月刊オダサガ増刊号

2024年創刊予定の「月刊オダサガ」の増刊号です。
「月刊オダサガ」編集長が好き勝手に書いているブログです。

ホームコメディ「パパはホームラン王」 1-3 ジンクス

2013-11-29 10:16:59 | パパはホームラン王
パパはホームラン王 1-3

信二「御三田さん、俺です、篠田です」
万我郎「ははは、そろそろ電話がかかってくる頃だと思ってたよ」
信二「そうなんです、今日は活動なしの状態で打田がホームラン打っちゃったんで」
万我郎「テレビで見てたよ、もう手配はしてある、TSで10時にはスタンバイできる」
信二「恩にきます」
御三田万我郎(おみだばんがろう)は俺の親父、篠田忍(しのだしのぶ)の古くからの友人で、大手芸能プロダクションの社長、打田の活動ではお世話になることが多い、TSというのは暗号で帝人国際ホテルのTとスイートルームのS
信二「さて、そろそろかな」
インタビュアー「今日のヒーロー、一本木選手と打田選手でした」
俺は今自分の車の中、御三田社長との電話を終え、ラジオで野球中継をチェックした、ちなみに車は球場裏の道路に止めている
遠軌「篠田、悪い、やっと終わった」
信二「オッケー、早く乗れ」
打田は着替えもせずに上からコートを羽織り、サングラスをかけ、それが変装になっているのかどうか微妙な格好で俺の車に乗り込んだ
信二「今日はTS、帝人国際ホテルのスイートだ」
遠軌「ああ、俺のベンツ、置いてあるよ」
打田は同じベンツ、ナンバープレートの下一桁以外、色、形からシートカバーまで全く同じベンツを3台所有しており、活動用に配置している
さて、乗車中にちょっとはまともに変装し直した打田は、帝人国際ホテルの入り口に車を止めると走って出て行った
遠軌「篠田、ありがとう」
信二「おつかれ、気をつけてな」
そう言って、俺は自宅へと車を走らせた
スイートルームでは万我郎が頼んでくれた女が打田を待っていた
愛子「あら、ホントに打田選手が来ちゃった、感激」
その女は駒場愛子という名前で、もちろん、打田とは初対面だった
遠軌「申し訳ありません、今日はよろしくお願いします」
愛子「丁寧な人ね、テレビで見たまんま」
遠軌「あまり時間がないもので」
愛子「はいはい、急ぎましょう」
カキーン
遠軌「それでは、僕、帰ります」
愛子「大変ね、でもよかったわ、ウッチー」
遠軌「ありがとうございます」
愛子「ありがとうなんて言わないで、愛してるとでも言ってよ」
遠軌「そう言いたいのはやまやまなのですが、僕、女房と、子供もいるので」
愛子「冗談よ、冗談、こちらこそ素敵な瞬間をありがとう、おやすみ」
遠軌「おやすみなさい」
打田はそう言い残すと一目散に地下の駐車場へ向かった
遠軌「よし、車は予定通り、えーっと、キーは、2号車だから、これか」
車に乗り込んだ打田は自宅への道のりを急いだ
遠軌「えーっと、服はオッケー、朝と同じだ、時計、靴、バッグ、携帯電話、財布、よし、忘れ物もないな」
信号待ちで荷物チェックをする打田、まあいつものことだから手慣れたもんだ
遠軌「それで、時間は?そうだな、11時半には帰れるな」
打田の知られざるジンクス、それはホームランを打った日には女性と関係を持たないといけない、それも同じ女性ではダメ、毎回新しい女性と関係を持たなければならない、というとんでもないジンクスなんだ、そしてたかがジンクス、されどジンクス、このジンクスを守らないと、打田はしばらくホームランを打てなくなる、看板選手の打田がホームランを打たなければベアーズは勝てない、ファンは離れる、それは選手である俺の生活にも影響する、だから俺は活動に協力することは仕事だと思ってやっているんだ

