東拳は毎日、晴谷星人の出現に備えて河原のパトロールを7日間も続けたが、なかなか出くわせず、気分転換に山中湖に出かけることにした。
「やっと着いたー」自転車を数時間、こぎ続けた。拳は走るのは遅いが、自転車をこぐのはまあまあ速い。
湖に着いた拳は、到着した途端に、これといった目標がないことに気づいた。「じゃあ、帰るか」
「待ちいや」拳が振り向くと、そこに西軒がいた。「お前、湖に来たのに、そのまま帰る気かいな。ほんま、関東者は理解できんわ」
「お前」拳が言った。「なんで、ここにいる?琵琶湖じゃないぞ、ここは」
「わしはな」西が返した。「いつもお前の動向を探ってるんや。尾行いうの、あるやろ。わしは動きが速いさかい、尾行でのうて頭行になってしまうんや、へへへ」
「つまり、ストーカーだな」拳が言った。「しかし、俺たちは男同士だ。合体もできないんだぞ」
「気色悪いなあ」西が返す。「お前の体なんて興味ないわ」
「なら、なんで」拳が言いかけた時だった。湖の真ん中から大量の水が宙に飛んだ。湖の底にある地面がむき出しになった。
「うわあ、怪奇現象や」西は少し興奮していた。「湖の水が噴き出しとる」
「まさか」拳は考えていた。「晴谷星人の仕業か」
「助けてー」女の声がした。
「あ、女や」西は喜んでいた。「女がおる、女がおるぞ」
「バカ、喜んでる場合か。助けを求めてるんじゃないか」
三人の女が走ってきた。運動の練習なのだろうか、お揃いの白いTシャツに数字の書かれたゼッケンがついている。
「助けてください」1と書かれたゼッケンの女が言った。
「私達、狙われているんです」2と書かれたゼッケンの女が言った。
「湖から大きな怪獣が出たんです」3と書かれたゼッケンの女が言った。
「狙われているって?」拳が聞いた。「誰に?」
「あほか」西が突っ込む。「怪獣に狙われてるに決まっとるやないけ、文脈的に」
「うーん」拳は首をひねった。「なんで怪獣がこんな若い女の子を狙うのだろう」
「ほんま、アホやなあ」西がイラついた。「怪獣に理由なんてあるかい、若い女が好きなだけや」
「それはお前のことだろう」拳は冷静だった。「怪獣が好きなのは、怪獣のメスだ」
「助けてください」1と書かれたゼッケンの女が言った。
「私達、狙われているんです」2と書かれたゼッケンの女が言った。
「湖から大きな怪獣が出たんです」3と書かれたゼッケンの女が言った。
「怖かったやろ、ここから先はわいと一緒に逃げよう」西は嬉しそうだ。「手、つないで行こうなあ」
西は1と書かれた女の手をつかんだ。「おお、冷たい手やなあ、湖の水、かぶったんやな、寒かったやろ?」
「助けてください」1と書かれたゼッケンの女が言った。
「私達、狙われているんです」2と書かれたゼッケンの女が言った。
「湖から大きな怪獣が出たんです」3と書かれたゼッケンの女が言った。
「なんかずっと同じ」拳は思った。「日本語がよくわからない外国人みたいだ」
「さよか」西は幸せそうだった。「じゃあ、みんな手をつないで逃げよう。でもな、手は二本やから、ひとりはわしの胴体に抱き着いてくれな」
女たちは、西に言われたとおりにした。西は逃げもせず、ニヤニヤしているだけだった。
突然、拳が走り出した。50メートルほど走ってから言った。「西、危ないぞ、そいつらは晴谷星人だ!」
「なんやて」西が怒った。「なんの証拠があって、そんなことを」
「お前がそんなにもてるはずない」拳は断言した。「気をつけろ、宇宙人だ」
「なんですって」ゼッケン1の女が切れた。「宇宙人と一緒にしないでよ」
「ははは」拳が笑った。「では、地球外生物と言い直そうか」
「しまった」ゼッケン1の女が言った。「はかったな」
「てゆーことは」西は手を振りほどいて逃げ出した。「宇宙人やー、助けて」
「宇宙人ではない」3人の晴谷星人が巨大化した。「晴谷星人と呼べ」
「ウルトラマンウィンド」拳が叫ぶ。
さっきと同じように湖の水が浮き上がった。今度は浮いただけでなく、空中をクルクルと回っている。
「え?ウィンド?」拳は驚いた。「風でなくて、水?」
水の中からウルトラマンウィンドが現れた。「キタイカ、ダケデナク、エキタイカ、モ、デキルノダ」
「ウィンド」拳が尋ねた。「もしかして、湖にいる怪獣って」
「カイジュウ。デハナイ。ワタシダ」
「なんやそれ」西が嘆いた。「なんて……盛り上がらん話や、わし、もう帰る」西はあっという間に拳の視界から消え去った。
「ウルトラマンウィンド、勝負はお預けだ」
3人の巨大化した晴谷星人は北へ向かって飛んで行った。
「サルモノハオワズ」
ウルトラマンウィンドはいつものように消えた。
「気体化?液体化?」拳は頭をひねった。「湖、カラなんだけど」
山中湖に平和は戻った、のだろうか?
