盛岡・色彩による心のケア ハートフルカラー セラフィ

岩手県盛岡市を中心に、色彩心理の専門会員が、色彩とアート表現を使いながら、心のケアに役立つ活動をしています。

本の紹介~詩的だけれど社会的視野を広げてくれる~「ソフィアの白いばら」

2013-05-19 23:34:09 | 
前回に続き、これも尊敬する先生から紹介いただいた本。
本当に、いつも読み応えがある本を手渡してくださって、心から感謝します。

これは、小説ではなく、著者のある一時期を切り取った自伝的なお話。1970年から2年あまりという短いけれど濃密な出来事で埋め尽くされた期間のお話です。

ブルガリアという遠い国。そこに集まる各国の留学生たちが、まざまざとその個性を浮かび上がらせます。著者である日本人YOKOを取り巻く20代から40代までの留学生たちの国籍は、ベトナム、ルーマニア、エジプト……など。例えば、夏の海のように濃い青の瞳を持った白い肌の女性、またある一人は若やいだ草のにおいがする逞しい男性。

登場人物たちは、各々の分野で留学生として国を代表していて、医師、歌手、科学者、言語学者、と並々ならぬ努力家であり、また多くの留学生の親たちは故郷の要職についています。

YOKOが最初に日本人であるがために、つき当たった出来事のひとつが、ベトナムの女子学生たちからの冷たい態度でした。ベトナムから見た日本は、同じアジアでありながら同胞を裏切った「アジアではない国」として激しい憤りを感じる国。そのことは、その国から来たという留学生に、怒りの感情をぶつける十分な理由になるのです。

読み進めていくうちに、YOKOは、単に物事をはっきり断れない優柔不断な日本人なのではなく、非常に強い意志と覚悟を持ってブルガリアにやってきた、ある意味へんくつな女性である、そんなキャラクターが滲み出てきます。そして、周りの人々はそんなYOKOに心惹かれるのだろう、濃密な人間関係を持つようになります。

けれど、思いがけず短い期間のうちに、別れはやってきます。
親友は、理由も話せないまま突然行方をくらまし、後に、西ドイツへ一家で亡命したことがわかります。更に彼女は単身ロサンゼルスへ。
仲良くなったエジプト人は、国を追われ、ブルガリアからアルジェリアへ。
そして、何より、YOKOと特別に強い絆を結んだベトナム人のグェンは、ベトナム戦争の終焉間際に戦地に戻り、約束したソフィアへの帰還は叶わなくなってしまいます。

文章というものは、なんと奥深いものか、と思うのは、今ここに書いたことが、翻訳家である著者八百板洋子氏の澄み切った筆致によって、まるで自分自身が経験しているかのようにありありと、その人間達の生き様を感じさせ、一人ひとりの意志が伝わってくること。

社会の中の人間、という視点でみると、私たちも、今の日本の社会情勢の中で、少なからずその環境の波にのまれながら生きているのだ、ということになるのだけれど、この本を読むと、あまりに自分が近視眼的すぎることにはっとさせられます。
ある点では個人的な愛、そして大きな視点では人間愛を描いた、詩的だけれど社会的な要素を持つ、重みのある本でした。

こんなことを言っては身も蓋もないのですが、当時の世界情勢を特異な環境で肌で感じたYOKOさんと同じような体験を、自分は正直、これからもできないと思います。
でも、その「肌で感じた感覚」をほんの少しでも共に感じることができたという意味で、この本を世に出してくださった著者に感謝します。

個人的には、被差別の解放運動をテーマにした「橋のない川」(住井すゑ著)という本を20代の時に読み、個人が社会と関わり、長い道のりを経ながらもその社会を変えてゆくということについて、目の醒める思いをしたのですが、それに通じる読後感のある本でした。

「ソフィアの白いばら」 著者:八百板洋子 発行:福音館書店 1999年初版発行 

栄養補給(本)2

2013-05-03 21:08:54 | 
GW、にぎやかなニュースも沢山飛び込んでくる

自分も、すごく久しぶりに連休をいただいています。

私の場合は、まず睡眠

で、心に余裕ができたところで、久しぶりに本を沢山読みました。
(実用書や仕事の本以外で、です)

その中のひとつがこちらでした。



これは、多分自分では手に取る可能性がほとんどない本。

児童書専門の、すごく尊敬する先生が直々に渡して(選んで)くださった、私にとってはとても贅沢な一冊。

その先生が渡してくださる本は、どれも一度開いたら閉じることができず、いつも一気に読んでしまう。今回は、タイトルから、のんびり読める本かなあ、と思っていたら、、やっぱり一気読み

外で人と会ったり話したり・・・の時間も大切。

でもこうして、活字に没頭するのも自分にとってはすごく大事な時間だと思う。

質のよい児童書は、すーーっと心が洗われる。

忙しくても、続けていきたいなあ

栄養補給

2013-03-30 22:32:57 | 
年度末、いろいろあって、正直、忙しい

でも私なんかは序の口みたいなもので、もっともっと忙しい人を沢山知っている。
そのほとんどの人は睡眠時間を削って、がんばっている。

今日は、そんなさなかの休日で、「何が最優先」か迷ったけど、とりあえず、休んだ

睡眠不足大敵なので、普段の不足分を取り戻しつつ、、久しぶりに本を読む。

昔、「よいカウンセラーになるには」みたいな質問に対して、偉い先生が「映画や本を沢山見たり読んだりして、共感力を養う」みたいなこと言っているのを聞いた(か、読んだ)。

参考文献を片っ端から読んだり、療法を覚えたりすることで、いっぱいいっぱいだったその頃の自分には、ちょっと力が抜ける感じのする答えだった。

正論かどうかはともかく、忙しい時に、まったく関係のないフィクションの世界に足を踏み入れるのは一瞬躊躇する。
でも、敢えて。

去年の出会いをきっかけに、こういう時間が、自分にとって大事だということがわかったから。

初版1967年、2012年第52刷発行(!!)の、クラシック(よい意味です)な児童書をもうすぐ読破