ホームコメディ「パパはホームラン王」1-2 打田先制のツーラン

2013-11-28 14:52:42 | パパはホームラン王
パパはホームラン王 1-2

逸茂野「今年もいよいよ、プロ野球が開幕しました、実況は私、逸茂野仁(いつものひとし)、解説は団田仁(だんだじん)さんです」
団田「いやあ、まさか開幕戦で新人、一本木とは、さすが上川監督、大胆な起用ですね」
そんなわけで始まった開幕戦なんだけど、瞬は去年のドラフト会議で全球団に指名された10年に一人と言われる大物新人、プロに来るために大学2年で中退宣言してしまったっていう、まあ、上川監督に勝るとも劣らない大胆な男、試合は5回まで0-0だから、期待には十分過ぎるほど応えてくれてるよ
逸茂野「さあ、いよいよ試合は6回表、ベアーズの攻撃、この投手戦の中、唯一気をはいているこの男、今日2安打の2番篠田がバッターボックスに入りました
団田「篠田、今年も開幕戦からいいですね、天才の異名は伊達じゃない、今年も健在ですね」
逸茂野「おっと、篠田、初球打った、今度はレフト前ヒット、いきなり猛打賞です、天才の実力を易々と発揮しております」
団田「ライト前、センター前、レフト前、ですからね、コースに合わせて自在なバットコントロールですね」
逸茂野「そして、プロ野球界の誇るスーパースターといえばこの男、打田遠軌(うちだとおき)です」
団田「開幕戦では打率はよかったものの、本塁打0ですからね、ファンはがっかりしたことでしょう」
逸茂野「しかし打田は7年連続オープン戦本塁打0で、公式戦本塁打王という実績があります」
団田「ずいぶんと変わったジンクスですね」
それはジンクスじゃなくって、わざと、なんだな、本当の打田のジンクスはそんな生易しいものではないよ
カキーン
逸茂野「出たー、打田、いきなりライトスタンドだ、ツーランホームラン」
打っちゃったよ、打っちゃった、どうする?作戦開始か?
逸茂野「さあ、2-0とリードして6回裏のマウンドへ上がった新人一本木、投げた、おっとつまった、平凡な二塁ゴロ、天才篠田が、軽く、あ、あ、あ、トンネルした、名手篠田、エラーです」
上川「バカモン!!!篠田、また気を抜きおって、交代だ、山本セカンドだ、それから、甲斐」
響「はーい、いつでも行けますよ」
上川「頼む、大物と言われても新人、ここは確実に勝ちに行く」
響「りょーかいっす」
逸茂野「セカンドは山本に、そしてピッチャーは甲斐だ、なんと日本一の抑えの切り札を6回から投入してくるとは」
団田「上川監督らしい采配ですね、大胆ですねえ」
響「瞬、あとは任せとけ、ヒーローインタビューの準備でもしとけ」
瞬「ありがとうございます、甲斐先輩のいるベアーズでよかったです」
信二「あれ、ヒーローインタビューは俺じゃないの?猛打賞だぜ」
響「それも一瞬でパーだ、このアホ、気い抜きやがって」
かー、普通言うか、エラーしたチームメートにそこまで、今年も変わらず無口辛口だこと、日本一のスーパークローザー、甲斐響(かいひびき)まあでもよし、ここまではいい、もう一仕事
信二「バッカヤロー、3安打で絶好調だっていうのに交代かよ、相変わらずの独裁チーム、いくら瞬が入ったって、また今年もBクラスだな」
真「バカ、篠田、また監督に向かってなんてことを」
上川「真面田、試合中にいちいちベンチに来るな、早く戻れ」
真「あ、しまった」
信二「監督、気持ち切り替えたいんで、今日は帰ります」
上川「勝手にしろ」
というわけで、ここまではまんまと作戦成功、仕上げも抜かりなく行かないとな

