Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

テーマはいったいなんだったのか?

2009-10-28 17:22:24 | 本と雑誌
食堂かたつむり 食堂かたつむり
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2008-01

図書館のベストリーダーかなんかになっていたので、リクエストしてみました。
1日で読み終わるけれど、それは、先が気になってどんどん、、、というわけではなく、、、。
最初は「かもめ食堂」のような話?と思ったのですが、後半はお母さんのガンと、祖母-母ー娘の確執とその融解の話なのか。
それとも大事に育てたエルメスについて、「命をいただきます」というような、食育のような話が書きたかったのか。。。
結局何が書きたかったのかよくわからなくなってくる。いろいろ詰め込み過ぎかな?そのわりには淡々としすぎというか、深い描き込みがなく。。。
アマゾンの書評でもさんざんのようですが、その中に「中高生向き」とあったけれど、それにしてはなんだかグロイ話も出てくるしなあ。
あまりおすすめできる本ではありません。なんで人気なのかな?


SUMIKA Project見学会4-SUMIKAパビリオン-

2009-10-26 17:14:41 | 建築

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伊東豊男氏設計「SUMIKA パビリオン」
東京ガスの敷地内に建設されたSUMIKA Projectの中心施設。
背後の樹木はヤマザクラで、サイトを初めて訪れた時に、桜の樹の下での宴会、をコンセプトにしたということ。
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↑9m×9mの正方形平面(SUMIKA Projectパンフレットより)
120度を基調とした複雑な集成材の構成と、4本の柱でなりたつ。
この幾何学模様は、ボロノイ分割とかいうモノを使っているらしい。数学の苦手な私にはさっぱり???だが、大雑把に要約すると、自然界には90度はない。自然界は120度で構成されている。ということで桜の木陰を表現するために、120度を基調として自然界を習った形を追求した結果の形、らしい。
それにしては完成した姿はとても幾何学的で人工的でアーティスティックである。
平面も正方形だし。ネオモダニズムを標榜する伊東氏の作品ではあるが、モダニズム好きな(時代遅れの?)私の感性に、一番ここちよかった。
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この120度基調のデザインは、エントランスの敷石にまで徹底。
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室内の4本の柱の上には木漏れ日を落すトップライトが配され、樹の根元は収束してスリムな美しい形に。
柱及び外皮を構成する集成材の中には孔があけられ、鉄筋が通してある。そのため無骨な金物が外に現れず中にしまわれている。またその結果木造ラーメン構造になっているらしい。
伊東氏の設計はいつも素晴らしい構造家の方とのコラボにより、斬新で美しい構造物を作っている。今回の木造もとても綺麗。
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中心の大テーブル(15人掛け)と大きなアイランドキッチン。ガスで調理されたおいしいお料理が、、、いただけなくてちょっと残念。
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大テーブルの下にはガスヒートポンプ空調機(室内機)が隠れている。通常は天井に設置されるもの。そしてそこからダクトで外壁面ぞいにつくられた吹出し口へ。
ガス床暖房もあるらしいが、この日はそれほど寒くもなく、稼働はしていなかった。
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大テーブル上のペンダントと、玄関脇のフロアライト。どちらも「MAYUHANA」という伊東氏デザインの照明。
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不思議なくぼみのあるベンチも伊東氏デザインかな?
右はアイランドキッチンの2つのコンロと巨大換気フード。
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池越しにパビリオンを見る。左がヤマザクラ。
最期のアンケートで4つの建物のうちどれが一番よかったですか?という質問があった。私はやっぱりパビリオンかな。一番気持ちがよかったし、デザイン的にも好ましい。コールハウスの九の間で宴会したいな、楽しそうだな、と言う気持ちもあったけれど、やはりあのデザインは私的にはちょっと受け入れがたいので。


