コレステロールが高いと動脈硬化になるのでいけないと言われますが、コレステロールって、分かったようでよく分かりません。何でコレステロールが高くなるのか、どれくらい高いとどういけないのかも、「?」です。でも、いけない、いけないと言われるので不安になります。
前にも書きましたが、会社の健康診断で総コレステロール値が正常域とされる220を少し超えてB判定となり、悪玉コレステロールと言われるLDHも少し基準から外れB判定でした。他は問題はなく、トータルでも問題はないのですが、40を越えると、こうした結果も少し気になってきます。
そんな時に本屋で目にして買ったのが、この本です。著者は医師ではなくジャーナリストですが、綿密な取材で目からウロコでした。ポイントは以下のようなことです。
・コレステロール自体は、細胞膜を構成する重要な成分で、なくてはならない重要な存在。細胞膜はさまざまな物質をやりとりする受容体というたんぱく質があるが、コレステロールが少なくなりすぎると、受容体の機能が低下し、体のさまざまな機能も低下し、またコレステロールが多く存在する神経細胞ではセレトニンの受け渡しがうまくいかず「うつ」になりやすい。
・人間にはコレステロールの量を調節する機能があるが、悪玉と言われるLDL(コレステロールの運び屋)が増えすぎ、血管壁に入り込んで酸化LDLになると、免疫細胞であるマクロファージが取り込みをはじめてそれが血管内にたまっていくと、動脈硬化を引き起こす。
・冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)が死亡原因のトップを占める欧米では、コレステロール値との相関関係が疫学的に確認されており、日本もそれにならい(疫学的に客観性のある調査をしたのではなく、単に真似て)治療が行われているが、寿命の伸びを調整してみた時に日本人の心筋梗塞による死亡は総コレステロールの上昇にもかかわらず減少の一途をたどっている(相関関係が弱い)。
・心筋梗塞の危険因子は、高コレステロール血症のほか、高血圧、喫煙などがあり、日本人は高血圧と喫煙は減少していることに加え、血栓を予防する効果がある魚の摂取量がアメリカに比べると格段に多く、動脈硬化と高い相関がある内臓脂肪型肥満の要因となる脂肪摂取量も少ないためと考えられる。
・220以下とされている総コレステロールの基準値も、実は科学的根拠はなく、いくつかの調査では、もっとも死亡率が低くなる水準として240~260や240~280などのデータもある。いずれにせよ、一律の基準はありえず、相関関係が確認されている欧米でも、喫煙の有無、HDL、血圧、総コレステロール、年齢、性別というリスク因子を掛けあわせたチャートにより危険性を判定している(特に、女性はコレステロールが高くてもリスクは少ない)。
・にもかかわらず、日本では、220以下という基準が一人歩きし、医師や看護師、栄養士などまでも、的確で最新の知見に基づず、一律で薬物治療や食事療法を行うことが多い。しかし、問題のない人に対して、薬物でコレステロールを下げることは危険な場合もあるし、誤った食事療法が体に悪いこともある(戦後日本人の寿命が飛躍的に伸びた要因の一つには動物性タンパク摂取による栄養状態の改善にあることは間違いない。カロリーの過剰摂取は問題だが、動物脂肪を減らすためにリノール酸を多く含む植物脂肪を過剰に摂るのはかえって有害)。
・ポイントは、HDLの低さと中性脂肪の多さ。低HDLや中性脂肪型肥満だと、超悪玉と言われる小型で比重が重いスモールデンスLDLが出来やすく、スモールデンスLDLが動脈硬化を進展させる。これに加え、高血圧、高血糖、喫煙などのリスク因子で判断すべき。
ということで、これまでコレステロールの何が悪いのかは良く分からなかったですが、それは言っている方も分からないで言っているんだということがよく分かりました。220という基準もかなりいい加減なものらしいので、一喜一憂することはやめました。
ただ、サラダ油・マーガリン・ピーナツ・ポテトチップなど動脈硬化のリスクを高めるリノール酸が多い食品の過剰摂取は避けた方がいいということと、逆にEPAやDHAに変わるα‐リノレン酸は動脈硬化のリスクを下げるので、α‐リノレン酸が多いキャベツなど葉野菜や大根など根菜類、EPAやDHAが多い魚類を積極的に摂った方がいいということには、これから気を遣っていきたいと思いました(リノール酸は必須脂肪酸ではあるものの、2000キロカロリー食べる人2.2g必要なだけなのに、日本人は13g摂っているそうですし、普通の食事をしていれば絶対に口に入ってくるそうです)。