音楽流れる。
呆然と2人を見ていたジョーイ、嬉しそうに
微笑んで、ゆっくり下手方へ歩いて行く。
途中、振り返りもう一度2人を見詰め去る。
ジェフ、優しく歌う。
“今気付いたこと・・・
誰かを愛しいと思うこの気持ち・・・
胸の高鳴りは
守りたい者を探し当てた喜び・・・
昨日までは
気付かない振りをしていたこと・・・
愛する思いは優しさと
紙一重で全く違うと言うことを・・・
愛がないから表わす優しさと
愛があるから自然に溢れる優しさの・・・
違いをハッキリ感じ取った今
心から愛していたのは君だけと
もう誰も誤魔化せない・・・”
ローズ、呼応するように歌う。
“こんな気持ちは初めて・・・
側にいるだけでとても
心安らいで
温かい思い溢れる・・・
あなたを愛したと気付いた時・・・
ただ湧き上がる
不安と喜び・・・
紙一重で全く違うと言うことを・・・
愛がないから堪らなく不安になる・・・
愛があるから心から幸せだと感じる・・・”
2人、手を取り見詰め合って歌う。
“違いをハッキリ感じ取った今・・・
心から愛していたのは君(あなた)だけと・・・
もう神をも誤魔化せない・・・”
ジェフ、優しくローズに口付け、その胸に
そっと抱き寄せる。 ※
フェード・アウト。
――――― 第 6 場 ―――――
フェード・インする。と、カーテン前。
下手より両手をポケットへ無造作に
突っ込んで、嬉しそうに口笛を吹きながら、
ジョーイ登場。
上手方へ。中央、口笛を止め、上手方を
見て何かを認めたように、その方を見据える。
と、上手よりフレッドゆっくり登場。ジョーイに
近寄る。
(ジョーイ、フレッドを見据えたまま立ち尽くす。)
フレッド「・・・こんにちは・・・。その顔は・・・俺のことを覚えてい
たようだな・・・。」
ジョーイ「・・・忘れるもんか・・・!!」
フレッド「おやおや・・・。あの時以来、いいことと悪いことの2つ
があった・・・。まず、悪いことは勿論、あの日あそこで我
々の殺人を君に見られてしまったこと・・・。いいことは、
その後、君が偶然ジェフの知り合いで、捜す手間が省け
、直ぐに見つかったと言うことだ・・・。」
ジョーイ「・・・だからどうだって言うんだ・・・。」
フレッド「いやに刺々しいなぁ・・・。俺はジェフの親友だぜ。もう
少し愛想よくしてくれたっていいだろ?」
ジョーイ「・・・上辺だけのくせに・・・」
フレッド「上辺だけ・・・?ハハハ・・・。(態とらしく笑った後、急に
真面目な顔付きになる。)あいつはそんな風に思ってな
いと思うがね・・・。」
ジョーイ「兄ちゃんを騙すつもりか・・・。」
フレッド「騙す・・・?そんなつもりはないさ・・・。人間、誰しも表と
裏の顔を持つものだ・・・。もし、あいつが騙されたと思う
なら、あいつは俺の上辺だけしか見てないってことにな
る・・・。それで親友面してるんだとしたら、俺の方が騙さ
れたと思うね。」
ジョーイ「・・・酷い野郎だ・・・。やってることも最低なら、心根も
最低なんだな!!・・・警察へ行く・・・!!」
ジョーイ、怒りに肩を震わすようにフレッドの
横を通り過ぎ、上手方へ行く。
フレッド「(通り過ぎたジョーイに向かって。)おい・・・」
ジョーイ「(溜め息を吐いて立ち止まる。)・・・なんだよ・・・まだ何
か・・・(振り返る。)」
フレッド、背広の内ポケットから取り出した
ナイフで、振り返ったジョーイの腹部を一突き
する。
ジョーイ「(呆然と腹部を見て押さえる。)なんなんだ・・・」
フレッド「・・・おまえが悪いんだぜ・・・。おまえがもう少し、物分り
のいい少年なら、俺はおまえを俺の一存で・・・見逃して
やってもいいと思ってたんだ・・・なのに・・・」
フレッド、言い捨てて下手へ走り去る。
ジョーイ「待て・・・」
