住職日記

瀬戸内海の島にある寺の住職の日々の日記です。

母の十恩

2009-04-26 | 追善

 3月の陽気に一気の戻った感がいたします。

 昨日の通夜お勤めから今朝まで遺族の方々が本堂において通夜を営まれました。

 最近は渦巻き型の線香を用いられることが多いのですが、これを用いず短い線香を使われ、線香が短くなると交代で新しい線香をお供えされまさに不眠不休で朝まで故人との最後の夜を過ごされました。

 「父母恩重経(ふぼおんじゅうきょう)」という、父母の恩が説かれた経に母親への恩について書かれた箇所があります。

 ①懐胎守護の恩(かいたいしゅごのおん)・・・母は子を体内に宿すと十月の間、わが身の血と肉を与え守り育み、そのために自らは重病を感じるほどである。

 ②臨生受苦の恩(りんじょうじゅくのおん)・・・いよいよ臨月の時、生みの苦しみを感じることは、言葉に尽くしがたく、時として母胎を死にに至らしめることもある。

 ③生子忘憂の恩(しょうしぼうゆうのおん)・・・子どもが産声をあげて健やかに生まれるときは、これまでの苦しみをすっかり忘れ、自分も新しく蘇生したほどの喜びがある。

 ④乳哺養育の恩(にゅうほよういくのおん)・・・初めて子どもを産んだ母の顔は花のように美しかったのに、やがて子を養うことに数年すれば養育に全身を使い果たし、次第に衰えていく。

 ⑤廻乾就湿の恩(かいかんじゅうしつのおん)・・・冷たい霜の夜、氷つく雪の朝にも乾いて暖かいところに子どもを寝かせ、わが身は湿って冷たいところにいるようにするのが母の姿である。

 ⑥洗灌不浄の恩(せんかんふじょうのおん)・・・一日、何度も赤ちゃんのおむつを取替えたに体を綺麗に洗うことを母親は厭うことがない。

 ⑦嚥苦吐甘の恩(えんくとかんのおん)・・・食べ物を口に含んで、子どもに与えるとき、苦いものは母親が飲み込み、甘いものを子どもに与える。

 ⑧為悪悪業の恩(いあくあくごうのおん)・・・子どものためであればどんなことも厭わない。

 ⑨遠行億念の恩(おんぎょうおくねんのおん)・・・子どもが遠いところに行けば、帰ってくるまで落ち着かず、寝ても覚めても子どもの無事を願う。

 ⑩究竟憐愍の恩(くきょうれんみんのおん)・・・生きている間は、子どもを護るためには自らの命を捨ててもいいと感じ、死後にも子どもの身を護ろうと願う。

 この十恩には恩愛と慈愛が説かれています。

 中坂家・藤永家の皆様におかれましては一昨日よりお疲れのことと存じます。

 くれぐれもご自愛下さいませ。

 故人のお孫さん達が通夜・開蓮忌のお勤めの際に大きな声で読経されていたのが心に残っています。

 お孫さん達の健やかな成長をお祈りいたします。

 なお、葬儀から寺での開蓮忌までの間に丸下家、進藤家の追善供養を勤めました。

 時間等の変更にご理解をいただきました両家の皆様にこの場を借りてお礼を申し上げますとともに皆様の身体堅固、諸縁吉祥を念じます。合掌

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