令和3年度(2021)2級建築士 設計製図試験
「歯科診療所併用住宅(鉄筋コンクリート造)」
要求図書
- 1階平面図兼配置図[縮尺1/100]
- 各階平面図[縮尺1/100]
※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定します。
- 立面図[縮尺1/100]
- 断面図[縮尺1/100]
- 部分詳細図(断面)[縮尺1/20]
- 面積表
- 計画の要点等
(注1)答案用紙には、1目盛が5ミリメートル(部分詳細図(断面)については10ミリメートル)の方眼が与えられている。
(注2)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画 等)とする。
注意事項
試験問題を十分に読んだうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図書に対する重大な不適合」と判断されます。
9月12日日曜日に令和3年度(2021年度)2級建築士設計製図試験が行われました。
今年のびっくり玉は、なんといっても「傾斜地」ですよね。あとは「バルコニーの出入口部分の部分詳細図」、こちらもちょっと面食らったかもしれません。受講生さんのお話を聞いていても、エスキスは1時間くらいですぐ終わったのに、断面図と部分詳細で時間をとられ、十分な描き込みやチェックができなかったという声を聞きました。それでも、ご自分の知識を総動員して、なんとか描き上げて戻ってきてくださったみなさんには、頑張ったね!!と褒め称えたい気分です。
他校のユーチューブ動画を見ても、みなさん苦労されただけに怒りが爆発しているようですが、ちょっと日にちを置いた今、冷静に振り返ってみていただきたいと思います。
まず、傾斜地に対する対応ですが、多くの方が、傾斜地=床高をあげなくちゃ=直前講習3の課題、「床高指定があった場合は階高とロングスロープで対応」を思い出されたのだと思います。この講義をやった時に、「2階建はこれでいいけれど、3階建の場合は2級建築士の設計資格である軒高9mを超えてしまうから、3階建では注意」とさらっと解説していたのですが、十分にみなさんに伝わっていなかったと思い、反省しています。中には「3階建で床高指定があった場合はどう対応したらいいのか?」「過去そのような指定があったことがあるのか?」というご質問をされた方もいらして、その方達とは、「過去木造2階建で出題があり、南の庭がスロープだらけになってしまった」「天井高指定が高い場合は吹き抜けで処理するが、RC3階建の場合竪穴がかかってくるの難しい。そのような出題はないのではないか?」というような話をしていました。もう少し具体的に、「その場合は階高を調整しておさめよう」と指導できていればよかったのですが、できなかったことを反省します。ただ、優秀なみなさんは限られた時間の中で、試行錯誤しながらも階高を調整して9mにおさめていらしたので、さすがだな、と感心しました。
若干名の方が、最高高さの10mは気にしていたけれど、軒高9mは盲点だった、と9.5mにしてしまっている方がいらして、その方々はちょっと厳しいのかな、と思っています。
実は、傾斜地ですが、ロングスロープは必要なく、ただ、いつもの建物を地中に埋めればよかったのです。これについて、試験当日は怒りが爆発していたようですが、冷静になって、考えていただければ、まず建物に基礎が必要で、基礎には根入れが必要と考えれば、「絶対に切土をしてはいけない」という設定はありえないわけです。つまり出題者が言いたかったのは、土地全体を±0に、あるいは+250とか+500に、整地してはいけないよ、ということなのです。「日本語の問題なのか?」という怒りもありましたが、まさに、建築士の試験は、日本語の読み取りの問題です。
また、地中に壁を埋めるというのはRCならでは、なんですよね。木造では壁を地中に埋めることはできないので、高基礎にしないとなりません。そういう意味で、出題者にRCの特性をわかっていますか?と聞かれている気がしました。
ということは、試験元の指示は「建物の建っている部分はいつも通り±0を基準とし、奥まったところにある住宅の玄関は傾斜を生かして考え、内部でその段差を解消せよ」と読み取ることができます。
中には、住宅の玄関コア部分も南にしろという意味か?と考えた方もいらっしゃいますが、それは2階3階の設計が難しくなりますので、考えにくいのではないでしょうか?
そして、西立面を描いてみましたので、それをご確認いただければわかると思いますが、ロングスロープで床を上げることは、切土を少なくするように見えて実は盛土をしているのです。なのでスロープ無しの方が土を移動する部分が少なくなるのです。
中には床を上げて基礎はそのままで深基礎になっている方もいらして、それは切土も盛土もしていて大造成していることに、気づいていなかったりしますよね。
次のポイントは「バルコニーの出入り口と手すりを描け」という部分詳細です。
これも、「2階のバルコニーはルーフバルコニーにしておかないと立面断面がやっかいだ!」と教えていたので、ほとんどの方がルーフバルコニーにしていたため、はた、と困ってしまったわけです。最後にやったチャレンジ課題の部分詳細図の解答例が片持ちバルコニーだったため、ご自分の計画がフレームレスのルーフバルコニーなのに片持ちバルコニーを描いてしまった方がかなりいらっしゃいます。中には、「部分詳細は断面図の拡大版」という私の言葉を思い出して、頑張って大梁2つのフレームレスバルコニーの詳細を描いてくれた方もいらっしゃいました。すばらしい!がんばったけど、どこまで内部なのかわからなくなってしまった方も、、、。惜しい!ただこれは、初出題だし、正確に描けた方が少なかったのではないかと思うので、そんなに減点が大きくないといいな、と願っています。
これも実は、今回、駐車場等から建築可能な床面積がマックス8x14=112㎡に対して、延床が最大300なので、2階はルーフにしないでそのまま112にして、3階で調整し、2階のバルコニーは片持ちにする、というのが正解な気がします。そのようにできている方も、少しですが、いらっしゃいました。
私も試験当日問題を見た時に、「ルーバルの部分詳細は難しいから、東に(あるいは西に)もうひとつ片持ちのバルコニーをつけたらどうなの?」と姑息な対応策を思いついていたのですが、各校の解答例がそうなっているのを見て、でもみんなは、緊張と焦りの中、そんな姑息なことおもいつかないよなーと思い直しました。
その他のポイントとしては、
竪穴区画がきちんとできていて、マル防を描けたか、
延焼ラインの距離を間違えずに(特に道路は今回幅員10mなので道路側はかかってきません)を描けて、丸防を描けたか、
エレベーター、階段が梁またぎなく計画できているか、
断面図は「診療室」を含む部分で切断されているか(診療所ならどこでもいいのではなく、「診療室」で切る必要があります)(診療室がコアと同じ側にあると、階段やEVを切るハメになり、EVのところで切っているのにスラブを描いてしまうとアウトです。竪穴区画の階段室のホール部分ならスラブがあっても大丈夫です)
細かいところでは、1階の平面図にも部分詳細の切断線を描けという指示があったのですが、これに気づけている方も少なかったですね。
やはり、製図の試験はいかに課題文を隅から隅まで読んでいるか、
出題者が何をやらせたいのか、正確に把握できるか、
が勝負を決めるのだと思います。
総合資格学院の解説はこちらをご覧ください。
https://www.shikaku.co.jp/campaign/2k_seizu_sv.php?mid=main
今回は、描いた方が多かったルーバルの場合の部分詳細を描くためのAプラン(スロープなし)と、みなさんがやってしまった、ロングスロープの場合の対処法を描いたBプランの2つを作図してみましたので、ご参考までに。それぞれの西立面図も添えておきますね。