季節性のコロナウイルス(seasonal human coronaviruses, HCoVs)に感染した人はSARS-CoV-2に対しても免疫を有するのではないかという話は以前からありましたが、最近実際に非感染者においてSARS-CoV-2に対する抗体がみられることが報告されました(Ng et al., Science 370, 1339, 2020; Shrocke et al., Science 370, eabd4250, 2020)。非感染者に見られる抗体はSpikeタンパクのうちウイルスとホスト細胞との融合に重要なS2に対する中和抗体が多いことが明らかになりました。これはS2領域が様々なコロナウイルスの間で保存されているためで、このような抗体を有するヒトがSARS-CoV-2に感染するとback-boostingという現象が生じ、SARS-CoV-2とクロスする抗体を産生する細胞が増殖すると考えられています。このような抗体を有する患者においてCOVID-19重症化が抑制されるという報告もありますが(Sagar et al., J Clin Invest. 2020. https://doi.org/10.1172/JCI143380)、まだ不確定な部分も少なくありません。Affinityが弱い抗体を有することでかえって感染しやすくなるantibody-dependent enhancement(ADE)という現象が生じる可能性もあります(回復期患者血漿を投与された患者でADEが起こっていないので可能性は低いだろうと考えられてはいますが)。このPerspectiveの著者らは、小児や若年者はHCoVsに曝露される機会が多いので、SARS-CoV-2とクロスする免疫を持っており、それが重症化しない原因ではないかとしているのですが、その点はどうでしょうか?私は高齢者で分泌物が少なかったり、嚥下機能が低下していたり、といったことが肺炎発症および重症化の原因ではないかと思っております。もともと高齢者は誤嚥性肺炎を起こしやすいですし。
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