歳。彼は、死んだ父親の手帳に書かれた知人の住所を尋ね歩いている。一時期競馬の騎手だったが、落馬して挫折したらしい。夏のある日、彼がベルベットの家を訪れ、ここに住み込み、精肉店をやっているベルベットの父親の仕事を手伝うことになる。そして、物語は、パイという荒馬、馬が大好きなベルベット、騎手を挫折したマイ、この三者に、ベルベットの父親、母親(若い頃英仏海峡を泳いで渡ったという経歴の持ち主で、その時の水泳のコーチがマイの父親だった)、それに姉二人と弟が加わって、進展していく。
 この映画、内容的にはちょっと信じられない出来事が次々に起こる一種のおとぎ話である。でも、子供が見たら、ハラハラドキドキの連続で、とても喜ぶ映画であることに間違いない。大人(の私)が見ても、内心絵空事にすぎないとは思うものの、かなり楽しんで見られる映画であった。とくに、最後は圧巻だった。競馬に出走する前夜になっても騎手が決まらず、結局ベルベットが騎手になり、当日出場することになる。十数頭の馬が4マイル半の長距離障害レースを戦うのだが、障害物を飛び越えそこなって落馬する騎手が続出するなか、愛馬のパイに跨ったベルベットが走り抜いていく。このシーンが10分以上あって、見ごたえ十分。ハリウッド映画らしくさすがに迫力があった。

 この映画に出た時、エリザベス・テーラーは何歳だったのだろうか。調べてみると、リズは1932年生まれなので、12歳ではないか!それにしては、ずいぶんマセていた。この映画の前半のリズは、やや不恰好であまり可愛いとは思えなかったが、後半になると変身したかのようになぜか急に可愛らしくなるのが不思議だった。セーラー服姿のリズも良かったが、髪を短く切り赤い帽子をかぶって騎手の服を着たリズが颯爽として美しかった。その後のリズの成長ぶりは周知のところで、戦後『若草物語』『花嫁の父』を経て『陽のあたる場所』(1951年)で大人の女優への道を歩み始める。映画の名子役が大人の俳優として大成するのは稀有なことなのだが、リズだけは例外中の例外である。(ディアナ・ダービン、シャーリー・テンプル、マーガレット・オブライエン…皆女優として大成しなかった。ナタリー・ウッドは健闘したが、リズとは比較にならず、フランスではブリジット・フォッセイが思い浮かぶが、子役出演は『禁じられた遊び』だけだったのではあるまいか。日本で子役から大女優になったのは、高峰秀子と美空ひばりくらいか。)
 ミッキー・ルーニーは、この映画の頃すでに20歳を過ぎていたが(1920年生まれなので、この時23歳)、小生意気な大人こどものようでこの映画ではあまり好感は持てなかった。彼が子役として全盛期だったのは1930年代後半で、私はずっと以前に名画座で『少年の町』(スペンサー・トレーシーと共演)を観て、なんとすごい子役なんだろうと思ったことがある。戦後は落ち目で、喜劇的な脇役が多くなったと思う。『ティファニーで朝食を』で変な日本人役をやっていたのが妙に印象に残っているくらいだ。



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