Chiro's Memo

My Sweet RoseとRosariumの更新記録です。

黄泉の女 To the End of the World

2006-12-06 23:39:25 | 
黄泉の女 To the End of the World 解説:滝本誠 1995 トレヴィル

以前紹介した「水の女」「眠る女」と同じシリーズの画集です。

本の題名に「黄泉」とあるように「死」をテーマにした作品が多く取り上げられています。
「水の女」「眠る女」と比べるとテーマが抽象的な気もしますが、
美しい作品の数々は見ていて楽しめます。

Love and Life
ウォッツ『愛と生』『ディアナとエンディミオン』
レイトン『オルフェウスとエウリュディケ』
モロー『スフィンクス』『オイディプスとスフィンクス』
クノップフ『愛撫』など
様々な「愛」と「生」の対比を描いた作品が紹介されています。
『クピドとプシケー』(アニー・スウィナートン)も紹介されていますが、
クピドは「愛」をプシケーは「魂(生)」を象徴します。

Wounded Angel
バーン=ジョーンズ、ウォーターハウス、メルリらの描く
死の匂いを纏った精霊たちの姿を見ることができます。
この章の表題は『傷ついた天使』(ヒューゴー・シンベルグ)からとられています。
傷を負った少女の姿の天使が二人の少年によって運ばれている絵です。
天使すらも「死」の誘惑から逃れられないかのような印象を受けます。

Punishment of Lust
メデイアやモルガン・ル・フェなどの魔女をテーマにした作品や
ベックリン『死の島』 ロセッティ『プロセルピナ』など
冥界の色濃い作品が紹介されています。
表題はセガンティーニ『淫蕩の罪』に拠るもので、
『よこしまの母たち』も共に紹介されています。
この二つの作品については以前このブログでも取り上げました。
 雪と氷のニルヴァーナ

Night with her Train of Stars
レイトン『ペルセポーネの帰還』 ホードラー『選ばれし者』など
「死」からの救いをイメージさせられる作品が紹介されています。
表題作『夜と星の列車』については、
初めはなぜこの作品が「黄泉」と関わりがあるのか判りませんでした。
この作品の主題を知ってから、
人間にとって逃れ得ない運命である「死」への恐怖からの救いを
美しい母としてのの天使の姿で表しているのであろうと思うようになりました。
人は皆、時が来れば赤子となって「母なる夜」に抱かれるのでしょう。