ホームコメディ「パパはホームラン王」1-1 開幕戦

2013-11-28 13:38:10 | パパはホームラン王
パパはホームラン王 1-1

信二「打田、ついに開幕だな」
遠軌「ああ、開幕だ、篠田」
信二「今日は忙しかったんだろ」
遠軌「ああ、家族で開幕記念パーティーやって、それからさっきのチームミーティングに直行、でもってこれからナイターの開幕戦」
信二「つまり活動は?」
遠軌「してない」
信二「ふう、やれやれだな」
遠軌「いつも悪いな」
信二「いいよ、お前のためはチームのため、チームのためは俺のため、だからさ」
俺は篠田信二(しのだしんじ)、プロ野球チーム、タイガー電気ベアーズの選手、2番二塁、去年の首位打者
信二「マスコミはまた今年も打田、オープン戦では不発、0本塁打って、大騒ぎしてるな」
遠軌「それも毎年のこの季節の行事みたいになってきてるよ」
今俺が話しているのはこの物語の主人公、打田遠軌(うちだとおき)、タイガー電気ベアーズのスーパースター、3番一塁で去年のホームラン王
ジョナサン「ヘイ、ウチダ、調子悪いみたいね、でも大丈夫、オイラ、絶好調」
バッティング練習を終えて戻ってきたのは、ジョージ・ジョナサン、5番センター、今年のオープン戦のホームラン王
遠軌「ああ、ジョナ、代わりに頼むぜ」
ジョナサン「ハイヨー」
あーあ、気楽な外人だこと、毎年オープン戦だけは調子いいんだ、ジョナサン、きっとそんなジンクス、憶えてもいないんだろうけれど
真「篠田、打田、ジョナサン、今年も頼むぞ」
ベアーズのキャプテン、真面田真(まじだしん)、4番キャッチャー、去年の打点王だ
遠軌「マジさん、今年も4番、頼みますよ」
真「まあ、実力的には打田が4番みたいなもんだがな、今年もあれだな、開幕からカットバスんだろ?」
遠軌「さあ、それはどうだか、神のみぞ知る、ですよ」
そうなんだ、今日は活動がなかったそうだから、言葉通り、神のみぞ知る、なんだよな
真「頼りにしてるぜ、打田、篠田、ジョナサン」
そこに上川貞治(かみかわていじ)監督が横から声をかけてきた
上川「レフティハリケーン、揃い踏みだな」
俺と打田、それからマジさんは三人共左利きでベアーズのレフティハリケーンと呼ばれるアリーグ一の強力打線の2番3番4番、ちなみにジョナサンはエアコンと呼ばれている、扇風機よりも強力だから、という意地の悪いマスコミにつけられたニックネームだ
真面田「監督、今年もよろしくお願いします、キャプテンとして全力を尽くします」
マジさんは上川監督を神様のように心から尊敬しているんだよな、そして真面田って名前通り、ホントに真面目でいい人なんだ、融通利かないのがタマニキズ、だけどね、上川監督はプロ野球界の重鎮、かつての名選手でおそらく球界で一番おっかない監督、選手時代の実績も半端でなく、プロ野球の本塁打記録をいまだに保持しているんだからすごい、もう今年で70歳だから、30年以上は破られてないってこと、そして俺の天敵、ということになってる
上川「初戦がレンジャーズというのはいいな、勝てばはずみがつく」
東京レンジャーズは去年優勝した名門プロ野球チーム、ちなみにうちは4位、三冠もっててなんで4位かって?そりゃそのうち、わかるよ、まあ皆さんのご想像通りだけどね
上川「それに新エースが育てば、優勝争いにも加われる、いろんな意味で大事な一戦だ」
そうそう、そうなのよ、上川監督、開幕戦にいきなり新人ピッチャー、先発だからね、相変わらず思い切りがいいいことで、まあ確かに新人とは思えない逸材だからね、一本木瞬(いっぽんぎしゅん)はさ、お、そろそろゲームが始まるな、またね