Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

H30年度 2級建築士設計製図試験

2018-09-11 14:33:46 | 建築士試験


H30年度 2級建築士設計製図試験が9月9日日曜日に終了いたしました。

受験されたみなさま、お疲れ様でした。

今年の課題は、

「地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅(鉄筋コンクリート造ラーメン構造3階建)」

敷地は南と西の二方向道路の角地、南道路が幅員9m、西道路が6mでした。
南道路に面して間口11m、西道路に面して奥行き20mの細長い敷地でしたが、要求されている立面図が南立面だということ、南道路の方が幅員が広いことなどから、住宅用の駐車スペースは北西角になり、交差点に面してカフェ部分を配置するゾーニングが正解でしょう。
学院の受講生さんでは、南東に住宅用駐車スペースを持ってきた方はほとんどいなかったと思いますが、南東角に持ってきた場合は、かなりダメージがあるのではないでしょうか?

設計条件は

1)カフェ部分には地域住民が利用できる交流スペースを計画する。
(交流スペースがない場合一発アウト、面積が15㎡に満たない場合大きな減点となるでしょう。また、交流スペースを可動間仕切りで区切って利用している際に、カフェに出入りできない、トイレに行けない、厨房からサービスできない、などの動線計画のまずいものも大きな減点になるでしょう。)

2)カフェ部分と住宅部分は、出入り口を明確に分離し、屋内の1階部分で直接行き来できるように計画する。また、住宅部分の玄関は、二世帯で共有するものとする。
(カフェ部分と住宅部分の外部動線が交錯しているようだと、大きな減点となるでしょう。また、勝手にコア型に設計して2階や3階に各世帯用の玄関を設計したりすると、一発アウトでしょう。1階で住宅とカフェが行き来できるように扉でつながっていない場合、これも一発アウトでしょう。)

3)2世帯がそれぞれ独立して生活できるようにするとともに、互いの家族が気軽に行き来できるように計画する。
(この条件が一番難しかったですね。後半の条件で、竪穴部分を区画し、防火設備を設けろとあるのですが、階段に常時閉鎖型防火戸をつけてしまうと、互いの家族が気軽に行き来できないのではないか?と考え、リビングにもうひとつ階段を設けた方がわりといらっしゃいました。3層をつなぐ階段が区画されていれば、2階と3階をつなぐ階段は区画する必要はないので、それはそれで正解だと思います。ただ、階段の梁またぎは一発アウトですので、リビング階段はよく気をつけましょう。
また、住宅部分を200㎡におさえて、常時閉鎖型防火戸を設けなかった方もかなりの数いらっしゃいました。私も最初そうしようと思ったのですが、法規の先生と相談した結果、今回の課題では、200㎡以下の緩和措置を使わずに、区画せよという課題だから、と言われてしまったので、私の案では、エレベーターと2階のリビングを近接させて、気軽に行き来できる計画としました。)

4)地域住民が交流できるカフェを持つ建築物として、外観及び外構計画に配慮する。
(これも難しい条件ですね。近年外構計画での減点が大きいのですが、今度は、設計条件を守れというのではなく、自分で考えて設計しなさいという自由裁量での設計です。この点が、南住宅駐車スペースが厳しくなる原因です。南道路に面した交差点を、地域住民の交流のためのスペース、屋外テラスなどとして開放するのが、正解ではないでしょうか?)

その他、課題の特色としては、親世帯の高齢化に配慮して、2階のLDKと3階の要求室の出入り口はすべて引き戸とし、廊下の幅は車椅子の利用を想定してゆとりある計画にせよ、ということですので、廊下幅心心1000は厳しいです。心心1500以上必要でしょう。

1階から3階に通じる直通階段というのは、途中に扉や廊下をはさまずに1階へ行ける階段の事です。直線階段ではないので、普通の折り返しの階段で大丈夫です。
エレベーターは扉に防火戸表示をすれば、竪穴区画は大丈夫です。階段は、2〜3階の階段室は室内から階段室側へ開く開き戸、1階は階段室からホールに向けて開く開き戸をつけ、防火戸表示をします。(丸防でよい)

