とはずがたり

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WALANT techniqueの足関節骨折手術への応用

2021-01-22 16:43:31 | 整形外科・手術
WALANT (Wide Awake Local Anesthesia with No Tourniquet) techniqueはターニケットを使わず血腫内局所麻酔注入などによってターニケットなしで手術を行う手法で、手外科領域で用いられる手技です。この論文はWALANT techniqueを足関節骨折に応用したというパキスタンからの報告です。骨折型としてはtype-44Bおよびtype-44Cに限定して58例に行い(44B1: 4例、44B2: 11例, 44C1: 7例, 44C2: 36例)、良好な成績であったことを示しています。まず血腫内に3-5 mLのリドカイン注射を行い整復し、シーネ固定。WALANT tenchiqueに同意した患者に対して手術を行いました。腫脹がない場合は24時間以内に手術を行いますが、平均すると受傷から5日目に手術は施行されました。
WALANT techniqueの具体的な手技は下記のようなものです。
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(手技)生理食塩水30 mL +2% リドカイン(with エピネフリン) 30 mLを1:1で混合した麻酔液を使用(MAX使用量は7 mg/ kg/ mL)。約5 mLの溶液を皮切近位1 cm~遠位1 cmに25 G針で皮下注射。注射後20分程度待ってから手術開始。必要に応じてドリル刺入やスクリュー挿入前に、骨膜に追加の局麻10 mL投与。骨膜は可能な限り保存。脛腓間スクリューが必要な場合は、追加で5〜10 mLの局麻を腓骨の前面に注入。
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58例全例に実施可能で、必要な局麻は手術あたり37.81±2.8 mLで術中疼痛を感じたのはVAS 3が1名、2が2名でした(他は無痛)。VTEなどの合併症はありませんでした。
専門の麻酔医が不要ですので、日本でも医師不足の病院などでは有用な手技でしょうか。

Tahir et al., Ankle Fracture Fixation with Use of WALANT (Wide Awake Local Anesthesia with No Tourniquet) Technique: An Attractive Alternative for the Austere Environment. J Bone Joint Surg Am. 2021 Jan 12.
doi: 10.2106/JBJS.20.00196. Online ahead of print.



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