ジョーイ、よろめきながら呟くように、
虚ろな瞳で息も絶え絶えに歌う。
“本当に・・・
大事な・・・ことは・・・
誰かを・・・大切だと・・・思・・・う・・・
自分の・・・気持ち・・・
相手が・・・自分・・・を・・・
どう思う・・・とか・・・
そんな・・・ことより・・・
自分が・・・皆を・・・愛してい・・・ると・・・言う・・・
その・・・気持ち・・・
それが・・・一番・・・大切な・・・こ・・・と・・・”
ジョーイ、痛みに膝を付いて、彼方を
見遣る。
ジョーイ「・・・兄・・・ちゃん・・・姉・・・ちゃん・・・」
ジョーイ、倒れる。
音楽盛り上がって、フェード・アウト。
――――― 第 7 場 ―――――
フェード・インする。
遠くに車の通行音が聞こえている。
冷たい風が時折吹き抜けていくよう。
舞台中央、ジョーイの被っていた帽子を
握り締め、佇むジェフ。
ジョーイの声、木霊するように聞こえる。
ジョーイの声「兄ちゃん・・・」
そこへ下手奥よりフレッド、ゆっくり登場。
ジェフを認め近寄る。
フレッド「どうしたんだ、ジェフ?こんなところへ呼び出して・・・。
話しなら社内でも出来るのに・・・。」
ジェフ「(フレッドから目を逸らしたまま。)・・・少し・・・聞きたいこ
とがあるんだ・・・。」
フレッド「(何かに気付いたように。だが知らん顔するように。)・・・
聞きたいこと・・・?」
ジェフ「ああ・・・」
フレッド「何だよ。またスザンヌのことで何か悩んでいるのか?
(笑う。)」
ジェフ、ただ黙って振り返り、フレッドを
見詰める。
フレッド「どうしたんだよ・・・。おまえらしくない。言いたいことが
あるんなら、ハッキリ言えよ・・・。」
ジェフ「・・・昨日・・・午後から社内にはいなかったようだけど・・・
?」
フレッド「ああ、BJブライスに行って、そろそろ首を縦に振っても
らえないだろうかと、ずっと頭を下げてたよ。お陰で今日
は首が痛くて・・・。(首を摩りながら笑う。)」
ジェフ「・・・昨日の午後からおまえはBJブライスには行っていな
い・・・。他にもおまえが立ち寄りそうなところにはいなかっ
た・・・。何故・・・嘘を吐く・・・?」
フレッド「・・・調べたのか・・・?おまえは親友の何を疑っている
んだ?失礼じゃないか・・・。」
ジェフ「じゃあ何処へ行ってたんだ・・・。」
フレッド「・・・関係ない・・・」
ジェフ「・・・もう一つ・・・ここ何年か、おまえが取ってきた契約者
の中で、どう言う訳か高額契約者が早死になのは、どう
言うことなんだ・・・。」
フレッド「知らないね!!」
ジェフ「俺はおまえを信じてきた・・・。これからだって信じていた
い・・・。」
フレッド「ならいいだろ!?」
ジェフ「・・・おまえが自分から、悪に手を染めたんじゃないと信じ
てる・・・。だから・・・俺に本当のことを聞かせてくれ!!」
フレッド「(態とらしく笑う。)・・・何言ってるんだ・・・。」
ジェフ「・・・昨日・・・ジョーイが殺された・・・(絞り出すような声で
。)・・・あんないい奴が・・・」
フレッド「・・・へ・・・ぇ・・・」
ジェフ「・・・この間、あいつは殺人現場でおまえを見たと、不安
がっていたんだ・・・!!あの時は半信半疑で、直ぐにお
まえに問うこともせず、こんなことになってしまった!!・・・
一体誰があいつを殺したんだ!!教えてくれ!!」
フレッド「・・・それを聞いて・・・おまえはどうするんだ・・・」
ジェフ「できることなら俺がこの手であいつの仇を討ってやりた
い!!」
フレッド「(ゆっくり言葉を選ぶように。)・・・今から丁度2年前・・・
営業で何処へ行っても断られ・・・専務からも・・・一つも
契約が取れないような奴は・・・会社には必要ないと言
われ・・・途方に暮れていた・・・。おまえには、こんな気