SUMIKA Project見学会3-コールハウス-

2009-10-26 16:23:05 | 建築

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藤森照信氏設計「コールハウス」
見た瞬間の印象は、「宮崎駿アニメから飛び出してきた建築!」
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↑平面図(SUMIKA Projectパンフレットより)
西沢氏と藤本氏の作品が脳内イメージの具現化だとすると、藤森氏の作品は真逆の自然志向、具体主義。「洞窟」というコンセプトからして、あまりにわかりやすい。
そして徹底した素材主義。
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外壁は焼き杉。(しかし全面半分だけで、後ろ半分は黒く塗装した板だった。予算の都合?)中心となる主室全面の開口が洞窟の入口のイメージ。
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1階の主室。3間×3間の九の間。古来、人が集いくつろぐのに最適とされる寸法の室。5,460mm四方の約30㎡、18帖なので、かなり広いのかな、と思ったけれど、20人が入るとちょうどいい。まあ、普通の住宅で20人は集まらないので、広いのかもしれないけれど、それほど広いと感じなかった。それは天井が斜めになっているからかもしれない。中央にテーブルが置かれ、正面には暖炉。茶の間、といった感じ。
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洞窟らしさ、のためか、天井だけではなく、床も45度に角が立ち上がって、部屋を丸めている。壁は藁をまぜた漆喰による手荒し仕上。施主である東京ガスの社員の方と学生と、素人手作業で作るのが藤森流。ガス暖炉も。
二股に分かれたアカマツの柱は藤森氏の実家の森から伐採して太鼓落しに仕上げたもの。暖炉とともに主室のシンボル的な存在である。
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主室の奥には子供室へ続くハシゴと、寝室へ続く階段があり、子供室へのハシゴは大人が登るとスネを打つように、登りにくく設計されている。(が、子どもサイズの私の身長では難なく登れてしまったが!)
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左が子供室。右が寝室。寝室のベッドボードは主室の天井の勾配なりに斜めになっている。寝相が悪いと落ちてしまいそうなベッドはちょっと不安。子供室は幅1間のうなぎの寝床のような室だけれど、こっちの方が居心地よさそう。
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寝室の小さな扉を開けるとそこは茶室「源」。といっても炉があるだけで水屋すらない3帖敷きの簡素な茶室。

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お客は外のはしごを登って、秘密の入口のような床に空いた開口から訪れる仕組み。
お迎えのため、豪華な金箔張り?!
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左の写真が、茶室へのハシゴを登っているところ。飛び出した茶室、はしご、屋根を貫通する木の枝がなんとも宮崎アニメっぽい。
茶室の床を見上げると、炉に使っている壺が見える。これ、実は宇都宮の餃子店「青源」の味噌壺。「青源」の源の字が見える。茶室の名前「源」はここからとったとか。
今回以前にSUMIKA Projectを訪れた先輩が「藤森さんのが一番いいかなあ。住めそう。」と言っていたけれど、たしかに、一番普通の住宅に近いかもしれない。それでも、トイレの建具が異様に小さかったり、いろいろ支障はありそうだけれど。


SUMIKA Project見学会2-House before house-

2009-10-26 15:48:35 | 建築

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藤本壮介氏設計「House before house」
西沢氏設計の住宅に隣接して建っていて、さらにその隣には古い見事なお庭のお屋敷がある。
道路側から見ると、一段地盤面があがっていて、法面には大谷石が貼ってある。
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↑平面図(東京ガスSUMIKA Projectパンフレットより)
平面的にも立面的にもランダムに積まれた白いキューブによる個室群住居。
白いキューブはアングルと鉄板で構成されていて、屋根勾配はナシ。その上に13種類の樹木が植栽されている。
最初パンフレットなどで写真を見た時に、一番面白そうだと思った。だが、これも住宅としてはあまりにコンセプチュアルすぎて、具体性に欠けるのではないか、との感想を持った。
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 面白いのは確かに面白い。けれどこれは住宅なのか?遊具ではないのか?
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とにかくパーツが小さい。写真右の、書斎から寝室へ降りるハシゴの開口の狭さ!途中でお尻がつっかえた!!メタボ予防にはよいかもしれないが。。。
キッチンの天井も2000ないのではないか?というボリュームの小ささ。
藤本壮介さんはご自分が背が高いのに、こういう設計をするんだなあ、と変なところに感心してしまった。
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さまざまな角度で積まれた真っ白なボックスと、紅葉が綺麗な植栽。
写真右はジュウガツザクラで、ちょうど花がちらほらと咲いていた。
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とてもピクチャレスクな作品で、写真を撮るのが楽しくなるのだが、、、。
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植栽の下はかすかにヒビが入っている45度の斜線ぞいに土が斜めに入っていて、右側面の壁に突き出した四角い突起が雨水を流す樋?になっている。
しかし、そのせいだかなんだか、キッチンの入口の壁はまだ建って何年もしていないのに激しく腐食していた。
最初写真を見た時に西沢立衛氏設計の森山邸を思い出した。それをさらにカゲキにしたものかなあ、と。
しかし爆問学問で森山邸を見た時には、もっとスケールが大きいせいか、もっと居心地がよい印象を受けた。森山邸も実際に行ったわけではないので、行ったら違うのかもしれないけれど。。。
それに対して、House before houseの印象は、「遊具でしょう?」
この建築を一番喜びそうな小学生の子どもに写真を見せるとひと言。
「イヤだ。丸見えじゃん!!」
お隣の豪邸の見事な塀と植栽との対比がなんともシュールだった。


