黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

軍艦島:海底坑道の全貌

2017-09-02 02:48:03 | 軍艦島(端島)
昨年発売した『誰も見たことのない世界遺産「軍艦島」DVD BOOK』の内容紹介。

これまでたくさんの軍艦島関連の書籍を出してきましたが、
この書籍では、それまで発表してこなかったテーマを数多く盛り込んでいます。
軍艦島の海底坑道の全貌もその一つ。

地上の建物とかと違って、
海底にアリの巣のように造られた複雑な坑道の全貌を、
写真に収めることは絶対にできません。

そこで全貌までは無理ですが、
基本的な構造を立体図にして紹介できればと思いました。

イラストは崩れゆく都市の光景を得意とする、
東京幻想さんにお願いし、
素晴らしいイラストを制作頂きました。

軍艦島:海底坑道の3Dイラスト
軍艦島:海底坑道の3Dイラスト

これが書籍に掲載した海底坑道図の全体像。
坑道は全て手前半分を削り落とした状態にしました。
実際の構造ではなく、
重要なポイントを抽出して構成した簡略図になっています。





軍艦島:海底坑道の3Dイラスト
軍艦島:海底坑道の3Dイラスト

全体図の左下、石炭を採掘する「切羽(きりは)」と呼ばれる部分のアップ。
軍艦島の直下の炭層は傾斜55度を越える急傾斜だったので、
切羽は擬似的に角度を付けて、傾斜のきつさを軽減していました。

左側の黒い部分が掘り進む炭層、
右の灰色の部分は既に掘った穴を埋め戻した部分です。

ピーナッツバターをまんべんなく塗った
四角いパンのサッドウィッチを想像してみてください。
ピーナッツを炭層として、
このサンドウィッチを55度の角度で立てます。
パンの中央に穴を空けてピーナッツまで辿り着いたら、
ピーナッツを両側に向って斜めに削り落とし、
中央の穴から外へ出していくといったような、
ざっくりといえばそんなイメージです。





軍艦島:海底坑道の3Dイラスト
軍艦島:海底坑道の3Dイラスト

これは全体像の中央下部付近のアップ。
中央のものはチップラーと呼ばれる装置で、
石炭を運んで来た炭車を回転させて、
下部にあるスキップカーと呼ばれる大型の炭車に積み替えられ、
主要の水平坑道まで運び上げられます。





軍艦島:海底坑道の3Dイラスト
軍艦島:海底坑道の3Dイラスト

これは全体像のほぼ中央、
仲卸の捲座と仲卸斜坑人車の様子です。

仲卸とは坑道内に施工された斜めの坑道のことで、
先ほどのピーナッツサンドの例でいうと、
55度に立てたサンドウィッチの左上の角から右下の角へ向って、
対角線上に移動するような感じです。
それでも傾斜は25度以上あるので、
人車は後ろ向きに座らなければなりませんでした。

それ以外にも、竪坑を移動するケージの様子や、
竪坑底で炭車を積み込む様子、
スキップカーが運んで来た石炭の排出など、
軍艦島の海底坑道の基本的な構造を、
一目でわかるように作ってみました。



誰も見たことのない世界遺産「軍艦島」DVD BOOK

◆誰も見たことのない世界遺産「軍艦島」DVD BOOK◆

価格:3,700円(税抜)
DVD収録時間: 65分
書籍:B5版/96ページ/オールカラー
発売元: 宝島社
発売日: 2016/01/12
ISBN-10: 4800250013
ISBN-13: 978-4800250018

誰も見たことのない世界遺産「軍艦島」DVD BOOK


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