「速く帰ろう」拳は急いで自転車をこぎ、逃げるように家に帰った。
「やっと着いたー」自転車を数時間、こぎ続けた。拳は走るのは遅いが、自転車をこぐのはまあまあ速い。
湖に着いた拳は、到着した途端に、これといった目標がないことに気づいた。「じゃあ、帰るか」
「待ちいや」拳が振り向くと、そこに西軒がいた。「お前、湖に来たのに、そのまま帰る気かいな。ほんま、関東者は理解できんわ」
「お前」拳が言った。「なんで、ここにいる?琵琶湖じゃないぞ、ここは」
「わしはな」西が返した。「いつもお前の動向を探ってるんや。尾行いうの、あるやろ。わしは動きが速いさかい、尾行でのうて頭行になってしまうんや、へへへ」
「つまり、ストーカーだな」拳が言った。「しかし、俺たちは男同士だ。合体もできないんだぞ」
「気色悪いなあ」西が返す。「お前の体なんて興味ないわ」
「なら、なんで」拳が言いかけた時だった。湖の真ん中から大量の水が宙に飛んだ。湖の底にある地面がむき出しになった。
「うわあ、怪奇現象や」西は少し興奮していた。「湖の水が噴き出しとる」
「まさか」拳は考えていた。「晴谷星人の仕業か」
「助けてー」女の声がした。
「あ、女や」西は喜んでいた。「女がおる、女がおるぞ」
「バカ、喜んでる場合か。助けを求めてるんじゃないか」
三人の女が走ってきた。運動の練習なのだろうか、お揃いの白いTシャツに数字の書かれたゼッケンがついている。
「助けてください」1と書かれたゼッケンの女が言った。
「私達、狙われているんです」2と書かれたゼッケンの女が言った。
「湖から大きな怪獣が出たんです」3と書かれたゼッケンの女が言った。
「狙われているって?」拳が聞いた。「誰に?」
「あほか」西が突っ込む。「怪獣に狙われてるに決まっとるやないけ、文脈的に」
「うーん」拳は首をひねった。「なんで怪獣がこんな若い女の子を狙うのだろう」
「ほんま、アホやなあ」西がイラついた。「怪獣に理由なんてあるかい、若い女が好きなだけや」
「それはお前のことだろう」拳は冷静だった。「怪獣が好きなのは、怪獣のメスだ」
「助けてください」1と書かれたゼッケンの女が言った。
「私達、狙われているんです」2と書かれたゼッケンの女が言った。
「湖から大きな怪獣が出たんです」3と書かれたゼッケンの女が言った。
「怖かったやろ、ここから先はわいと一緒に逃げよう」西は嬉しそうだ。「手、つないで行こうなあ」
西は1と書かれた女の手をつかんだ。「おお、冷たい手やなあ、湖の水、かぶったんやな、寒かったやろ?」
「助けてください」1と書かれたゼッケンの女が言った。
「私達、狙われているんです」2と書かれたゼッケンの女が言った。
「湖から大きな怪獣が出たんです」3と書かれたゼッケンの女が言った。
「なんかずっと同じ」拳は思った。「日本語がよくわからない外国人みたいだ」
「さよか」西は幸せそうだった。「じゃあ、みんな手をつないで逃げよう。でもな、手は二本やから、ひとりはわしの胴体に抱き着いてくれな」
女たちは、西に言われたとおりにした。西は逃げもせず、ニヤニヤしているだけだった。
突然、拳が走り出した。50メートルほど走ってから言った。「西、危ないぞ、そいつらは晴谷星人だ!」
「なんやて」西が怒った。「なんの証拠があって、そんなことを」
「お前がそんなにもてるはずない」拳は断言した。「気をつけろ、宇宙人だ」
「なんですって」ゼッケン1の女が切れた。「宇宙人と一緒にしないでよ」
「ははは」拳が笑った。「では、地球外生物と言い直そうか」
「しまった」ゼッケン1の女が言った。「はかったな」
「てゆーことは」西は手を振りほどいて逃げ出した。「宇宙人やー、助けて」
「宇宙人ではない」3人の晴谷星人が巨大化した。「晴谷星人と呼べ」
「ウルトラマンウィンド」拳が叫ぶ。
さっきと同じように湖の水が浮き上がった。今度は浮いただけでなく、空中をクルクルと回っている。
「え?ウィンド?」拳は驚いた。「風でなくて、水?」
水の中からウルトラマンウィンドが現れた。「キタイカ、ダケデナク、エキタイカ、モ、デキルノダ」
「ウィンド」拳が尋ねた。「もしかして、湖にいる怪獣って」
「カイジュウ。デハナイ。ワタシダ」
「なんやそれ」西が嘆いた。「なんて……盛り上がらん話や、わし、もう帰る」西はあっという間に拳の視界から消え去った。
「ウルトラマンウィンド、勝負はお預けだ」
3人の巨大化した晴谷星人は北へ向かって飛んで行った。
「サルモノハオワズ」
ウルトラマンウィンドはいつものように消えた。
「気体化?液体化?」拳は頭をひねった。「湖、カラなんだけど」
山中湖に平和は戻った、のだろうか?
「速く帰ろう」拳は急いで自転車をこぎ、逃げるように家に帰った。