駐車スペース及び駐輪スペースはピロティとしてはならないとありますが、ポーチやスロープはピロティでも問題ないでしょう。

竪穴のサプライズとともにもうひとつ、延焼のおそれのある部分に破線を表示をして、敷地境界線からの距離を明示し、かかる部分の開口を防火設備とせよ、というサプライズがありました。日頃設計をしている方、法規をしっかり勉強された方は大丈夫でしたが、多くの方が、防火設備ってなんだろう?スプリンクラー???と困惑されたようです。防火設備というのは、防火認定されたサッシのことなので、該当するエリアの窓のところに丸防と書いておけばいいだけだったのですが。
学校ではこの練習をしていなかったので、できた方は3割くらいかもしれません。減点はありますが、おおきな減点ではないでしょう。ただ、今後、確認申請用の図面並みの表記が要求される傾向にあるということかもしれません。今後、斜線や、採光、シックハウスなどに関しても記入が要求されるかもしれませんね。
竪穴については、200㎡の緩和措置の話、オーバーした場合の扉のつけ方と開ける方向の話は最終回にさらっとしたので、記憶にあったという方も数名いらっしゃいましたが、それがあだとなって200㎡以内なら不要だろうと判断してしまった方、申し訳ないです。もっとちゃんと、課題で練習するべきでした。また、延焼ラインと防火設備に関しても、学科の知識が製図でも試されていますね。しかしこれもちゃんと課題で練習するべきでした。次回は同じのが来るとは限らないので、今までスルーしてきた法規的な部分の強化が必要だな、と痛感しました。ごめんなさい。

法規的な部分といえば、縦型の住宅部分のプランは、道路側(今回は西側)と南側に居室をもってきて、水回りなどは北側、隣地側(今回は東側)がセオリーですが、2階の子供室や子夫婦室が、東側にしか開口がなく、東側の空きが1mしかない方が数名いらっしゃったので、あああ〜と思ったのですが、今回近隣商業地域でしたので、採光補正係数を計算したら、1以上あったので、セーフでした。住居系地域の場合は無窓扱いになってしまうので、今後は気をつけましょう。

3階にルーフテラスの要求がありました。学院では何度も練習していたので、柱梁なしタイプ、ありタイプ、どちらも正確に立面、断面を描くことができたと思います。屋上スラブを描いてしまった方は大減点ですが、そのようなミスはほとんどいなかったと思います。ただ、もし、ラーメンが成立しないようなテラスや外壁を作ってしまった方は、一発アウトの可能性が高いですね。

断面図の切断要求が、南北方向とし、喫茶スペースの外壁の開口部を含み、2階、3階を含む部分、でした。
短手(東西方向)に切ってしまった方は一発アウトの可能性が高いです。また、いないとは思いますが、喫茶スペースの南側に倉庫や便所などがきていて、北側が住宅で、窓や出入り口で切っていない方も大減点でしょう。また、3階のルーフテラスで切ってしまって、3階の建物がまったく出てこない断面図も一発アウトでしょう。断面図の切断位置はよく確認するように、と何度もいっていたので、受講生さんたちは大丈夫でしょう。

今年はじめて出た部分詳細図は、3階屋根部分でした。計画の要点で、環境負荷低減について書かされたので、屋上緑化をあげ、部分詳細で屋上緑化にチャレンジした方が数名いらっしゃいました。屋上緑化の部分詳細は難しいのですが、間違っていても、大きな減点はないでしょう。梁や壁、スラブがきちんとかかれていて、仕上げがきちんとかかれていれば、減点はないでしょう。

計画の要点が難しかったですね。1級並みになってきました。例を記入しますので参考になさってください。(画像があらくて読めなかったのでこちらに書きますね。)
1)カフェ部分について
カフェ部分は、地域住民が交流の場として気軽に立ち寄れるように、南及び西側道路に面して喫茶スペースを配置した。
2)地域住民が交流できるカフェの外観及び外構計画
カフェ部分は、地域住民が交流の場として中の様子がわかりやすいように、南側8m、西側7mの大きな開口をもつ外観とし、交差点に面して住民が交流できる屋外テラスを設ける外構計画とした。
3)環境負荷低減について
建築物の環境負荷低減を考慮し、サッシはすべてLow-Eペアガラスを採用し、屋根、外壁、床下には断熱材を施工する。また、南と西の居室窓には1mの庇を設け、夏期の日射を防ぐ計画とした。