綾小路有長(1792~1881)は、神楽・郢曲の家、綾小路家の当主で、歌人としても知られています。歌会始(当時は「歌御会始」)では「発声」の役を、最晩年に至るまで務め、明治天皇から褒賞を受けています。小生は有長の筆跡を集めていますが、これは「冬神楽」題で、季節といい、家業へのつきづきしさといい、ご紹介にふさわしいと思います。神楽歌の終わり近く、「其駒揚拍子」にかかったところで、神送りの舞として舞われる「人長舞」を詠んだ歌で、「庭火」は、宮中賢所で実際に焚かれるものであると同時に、神楽の序曲「庭火」をも詠みこんでいます。
かはらじな庭火のまへに人の長のそでを神代にかへし舞つも 有長