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恒例のJ.J.マック氏によるまえがきにはこの事件簿を「スウェーデン燐寸(マッチ)の秘密」にするべきだった云々の記述がある。原作も1936年に刊行されたが、これは「スペイン岬…」の翌年で、クイーンとして10作目にあたる。そして本作には「~ある推理の問題」という副題と読者への挑戦は引き続き残っている。こうした点を考慮するとこの作品は実質的に国名シリーズの系統と考えて良い、というようなことが本書の解説では述べられているようだが、詳しい部分は「本編を読んでからご覧下さい」とあるので後の楽しみとしている。
かつて創元文庫版ではさらに翌年の37年に出された“The Door Between”が「日本樫鳥の謎」として、まるで国名シリーズの最終作品のように刊行されたが、実際は関係がないという事実は知っていた。その作品以降は国名シリーズとはまったく違った作品が執筆されており、40年代に入り「災厄の町」や「九尾の猫」などの傑作が登場する。ちなみに「災厄の町」は同じ越前氏の新訳で昨年12月にハヤカワ・ミステリ文庫から刊行されているし、「九尾の猫」もこの8月に同氏の新訳で出るらしい(ハヤカワ版は「エラリィ・クイーン」との表記だが)。となれば、角川版のEQ作品は今後どのような展開になるのか。
興味津々ではあるが、「スペイン」「災厄」そして「中途」の3作がまだ“途中”なのである…。