山縣亮太選手が出したこの記録は、1ヶ月前だったら、1998年に伊東選手が出した日本記録に並ぶタイ記録だった、ものすごい記録です。
しかし、つい先日、桐生祥秀選手が9秒台を出したばかりなので、視聴率を追いかけるマスコミにはニュースバリューはないのかもしれません。某局のスポーツニュースでは、相撲、プロ野球、マイナースポーツのスラックラインの特集、ゴルフ、パラスポーツの特集の後、最後の最後の今日のスポーツのまとめで簡単に触れただけでした。
この記録のすごさを本当に分かっているのだろうかと思ってしまいます。
プロ野球選手になることは、東京大学に入るより難しい言ってきましたが、それと同じ言い方で言えば、100mを10秒で走るのは、何と言ったらいいのか分からないくらいです。先日、桐生選手が9秒台を出すまで、日本でたった一人しかいなかったのですから。日本で一人か二人しかなし得ないものって、どれくらいすごいことか!特に、陸上競技というのは、単純に自らの肉体のポテンシャルを競う根源的な競技であり、誰もが経験したことのある、もっともポピュラーな競技でもあるのです。比べては申し訳ありませんが、その前に特集されたスラックラインなどのマイナースポーツの比ではありません。
つい二三日前に、ちょうど山縣選手の特集をテレビでやっていました。山縣選手と言えば、桐生選手のライバルとして、どちらが先に9秒台を出すのかと言われていた選手です。それが、サニブラウン、ケンブリッジ飛鳥、多田修平という新勢力の台頭で、桐生選手ともども世界陸上への出場権を逃してしまいました。両選手とも、どれほど悔しかったことでしょうか。それでも、桐生選手は400mリレーで出場しメダルを獲得し、続いて100mで9秒台を出し、その悔しさを雪辱しました。
一方、山縣選手はライバルの中では最年長でもあり、どうなるんだろうと思っていました。正直、厳しいのかなあとも。その山縣選手は、慶應大を卒業後、陸上部のないセイコーに所属していますが、テレビ番組で知ったのは、何と慶應の陸上部の同期生が決まっていた就職先を断り、山縣の個人マネジャーになり、サポートしているということです。いくら親友といっても、なかなか出来ることではありません。まだまだ流動性のない日本の労働市場の中で、就職先を断り、個人マネジャーになるということは、将来の見通しがまったくきかないことだからです。
そんな思いだけで何とかなる世界では、もちろんないのですが、それでも、いくばくかの力になっているのは間違いないと思います。
山縣選手の10秒00を称えるとともに、9秒入りを期待です。そして、時間の問題と思われますが、サニブラウンの9秒入り、ケンブリッジ飛鳥、多田修平の9秒入りも期待したいですね。そして、彼らを見て、次に続く俊才たちの登場が待ち望まれます。少子化の日本の若者も大したものです。