持ちは分からないだろうな・・・。」
ジェフ「・・・フレッド・・・」
フレッド「・・・そんな時に出会ったのが・・・今・・・俺が手を組んで
いる裏組織だった・・・。あいつらは、俺に契約の取り方
を・・・客の掴み方を教えてくれた・・・。そして・・・その金
を自分のものにする方法まで・・・。」
ジェフ「・・・フレッド・・・まさか・・・おまえ・・・?」
フレッド「・・・最初は奴らの仲間になることを躊躇った・・・。だが
あまりに違う・・・同僚であるおまえの営業成績と・・・自
分を比べた時の惨めさ・・・!!俺はその時、何もかも
捨てたんだ!!誇りや自尊心・・・そして自分の将来ま
で!!」
ジェフ「おまえはそれと引き換えにしてまで・・・金や欲に目が眩
んだのか!!」
フレッド「それだけじゃない・・・何時もおまえの足元に虐げられ
ていた、自分の会社での地位を向上させたかったんだ
!!」
ジェフ「・・・知らなかった・・・おまえがそんな風に思っていたなん
て・・・」 ※2
フレッド「・・・そして・・・丁度あの夜も・・・半年前に書類工作して
加入させた身寄りのない男の殺害を、偶々あの少年に
見られてしまったんだ・・・。俺は上の奴から、その少年
を見つけ出して、何としても始末しろと命令された・・・。
だが・・・保険の掛かった身寄りのない、老い先短い老
人と・・・これからの未来の可能性を一杯持った少年と
では違い過ぎる・・・。俺は少年を説得し・・・金を握らせ
何とか何処か遠くへ逃げろと・・・説得するつもりだった
んだ・・・!!それなのに・・・!!」
ジェフ「・・・まさか・・・おまえが・・・」
フレッド「・・・その“まさか”さ・・・」
ジェフ「(思わず怒りに身を震わせ、フレッドに殴り掛かる。)馬鹿
野郎!!」
フレッド、倒れる。
ジェフ「なんてことをしたんだ!!何故おまえは!!」
フレッド「(項垂れる。)」
ジェフ「(フレッドの胸元を掴む。)ずっと!!ずっと・・・親友だと
思ってきたのに!!(涙を堪えるように。)何故もっと追い
詰められる前に、俺に相談してくれなかったんだ!!何
故!!・・・自分一人で何とかしようだなんて・・・!!おま
えはあいつの人生を奪っただけでなく、自分自身の人生
をも無くしてしまったんだぞ!!何故なんだ・・・!!何故
なんだ、フレッド!!」
フレッド「・・・すまない・・・」
ジェフ「俺に謝ったところでもう!!あいつは二度と戻って来な
いんだ!!何故・・・ずっと親友だと・・・(絞り出すように。)
」
フレッド「・・親友なんかじゃない・・・」
ジェフ「・・・フレッド・・・」
フレッド「・・・俺は・・・自分が許せない・・・。今まで上辺だけでも
おまえの親友面していたことが・・・。こんな手の汚れた
俺が・・・おまえの親友でいれる筈がないんだ・・・。今ま
でも・・・そして・・・これからも永遠に・・・。自首するよ・・・
。今まで・・・ありがとう・・・。」
フレッド、項垂れて上手へゆっくり去る。
ジェフ、呆然と佇んだまま、スポットに
浮かび上がり、切なそうに歌う。(カーテン
閉まる。)
“人が・・・見る夢は・・・
人により様々・・・
だけど願うことは・・・
幸せになりたいと・・・
ただそれだけなのに・・・!!
なのに道は曲がるのか・・・
真っ直ぐに進めず
何故悩み苦しむのか・・・!!
誰にもやってくる
未来に見る夢は・・・
ただ優しさに溢れた
ものだといい・・・
そんな細やかな・・・
夢を握り潰す程
人は突然に・・・
変われるものだろうか・・・
誰が・・・見る夢も・・・
たいした変わりはないと
たった一つの願い・・・
幸せになりたいと・・・
心の底にある思いは
ただそれだけなのに・・・
突然迷ったように
進めなくなるものか・・・!!
