Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

2020 2級建築士 設計製図試験

2020-09-16 17:13:30 | 建築士試験

さる9月13日日曜日に2020年度2級建築士設計製図試験が行われました。
受験されたみなさま、お疲れ様でした。

2020の課題「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい(木造2階建)」

道路は南西2方向道路
交差点7mの範囲は駐車スペース及びその出入口禁止
さらに南道路沿い2mは建築協定で外壁セットバック

設計条件 
1)シェアハウス部分の各要求室の配置計画に当たっては、入居者同士の交流や入居者のプライバシーに配慮
2)シェアハウス部分のLDK(B)は、高齢者夫婦が居住する住宅部分から屋内で行き来
3)シェアハウス部分のLDK(B)に隣接した位置に屋外テラスを設け、直接行き来

計画の要点は
1)シェアハウス部分の各要求室の配置計画に当たって、入居者同士の交流や入居者のプライバシーの配慮について工夫した点
2)LDK(B)の配置及び室内計画について工夫した点
3)外構計画について工夫した点

今回「高齢者夫婦の住まい」ということで、バリアフリー必須だろうと思っていたのですが、ふたを開けて見たら、ご夫婦は60代後半で、便所の広さが1820×1820、出入口は引戸、駐車場は「高齢者夫婦の乗降に配慮し、幅3500以上」、という条件のみで、車椅子対応などは明記されていませんでした。
スロープの要求があるものの「敷地内の通路の計画において高低差が生じる場合は、スロープを設ける」というもので、ポーチの高さの指定がないので、自分でレベル設計、勾配設計をする形でした。
小さな部屋に関して、室の形状指定(1820×1820)があるものの、大きな部屋や屋外テラスの大きさやレベルも全て自分で設定する形で、自由度が上がる分、力量が問われる形となりました。

スロープについては、敷地内の段差、ということは、シェア部分のポーチの段差にもスロープが必要なのですが、住宅にしかスロープをつけなかったという方も少しいらっしゃいます。
シェアは階段の登れる元気な人たちが暮らすのだから、スロープがなくても大丈夫だろうという常識的判断によるのか、日本語の読み取り不足だ、と言って減点するのか、そこはわかりませんが、それほど大きな減点にはならないでしょう。

様々な対応が考えられますね。
1)バリアフリーを意識して、住宅側はポーチレベルを+500に設定し、勾配1/12などでロングスロープを計画する。
2)ポーチを+350に設定してセミロングスロープにして、玄関で150ミリの段差を、移乗台や手すりで処理する。
3)ポーチを+150に設定してショートスロープにして、玄関に式台を設け、移乗台や手すりで処理する。
ショートスロープなのに式台がない、などは減点になるかもしれませんが、上記3パターンはどれでも大丈夫な気がします。シェアに関してはポーチ+150で全く問題ないと思います。(ただし式台は必要。式台が1820×1820に出っ張ってはダメ)

大きなサプライズはなかったものの、2階のシェアハウス個室全てにバルコニーをつけるという部分で、南側に突出の下屋を計画した人は、苦労したようです。
断面図がなくなったので、立体的な構成を考えさせる課題になろだろうという予想はしていたのですが、こういう形で出るとは予想外でした。
多かったミスは、バルコニーが下屋の上に載ってしまったために、2階の床高さよりもバルコニーの床が上がってしまう、腰窓バルコニーが出現してしまった点。腰窓バルコニーでもバルコニーにはかわりない、という解釈であれば大きな失点はないかもしれませんが、そこで悩んで立面図に時間を取られてしまった結果、図面の完成度が低くなってしまった方もいらっしゃるようです。

また、設計条件の2)に関しても解釈が分かれていて、LDK(B)から直接住居部分に行き来できないと減点ではないか、という見方と、いったん廊下に出たとしても、屋内で行き来できるのだし、「直接」と書いていないのでいいのではないか?という意見。私は、廊下を介していいのなら、LDK(B)だけでなく、2階へも屋内からいけるわけで、それは日本語の解釈としてどうなのだろう?と思ってしまうのですが、、、、TACの日曜に出していた解答例ではシェアの廊下で行き来になっていましたし、SGの方でも、直接でなくても減点しない方針のようです。ただ、多くの方はLDK(A)とLDK(B)を隣接させてそこで行き来させているので、やはり廊下を介する場合は後手にまわってしまうのではないかと思います。

あと、小さなところでは、シェアの土間の形状指定があり、1820×1820以上なのですが、この部分に下足入れを書いてしまうと、土間部分が1365×1820になってしまうので、減点されるでしょう。

外壁の指定が矩計図の一番下のコの欄にあるのを見落とした方も数名いらっしゃいます。これは小さな減点かな、と思います。

南側道路に沿って15㎡以上の緑化スペースの要求がありました。これについて最初に読んだ時に、南道路側2m非建ぺい地で、南道路に沿って緑化ということは、道路に沿って東西に長い形で緑化スペースをとるべきなのだろうな、と感じたのですが、南に駐車スペースを置くと、アプローチもあるので、なかなかこれが難しくなり、結果間口のせまい奥行きの深い緑化スペースになってしまいます。多くの方がそのような緑化スペースを計画されたのではないでしょうか?

以下に私の解答例南駐車場バージョンと西駐車場バージョンを掲載します。
西はちょっと難しいのですが、ピロティなどをうまく使うと、南道路に沿って長く緑地にできるので、こちらがいいのかな、という気もしています。
ただ、注意点は夫婦寝室が南面せず東面にしか窓がないので、LDK(A)と2室一室採光にしないと無窓居室になってしまう点です。隣地空き1820取れていれば東側開口のみでもいけるのですが。
南駐車場のほうは、矩計を妻側で切っているので、2階の屋根を寄棟にしています。この対処法は講義でやっていたので、バルコニーを描くのを避けて、活用された方も数名いらっしゃいました。
バルコニーの矩計例も掲示していたので、バルコニーの矩計を書かれた方もわりといらっしゃいました。(今回私はどちらの解答例でも避けていますが)

合格発表は12月ですので、ずいぶん先ですが、みなさん、合格されているといいですね!

追記:一瞬、屋外テラスにもスロープ必要なのかな?と思って焦りましたが、よく読むと
「敷地内の『通路の』計画において高低差が生じる場合は、」なので、テラスにはスロープ不要ですね!あー焦った。笑
一応南駐車場バージョンでは、ポーチとテラスをつなげています。