蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

老化  (bon)

2024-09-04 | 日々雑感、散策、旅行

 老化・・聞くだけでも嫌な感じになりますが、こればかりは仕方のないことなん
ですね。 若い頃に「老化」などと聞いても、何も感じないというか、耳でただ
「聞いているだけ」だったのでしょうね。 私の場合、先ず頭髪が薄くなり始め、
おしゃべりが聞き取りにくくなり、筋肉が衰え、歩行が遅くなる・・大まかな老化
現象を並べるとそんな感じです。眼は、子どもの頃から近眼でしたから、そのまま
遠視も交じり、近視の遠視?みたいな感じです。

 こうして老化が次第に進んで行き、お迎えが来て一巻の終わり‥となるのでしょう。
細胞が次第に衰えてその機能が果たせなくなってくるのでしょうか? しかし、細胞
は分裂によって増殖しているし、新陳代謝によってある程度回復しているのではない
のでしょうか? でも実際に、確実に老化しているわけですから、やはり細胞が劣化
しているのでしょう。

         (イラストボックスより)

 手元の会報に「寿命はどのように決まるのか?」(小林武彦氏、東京大学定量生命
科学研究所教授)の記事があり、著者は「生物学者として老化とそれによって最終的
にもたらされる死(寿命)の研究をしています。」と述べられている通り、生物の
「寿命」の仕組みを解明するとともに、なぜ寿命(死)というものがあるのかについ
て分かり易く解説されていました。 さらに、小林氏著『生物はなぜ死ぬのか』
(講談社現代新書)が紹介されていました。

 

 結論を先に記しますと、「生物はなぜ死ぬのかではなく、死ぬものだけが進化出来
て、現在存在しているのです。」ということなんですね。 どういうことなのか、
簡単に会報記事をベースとしてネットなどを参照しながら要約してみたいと思います。
ただ、専門的な部分については理解不足ですのでご了承ください。

 

 先ず大きな流れで考えてみますと、この地球に生命が誕生したのは、約38億年前
だと言われています。それから18憶年間つまり20億年前までは、生物には「死」は
なかったと言われています。 生物といっても単細胞の細菌(バクテリア)などの
原核生物による、死のない世界が続いていたというのです。細胞の中の1組のDNAの
複製、つまりコピーで増え続けて行く状況のようでした。

 しかし、その後地球は大陸が出来たり大きな環境の変化があり、それらによって
栄養分が不足すれば、これらの細胞は全滅の危機にさらされるわけで、そのうち細胞
同士が合体し2組のDNAとなり新しい形の細胞に生まれ変わる可能性が生じるのです。
 さらに合体を繰り返し多細胞化の方向に進むのです。これらDNAの組み合わせに
よって種々の性質の個体が産みだされ、環境に適合した種のみが生き延び、そうで
ないものは淘汰されて行くのです。

        DNA
         (ウイキペディアより)

 一方で、これらのDNAは、食物中の発がん性物質やストレス(さらには日常の紫外
線や酸化)などによって傷つきやすく、この傷は時間と共に蓄積されて行き、例えば
生殖を担う細胞が傷を負うとそれは子孫に引き継がれ集団の中に蓄積されることに
なり種が絶滅する可能性が高くなります。これを避けるために、ある一定の期間が
経つと消滅する(死ぬ)プログラムが書き込まれたのです。つまり、細胞が自発的
に死ぬようにプログラムされたのです。(アポトーシスという。)
 これが、生物が老化して死ぬプロセス(必然的経過)なんですね。逆に言えば、
細胞が次々とコピーされる中で、コピーミスが起き違った形の性質(多様性)が出来
たとき、それらが環境に適合する種だけが生き延びてきた(進化した)という寸法
なんですね。

       アポトーシス
        (エムハブより)

 そして、このアポトーシスに異常が起こると、たとえば「がん」になるとあります。
がんは「本来死んでいく細胞が死ななくなり、どんどん増えていく」病気です。また、
肝炎やエイズ、アルツハイマーは、アポトーシスが「進みすぎる」ために起こると
あります。つまり、細胞がものすごいスピードで死んでいくため、臓器や脳が機能
不全になるということだそうです

 

 少し詳細な部分を見てみますと、細胞がどのようにしてアポトーシスを起こすのか
の仕組みについては、会報記事の、小林氏の寿命の研究から述べてみたいと思います。
 小林氏の研究室では、寿命の短い研究材料として「酵母菌」が使われているそう
です。酵母菌は、細菌ではなく、カビ・キノコの仲間の菌類です。アルコール発酵や
醤油、パンなどにも使われているあの酵母です。
 酵母は単細胞生物で分裂によって増殖します。細胞の一部が膨らんで分裂するので
出芽(しゅつが)分裂と呼ばれ、元の細胞を母細胞と呼び、新しく生まれた細胞は
娘細胞と呼ばれているそうです。で、母細胞は、約20回分裂つまり20個の娘細胞を
産むと老化して死んでしまうのだそうです。これが約2日だそうです。寿命は2日
です。

 酵母菌の寿命を調べて行くと、寿命の違う(短い)変異株が見つかり、それらの
寿命を正常に維持するために必要な遺伝子のどれかが壊れていることが判明し、
DNAの壊れやすい領域のあることが分かったのです。つまり、DNAの壊れやすい部分が
壊れることによって寿命が決まるということです。研究では、DNAの壊れやすい部分
を保護することによって寿命が延長することが分かりました。DNAのある部分が壊れ
ると寿命が縮む、換言すればDNAの壊れやすさが寿命を決めているといえるのです。

 したがって、細胞を殺す機構が老化であり、細胞の老化は免疫と同じように生体の
防御機構でもあり必要な生理機能だと結ばれています。

               

 「老いる」というのは、長い歴史の中で生物が(進化して)生きのびるための仕組
みであるのですね。種々の生物ごとにその期間(生存)が大略定められているのも、
これが現状の環境の中で最も(長い時間の中で)好ましい状態として存在している
ということですね。

 これから先、地球の環境が変化して行くにしたがって、これらの寿命も変化して
行くのでしょう。 どういう理由から人間の寿命が100~120年となっているかという
のは解明されていないようですが、仮に昔のように「人生50年」などといえばやはり
あまりにも短い気がしますし、逆に300年などとなれば、これはどのようにして生き
ればよいのか困惑してしまいます。

 いずれにしても、人は老化して死に至りますが、後世に引き継ぎ残せるものがあり
ます。
子孫もそうですが、芸術や音楽、技術、文化、歴史などさまざまなものがあり
ます。社会の制度などもそうですね。

 これら様々なことが、後世に引き継がれ時間をかけた大きな変化の流れに沿って
進化(後退)しながら続いて行くのですね。

               

 ハテ、自分はすでにお迎えの入り口に差し掛かっていますが、何か残したものは
あるか?と問われても、そんな意識は毛頭ないのですね。

 死ねば終り。 『・・線香の煙と共に灰さようなら!』(十返舎一九)

 

 

 

死んだ男の残したものは/倍賞千恵子

 

 

 

 

コメント (1)
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