松江人の日帰り登山

私のモットー SIMPLE IS THE BEST

この1冊 『眠りつづける少女たち』スザンヌ・オサリバン 著

2023-08-28 | 読書

人は「心が痛む、苦しい」「心が癒される」という言葉を使うが、一体《心》って身体のどこにあるだろう。著者はアイルランド生まれ。ロンドンにある国立病院の脳神経科医である。2017年、スウェーデンの難民申請者のクルド人家族の少女に起きた《眠り病》。自ら食事を摂ることもなく、ひたすら眠っている(眠っているように見える)。やがて次々と似たような症状が広がりだす。  この本ではこの症例を〈あきらめ症候群〉と書いているが、他の〈謎の病 Mystery Illness〉も含め、世界各地の小さなコミュニティ(地域社会・地域共同体)に様々な症状の患者(大人にも子供にも)が現れてくる。いくら検査しても正常(あるいは正常に近い)の範囲内であり、治療をおこなっても改善しない患者がいた。著者のスザンヌは少女の家を訪れたり、これに似た病気の原因を突き止めようと世界各地へ調査に出かけ、そして結論を導きだす。それは本書を読んでゆけば分かる。脳の働きの複雑さを改めて知った、読み応えのある労作である。
私は普段から〈心の不思議〉に興味を持ち、本書もそのために買って寝床で読んだのだが、読み切るのに1週間かかった。図表や薬名も書かれてないので専門書より読みやすいが、400㌻を越えるので忍耐力も必要。分かりやすい文章なので医療従事者だけでなく、一般の方もぜひ読まれ、心身症に対する誤解をなくすよう願っている。本のタイトルを見て、ペローの昔話を基にして作曲されたチャイコフスキーのバレエ音楽《眠りの森の美女》を思い出した。少女が単数形か複数形かの違いだけである。

紀伊国屋書店刊 '23/5第1刷 2,500円+税 


松江水郷祭へ

2023-08-06 | 風物詩

松江水郷祭 花火大会
8/5・6 晴れ 松江市宍道湖岸

今年も松江夏の名物花火大会が土日の2日間行われ、計2万発が打ち上げられた。松江市役所側の湖岸側は工事中のため、通行のみとなった宍道湖大橋以南の湖岸に観客が集中し、土曜日の人出が日曜日より多かったようだ。昨年から有料観覧席が設けられていて、打ち上げ時間も例年より15分短くなって連続して見られ、45分間の花火に歓声や拍手があがった。打ち上げ用の船台も4つになったのでカメラに入れきれないものの、ワイドで見ることができた。奥出雲観光のバスも来ていて「ホントにご苦労さん」と言いたかった。豪華な花火見物を楽しめたのではないかと思う。
終了後の帰り道の雑踏でお父さんと間違えて私の手を握った子、疲れて歩くのを嫌がる子に、お母さんが「歩かないとお家に帰れないよ!」。猛暑の毎日であるが夜も暑い。もう直ぐお盆、これが終われば秋も近い。
三脚も使わない小型カメラで写した、手ブレ、スローシャッターの写真を載せておく。
























     


CDを聴く 『キャリン・ユマ ● ピアノとオーケストラのための交響的協奏曲』

2023-08-01 | CD

美しくも雄大なルーマニアのクラシック音楽

ルーマニアのモルドヴァ地方出身で、現在イギリスに住んでいるキャリン・ユマ(1965-)の2つの作品集。私も誤解していたが、「モルドヴァ地方」はルーマニアの隣りにあるモルドヴァ(国)のことではなく、ルーマニア東部のモルドヴァ地方のことである。このCDで演奏されている《交響曲第1番「カルパティカ」》の「カルパティカ」は、英語ではカルパティア山脈(Carpathian Mts.)といい、ここで採水された世界最高峰の純度といわれるアクア・カルパティカと名付けられたミネラルウォーターは、上品なガラス瓶に詰められて日本でも売られているという。《ピアノとオーケストラのための交響的協奏曲》とともに、モルドヴァ地方の民謡が数多く用いられているというが、残念ながら私はルーマニアの民謡は知らない。しかし美しい民族的な旋律が流れる2つの作品を聴けば、忘れがたい、心に残る作品であることは間違いない。山々連なる風景を思い出しながら聴ける、ロマンティシズム溢れる名曲といってもよい。ピアノを弾くセルジュ・トゥフティウの実力の程は分からないが、若手のピアニストのようだ。ギルド・レーベル盤で日本語帯が付き、ロマン派的な2つの作品は世界初録音。

東京エムプラス '18/11録音 '20/5発売 2作品(6トラック) 66:28 1,770円 (国内向け輸入盤 通販)
      セルジュ・トゥフティウ(ピアノ)
      クリストファー・ピートリー(指揮)
      BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団(イギリス)