千秋小梅日記

コミティア参加サークル「千秋小梅うめしゃち支店」を運営する小津端うめからの連絡、雑感、感想などです。

アレント入門が面白かった

2019年06月13日 22時19分18秒 | 読書・活字

ハンナ・アーレントが気になってます。ちくま新書の「アレント入門」(中山元)を読んで、ものすごく刺激を受けました。

この本の流れとしては、ナチスドイツの全体主義がなぜ生まれ、皆が支持していったのかを考察する「全体主義の起源」、全体主義が生まれた「社会」そのものを考察する「人間の条件」、社会の中にいる一人一人の凡庸な悪を考察する「エルサレムのアイヒマン」、そのうえで人間の良心とはを考察する「道徳哲学のいくつかの話題」…の4本立て。流れが良く、読みやすかったです。

それでもかなり沢山の有益な思考があり、整理して理解してゆくのが大変でした。なのでノートにちまちまと箇条書きにしてまとめて…とやっている内、現在の日本の状況とオーバーラップしてくるところがいくつかあって、そういう意味でもものすごく刺激を受けました。

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「国民国家」という言葉に含まれるネーションとステイツは互いに矛盾したもので、ネーションが優位になると国の中で民族に優劣、区別をつけるようになってゆく、という指摘。他のアジア人と自分は違うと考えたり、隣の民族を貶めて平気でいるという日本人の思考回路がどこから来るのかというのを理解するのにとても納得のいく説明でした。そして、今東京入局管理局で行われていることに対しても。

東京入局管理局に関しては、無国籍者に対する考察の中で挙げられている、「故郷の喪失、保護の喪失、人権の喪失」がそのまま当てはまるし、元の国が受け入れないことによる、日本ひいては世界の厄介者となった人が「どう扱っても誰も文句を言わない」状態なっている。だからあんな非人間的なことをされているのだな、と理解できました(それをよりによって日本人がやっていることが同じ日本人として恥ずかしく悔しい)。

人は、人と繋がりたいのに繋がれない孤立の状態に置かれ恐怖とイデオロギーを注ぎ込まれると、自分の頭で考えることが出来なくなっていくと書いてあって、それを読んで思い出したのが、自民党がよく言う「民主党政権の悪夢」という言説。あれは恐怖とイデオロギーを流布なんだなぁ、と考えたら理解できた気がしました。
というのは、ずっとあの言葉、おかしいと思ってたのですよ、だって今までの日本の歴史状況を考えたら、一党独裁が望ましいって言ってるのに等しい。なのにおかしいと思う人は少ないらしい。そもそも自民党だって悪夢のようなことをやった&やってるわけだし、民主党だってやり遂げたことがあるわけだしあれは知的な言い回しとはとても思えない。でもあれを聞いて「だから今のシステムの他に選択肢はない」と思う人は、どうも多いらしい。
個人的には多分、民主党政権はそれこそ人との繋がりがあって誕生した面がある、しかしそれが夢見たように上手くいかなかった、その反動で孤立状態にこもってる人が多いのではないかしら、なんて考えてます。でも、初めて政権とって、今まで何十年も政権を運営していた政党より上手くやれっていうのはよく考えると無茶な話だったのだし、初めてで上手くやれなかった失敗に対して私(たち?)は厳しすぎたんだな(子育てで子供に多くを望みすぎるように)、と反省しているのが今の自分の正直な気持ち。

また、国会や年金資産での言葉の軽視、総理大臣のあまりの軽さ、あまりにあからさまな身内びいき…それらが止まらないのに日本国民としては頭を抱えてるわけですが、本を読んでいく中で、「近代に入り公的な活動が弁論による活動から経済活動に移って行ったことで、こういうことが起きますよ」、といって書かれている「自分の言葉やアイデンティティより自分の利益が大事」「システムで統治する(統治者の価値を必要としない)」「平等の反動の親密さへの傾倒」等々がそのまんまやん!と思ってしまっしまいました。

で、そんなことを考えつつ、最終章の良心についてを読む。ものすごーく煎じ詰めると、多様性を受け入れられるか、他者の立場に立つことを想像できるか、良い見本を自分の内に作り出せるか、ということが大事だということだった。それを読みつつ、実生活では中々政治的な話はしないから、見本が出来にくいけど、SNSの中から、そこから派生したリアルな世界の中から、そういう良い見本を作り出せるのは現在の良い所だな、なんて思ったのでした。

 

ちなみに原著は読もうと思って数ページ読むと脱落するを繰り返しています。くくく、難しい…