SUMIKA Project見学会1-宇都宮のハウス-

2009-10-26 15:13:27 | 建築

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西沢大良氏設計「宇都宮のハウス」
厚さ800の白い屋根が特徴的。
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室内は完全なワンルーム。左が玄関から奥をみたところ。右は奥から玄関を見たところ。黒い壁は全て開口。黒く細い円柱は実は鋼管杭。
この家には基礎も床も柱も壁も窓もない。雲のような屋根だけがあるイメージで作られている。
屋根は長方形だが、黒い建具は微妙な曲線を描いている。
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平面図(東京ガスパンフレットより)
3つの床仕上(コンクリート、フローリング、芝)は敷地全体を覆っているが、建具はピーナッツのような形をしているのが、平面図をみるとよくわかる。建具の納まり、大変だったろうなあ、と思うが、いったいなぜ、この形なのか?「雲の下」のコンセプトから、雲の形、なのか?ではなぜ屋根は長方形なのか?
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肝心の屋根を見てみよう。大梁が斜めに走っている。この角度は宇都宮の夏の風向きに合わせてあるらしい。この形を決めるためにいくつもの模型を作製し、風洞実験までしたとか!その上に直交方向に垂木?(上梁)が走っている。大梁の下には野縁がまわり、プリプロピレンのルーバーが天井仕上になっていて、室内空気も外部空気もこの天井で処理される仕組み。

ちょうど隣地に建つ藤本氏設計のハウスから屋根が見おろせるのだが、部分的に透明な屋根と半透明の屋根になっていて、透明なところはトップライトになり、一日の太陽の動きに合わせて室内に光りが降り注ぐ仕組み。朝はベッドの上、昼はキッチンの上、、、と。
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軒天には換気のための開口が空けてあり、ゲストルームの壁につけられたオーニングで開閉する。

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外から屋根を見上げると、ものすごいコンセプトと実験、モックアップの製作、、、と凝りに凝ってつくられた結果の実物は、なんだかとてもラフな納まりでびっくり。
写真ではよく見えないかもしれないが、断熱材が隙間から見える。吸湿しちゃわないのか?と心配になる。
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開口を空けたところ。
新建築別冊「SUMIKA Project」で伊東豊男氏が「わざわざ屋根の中に風を通さなくてもいいんじゃないの?建具を開けば、部屋の中を自由に風が通るわけだから」と言っていましたが、どうして屋根の中の風にそんなにこだわっちゃったのかなあ、というのは私も同じように感じた。
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3つの床仕上の一つの芝、、、のはずが、芝が日照不足のため枯れてしまったとかで、リュウノヒゲになっていた。置き石があって、そこを通らないと洗面、トイレ、風呂という水回りへ行けない。屋根と壁に囲まれているので、一旦外へでないと行けない、、、というちょっと前?に流行った?動線よりはマシだが、どうして室内に植物の床を持ち込まないとならなかったのか?それもなんだかよくわからない。
「新建築」で西沢氏が「光は本来、上から垂直に降り注がなくてはいけないし、とくに住宅のような施設ではそうです。上から光を毎日浴びていれば、人間の身体は基本的に支障なく活動するようになります。」と言っていて、健康的な生活のための日時計住宅の提案のようなことを述べていた。上からの光のためには壁に穿つ窓は不要となり、真っ黒な壁面となったのだろう。
しかし、芝が育たないような日照不足の、囲われた室内で、本当に健康な生活が送れるのだろうか?
この家に住めば鬱にはならないといっていたけれど、垂直面に穿たれた普通の窓から景色を眺めることなく過ごす毎日では、かえって鬱になってしまうのではないだろうか?
あまりにもコンセプチュアルで、脳完結型の建築に、「ついていけないなあ」と思うのは、私の感覚が普通過ぎて建築家っぽくないということなのだろうか、、、?