夢見た明日さえも・・・
未来に見た夢も・・・
もう二度とは巡りこず
過ぎ去ったもの・・・
そんなちっぽけな
暖かなものに包まれた・・・
夢を持っておまえは・・・
彼方へと飛び去った・・・”
ジェフ、天を仰ぐ。
――――― “ジェフ・カート”完結編へつづく ―――――
※ こんな場面・・・チョー不得意分野です・・・^^;
※2 この台詞を書きながら・・・どこかで聞いたことが・・・
と、思っていたのですが・・・そうそう、7周年記念公演
作品の1本、ちょっとだけ大人な作品の“J”で登場する
ダブル主役的な片割れが、発する台詞そのままなの
でした~^_^;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
今日の夕方、変な投稿をご覧になった方・・・いらっしゃい
ますでしょうか・・・(・。・;
慌てて削除したのですが・・・正しくは“してもらった”ので
すが、突然に訳の分からないものをお見せしてしまい、
申し訳ありませんでしたm(__)m
実はお盆休みで東京にいる弟が来ていて、仕事柄、
パソコンに詳しい弟にあれこれ聞いている時に、弟が
やってしまったのです~(-_-;)
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
これは、グーグル版“ワールド”でご覧頂いた方も
いらっしゃるかも知れませんが、そちらで以前、
発表させて頂いた未発表作品になります(^_^)
片方のワールドだけお楽しみ頂いている皆さんに
も、両方楽しんで頂こうと転記して参りました(^^)
・・・が・・・
どうも転記すると、色々と字体諸々の変更が勝手
に行われ、ひょっとして見に来て下さった皆さんに
読み難い・・・などの不都合が現れてしまうかも知
れません(ーー;)
その時はお許し下さい<(_ _)>
どら。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ―
〈 主な登場人物 〉
ライアン ・・・ 本編の主人公。 未来に住む少年。
マイク ・・・ ライアンのひいひいお祖父さん。
ジェシカ ・・・ マイクの妻。 ※
その他
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ―
――――― 第 1 場 ―――――
幕が上がる。と、街の路地裏。
薄明かりの中、辺りを静寂の時が包む。
そこへ上手より、後ろを気にしながら、
慌てた様子で腕を押さえ、一人の青年
(マイク)、走り登場。
マイク「(息を切らせて。)いってぇ・・・(中央に積み重ねてあった
木箱の後ろに身を潜める。)」
そこへ上手より、銃を片手に数人の警官、
誰かを追い掛けるように、走り登場。
警官1「待てーっ!!」
警官2「何処へ行った!?(キョロキョロする。)」
警官3「全く、逃げ足の早い・・・」
その時、下手より声が聞こえる。
声「わあーっ!!この人、怪我してるんじゃないかーっ!!」
警官達、その声に顔を見合わせる。
警官1「おい!!」
警官、その声に引き寄せられるように、下手
へ走り去る。警官去るのを見計らってマイク、
物陰から登場。
マイク「そろそろヤバいかな・・・。まだ顔は知れてないだろうけど
・・・。足が付くのも時間の問題だな・・・。(座り込む。)」
一時置いて、下手より後ろを気にしながら、
一人の少年(ライアン)楽しそうな様子で登場。
マイクに近寄る。
ライアン「お巡りさん行ったよ。(マイクを覗き込んで。)あらら・・・一杯
血が出てるね・・・。痛そうだ・・・。」
マイク「・・・誰だ・・・」
ライアン「僕はライアン。ねぇ、痛い?」
マイク「(ライアンの言葉は無視するように、辛そうにゆっくり立ち上が
り、上手方へ足を引き摺り、少しずつ進む。)」
ライアン「もうお巡りさん、来ないよ。」
マイク「(怪訝そうにライアンを見る。が、知らん顔して上手方へ行き
かける。)」
ライアン「そんな傷で何処行くの?死んじゃうよ。(笑う。)」
マイク「煩いな・・・。俺が死のうが生きようが、おまえには関係ない
だろ。さっさとママの待つお家へ帰って、ぬくぬくしてろ!!」
ライアン「冷たいなぁ・・・。(笑う。)あなたが死んだら、困るんだ僕。」
マイク「ふん・・・」
ライアン「ねぇ、その傷・・・治してあげようか?」
マイク「あのな・・・そんなつまんない冗談言ってないで・・・」
ライアン、マイクの腕を掴む。と、みるみる傷が
治ったように。
マイク「・・・(驚いて傷を見詰める。)おまえ・・・」
ライアン「血、止まったね。」
マイク「一体どうやって・・・」
ライアン「じゃあね、お兄さん!また会いに来るよ!(手を振り、上手
へ走り去る。)」
マイク「あ・・・おい!!」
マイク、スポットに浮かび上がり歌う。
(紗幕閉まる。)
紗幕前。
“誰だあいつ・・・
青く澄んだ瞳で俺を見る・・・
どこかで会ったか
魔法使いかマジシャンか・・・
はたまた天使か分からない・・・
やたら慣れ慣れしく
妙に懐かしい・・・
何故だか変な感覚だ・・・”
暗転。
――――― 第 2 場 ――――― A
音楽流れ、紗幕開く。と、未来の風景。
上手より、ライアン登場。元気良く歌う。
“楽しいことが大好き
愉快なことが大好き
面白いこと冗談だって
大笑いするようなことが
大好きさ
冒険が大好き
ワクワクが大好き
ドキドキすること興味津々
僕は気になることには
何でも挑戦するんだ!”
