恐怖の肉屋
その肉屋は相当に変わっていた。
安売りの雑貨屋のように狭くて細長い通路の両側にこれでもかと言わんばかりに肉のパックがどっさり置いてある。
そして、とにかく安い。
正確にいえば、すべてが安いわけではなく、安い肉も高い肉も売っている。
だから俺はよくそこに肉を買いに行くのであるが、ひとつ、困ったことがあった。
その店には、万が一、床に肉のパックを落とした場合は、その肉を買わなければいけないという決まりがあった。
先日などはコートの袖に引っかけて、100グラム1000円もする高級牛肉を500グラムも落としてしまった。会計は200円のはずが、5200円に跳ね上がってしまった。
今日はこれ以上ないというくらいに慎重に通路を進んだ。国産豚肉100グラム50円という破格の安い肉を500グラムもカゴに入れた。安いけれど、品質はよい。
とにかく通路の両側に注意を向けた。フッと吹いたら落ちるのではないかというくらいに、ほとんど宙に浮いたようなパックがあちらこちらにある。
最後の難所を無事、突破してホッとした時だった。なにかが俺の頭に当たり、床にドサッと落ちた。
それは肉のパックだった。上を見ると天井から細い紐がぶら下がっていて、先には金属のフックが付いている。ここまでいくと罠ではないか。
俺は仕方なく、落ちたパックを拾ってみた。100グラム300円のアメリカ産豚肉が1000グラムも入っていた、3000円だ。しかもこれはよい肉ではない。食べられないわけではないがよくもない肉のパックには、ご丁寧にドクロのマークが記してある。滅多にないシロモノなのだが、100パックに1パックくらい、そういったハズレがある。
俺は仕方なくレジに向かい、3250円を支払った。
完
その肉屋は相当に変わっていた。
安売りの雑貨屋のように狭くて細長い通路の両側にこれでもかと言わんばかりに肉のパックがどっさり置いてある。
そして、とにかく安い。
正確にいえば、すべてが安いわけではなく、安い肉も高い肉も売っている。
だから俺はよくそこに肉を買いに行くのであるが、ひとつ、困ったことがあった。
その店には、万が一、床に肉のパックを落とした場合は、その肉を買わなければいけないという決まりがあった。
先日などはコートの袖に引っかけて、100グラム1000円もする高級牛肉を500グラムも落としてしまった。会計は200円のはずが、5200円に跳ね上がってしまった。
今日はこれ以上ないというくらいに慎重に通路を進んだ。国産豚肉100グラム50円という破格の安い肉を500グラムもカゴに入れた。安いけれど、品質はよい。
とにかく通路の両側に注意を向けた。フッと吹いたら落ちるのではないかというくらいに、ほとんど宙に浮いたようなパックがあちらこちらにある。
最後の難所を無事、突破してホッとした時だった。なにかが俺の頭に当たり、床にドサッと落ちた。
それは肉のパックだった。上を見ると天井から細い紐がぶら下がっていて、先には金属のフックが付いている。ここまでいくと罠ではないか。
俺は仕方なく、落ちたパックを拾ってみた。100グラム300円のアメリカ産豚肉が1000グラムも入っていた、3000円だ。しかもこれはよい肉ではない。食べられないわけではないがよくもない肉のパックには、ご丁寧にドクロのマークが記してある。滅多にないシロモノなのだが、100パックに1パックくらい、そういったハズレがある。
俺は仕方なくレジに向かい、3250円を支払った。
完