Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

令和4年度 2022 2級建築士設計製図試験 解説

2022-09-26 00:00:00 | 建築士試験

こちらもアップが遅くなってしまいましたが、さる9月11日(日)に2級建築士の設計製図試験がありました。
今年の課題は、「保育所」。
あくまでも一講師としての個人的な解説、解答例であり、試験元、予備校等とはいっさい関係ありませんので、その点ご了承の上お読みください。

まず7月の課題発表時に、木造で保育所ということに驚きました。そして、詳しい設定などが全くないので、どんな保育所が求められるのかもわからず、さまざまな場合を設定して学習する必要がありました。

ひとつには、2015年から認可対象となった「小規模保育所」。今回の課題はこちらだったわけですが、この場合、0〜2歳対象、6〜19人収容という小さな保育所です。練習課題でもやりましたが、1階に保育室がおさまって、2階は大人が利用するスペースになる場合、準耐火仕様とする必要もなく、、避難用バルコニーや屋外階段も必要なくなり、問題としては簡単になります。2階にいる乳幼児の外遊び動線などを考慮しなくてもいいので、楽になりますね。

もうひとつは、0〜5歳を対象とした20人以上収容の普通の保育所。こちらは2階に保育室が来る場合がほとんどとなりますので、準耐火仕様、避難用バルコニー、屋外階段、あるいは避難用滑り台のいずれか1つを設置しなくてはなりませんでした。後半、こちらの課題をたくさん練習していたので、本番では、あら?簡単?と思われたのではないでしょうか?

昨年のRC造の課題が、傾斜地という大きなサプライズがあったので、今年はいったいどんなサプライズが来るのか?とドキドキしていましたが、サプライズがありませんでした。サプライズを探すのに時間を使ってしまった!という声もありましたね。

ただ、隠れサプライズとして、要求延べ床面積の下限値アウトというのがありました。
(1)延面積下限値アウト
今回、駐車スペース2台(うち1台は車椅子利用者用幅3.5m以上)、駐輪スペース6台、スロープ、敷地内通路幅1.5m以上、屋外遊技場、保育室等の採光通風配慮などの条件から、なかなか大きな箱を作りにくい設定で、さらに2階の要求室が少ないため、2階を小さくまとめすぎたり、矩形にこだわって突出させないプランだと下限値アウトになる可能性が高い課題となっていました。こちらに奥行きごとの箱の形と延面積(平方P)のマトリックスを作成してみましたので、参考にされてください。

延面積が足りなくなるというのと、今回の設計条件①の「自然採光及び自然換気を積極的に取り入れる計画」を考慮すると、南のアキ寸法というのはひとつの合否ポイントになるのかな?と感じました。南のアキ寸法が2730未満の方はかなり後手にまわってしまうのではないでしょうか?

(2)東隣地公園の判断
あとは、東に隣接する公園をどう捉えるのか?ということ。こちらも、いままでであれば、〇〇室を公園に向けろ、とか、公園と一体的に使えるようにしろ、とか具体的な指示があったわけですが、何の指示もない。これをどう判断するべきなのか?
何人かは公園との間に出入り口の門扉を作っていましたが、果たして、出題者が出入りできるようにしていいと言っていないのに勝手に隣地に出入りしていいのか?ちょっと心配な感じもします。
某T予備校は公園に保育室を向けて、全室東向きの南北に長い矩形プランをアップしていましたが、何の要求も明記されていない公園と、設計条件①とを天秤にかければ、保育室は南面させるべきでしょう。
ただ、要求立面が東立面図だったので、東面に窓が極端に少ない計画(東面が倉庫など)は後手に回る可能性がありますね。

(3)東立面図
今回2階のボリュームがそれほど大きくないことから、2方下屋や、大きな下屋になる計画が多かったと思います。東立面図を描いた時に、下屋の書き忘れや、平面図や伏図との屋根形状の不整合などは一発失格要素ですので、気をつけましょう。よく確認せずに南立面図を描いた方は一発アウトなのはいわずもがなですね。

簡単という第一印象ではありましたが、実際には1階の要求が多く、箱が大きく取りずらいことから、1階内部の計画は必ずしも簡単とは言い難かったと思います。1階がキチキチで納めるのに苦労した、という声もたくさん聞きました。読み落としによる一発アウトポイントとしては

(4)男女別の便所と更衣室
男女別に2つずつ計画できていない場合はランク3となりそうです。

(5)床高
今回、床高さの設定も、みなさん自身による設定となりました。設計条件②「安全、防犯に配慮する」をどう捉えるのか?「防犯」は、フェンスと門扉などで侵入者を防ぐ、で良いと思いますが、「安全」をどう考えるのか?それと北側の敷地利用条件から、長いスロープが取りにくい、などで、床高をどう考えるのか?これもひとつのポイントでしょう。階段の蹴上指定が180なのに、玄関土間からホールまでの段差が、乳幼児も利用するのに180以上あったり、保育室と屋外遊戯場の段差が500あったりしたら、それは「安全」なのか?
対応はいろいろなパターンが考えられますが、私は、ポーチおよび土間を+100、床高を+350と設定して、式台を設け、屋外遊戯場も+350で設計してみました。ただその場合、土台上にサッシを設けられなくなるので、矩計で「土台、基礎パッキン、アンカーボルト」の要求をどう表現するのか、ちょっと苦労してしまいました。なので、床高を500でなく350とか150とかに設定した方は矩計をどこできるのかもポイントですね。「どちらかの開口を含む」なので、1階はあえて開口で切らずに、土台やアンカーがかける壁で切るというのもアリですね!(私は印象重視で開口で切って苦労しましたw)

(6)階段
床高に関係して、階段の蹴上指定から、段数が足りないものはランク3の可能性がありそうです。
床高500、階高3000の方は17段以上、
床高350、階高3150の方は18段以上、
床高150、階高3350の方は19段以上、必要となりますので、そのへんの計算ができて図面表現ができたかどうか?

 

ほとんどの方が密度高く書き上げることができているので、上記重要なポイントに抵触していない場合は、図面精度と密度の勝負になりそうです。そうなると文字の読みやすさも重要になりそうです。相対試験なので、あとは12月の発表まで、ドキドキしながら待つしかありませんね。
お疲れ様でした。

参考までに私の作成したエスキスと作図例をアップしておきます。
上記マトリックスから、南アキが取れていて、1階の床面積が一番大きく取れそうな奥行き9P北突出で作成しています。(1階の面積が小さいと1階の計画が難しくなるので)

エスキス:ピンク:利用者ゾーン、ブルー:管理ゾーン、黄色:廊下(動線)、赤:階段
Twitterで話題になっていた、手洗いの面積は要求面積に入れていいのかまずいのか問題は、私は手洗いを除いても面積が確保できるようにしてあります。ただ、これは面積内に入れている人がほとんどなので、合否に大きな影響はないのではないかと考えます。(あくまで個人的感想です)

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