――――― 第 2 場 ――――― B
声「ライアーン!!」
ライアン「やばい!!」
ライアン、下手へ走り去る。
入れ代るように、下手より車椅子に乗った
一人の老人(マイク)、ゆっくり登場。
上手より、ライアンの母登場。
母「ライアーン!!宿題は済んだのー!?ライアーン!!あ、おじい
さん、ライアンを見なかったかしら!?」
マイク「わしは知らんのぉ・・・」
母「もう本当に、逃げ足だけは早いんだから!おじいさん!ライアン
を見かけたら、私が捜していたと伝えて下さいね!!」
マイク「ああ・・・分かったよ・・・。」
母「(溜め息を吐く。)もう全く・・・。あの子ったら・・・親の言うことなん
て、どこ吹く風ね!自分が興味のあることなら、誰が何も言わな
くても、サッサと行動する・・・悪いことは見過ごせない正義感・・・
一体誰に似たのかしら・・・。」
母親、ブツブツ言いながら、上手へ去る。
マイク「ライアンは、わしの妻、ジェシカの子どもの頃にそっくりじゃよ
・・・。(笑う。)」
ライアン、母親が去るのを見計らって、
ゆっくり下手より登場。
ライアン「ふう・・・」
マイク「(ライアンを認め。)ライアン・・・、お母さんがえらく探し回って
おったぞ。」
ライアン「ふん!いいんだ!母さんなんか、宿題しろだの勉強しろだ
のお使い行けだの・・・煩くって!」
マイク「おいおい・・・。母さんをそんな風に言っちゃいかんな・・・。」
ライアン「いいんだよ!おじいさん!!もしまた母さんに僕のことを
聞かれても知らないって言っといてよ!」
その時、マイクが手に持っていた小型テレビ
の音声が流れてくる。
声「・・・臨時気象ニュースです。太平洋沖で発生した大型のハリケ
ーンが、明日、本土へ最接近、その後上陸する模様です・・・。」
ライアン「ハリケーンだって!今夜、遊びに出られないや!ちぇっ!
地下シェルターで休まなけりゃいけないなんて最悪だ!!
ジョニーん家はいいよなぁ。父さんが瞬間移動民族だから、
隠れなくていいんだもんな。シュッと忽ち、海外だって何処
へだって行けちゃうんだから・・・。」
マイク「これこれライアン、人を羨むな。それに今は何処の家にも
地下シェルターなんてもんがあるから、いいではないか。・・・
わしらが若い頃には、ハリケーンが来たって、逃げる場所な
どなかったんじゃぞ。」
ライアン「じゃあ、ハリケーンが来たら如何したの?」
マイク「避けて行ってくれるのを願うだけじゃよ。」
ライアン「まさか・・・。(笑う。)」
マイク「走って逃げた所で、追い付いかれて巻き込まれてしまうのが
目に見えておるじゃろう・・・。」
ライアン「そんなこと・・・嘘だ・・・。」
マイク「・・・嘘なものか・・・。ライアン、こっちへ来ておくれ・・・。」
ライアン「何?ひいひいおじいさん・・・。」
マイク「・・・わしは、もう長くは生きられん・・・。そこで、おまえに一つ
だけ頼みがあるんじゃ・・・。」
ライアン「頼み・・・?どんなこと・・・?」
マイク「わしは、若い頃の過ちから・・・一つだけ後悔しておる出来ごと
があるんじゃ・・・。」
ライアン「後悔していること・・・?」
マイク「ああ、そうじゃ・・・。(写真を取り出し、ライアンへ差し出す。)」
ライアン「何・・・?」
マイク「そこに、女の人が写っておるじゃろう?」
ライアン「うん・・・。とても綺麗な人だね。」
マイク「おまえのひいひいおばあさん・・・わしの妻だった人じゃよ。」
ライアン「ひいひいおばあさん・・・?」
マイク「おまえの瞳の色は、そのジェシカに瓜二つじゃよ・・・。おまえ
を見ていると、ジェシカを思い出す・・・。わしらは子どもの頃
からの、幼馴染だったんじゃ・・・。ジェシカは、子どもの頃は
男の子と間違えられる程、元気でお転婆な女の子だったよ
・・・。丸で今のライアンのように・・・。(笑う。)」
ライアン「そのジェシカおばあさんは、若くして亡くなったんでしょ?」
マイク「・・・ああ・・・。わしのせいで・・・な・・・。」
ライアン「おじいさんのせい・・・?おじいさんのせいって・・・」
マイク「ライアン・・・タイムマシンで過去のわしの過ちを正して来て
くれないか・・・。そして、ジェシカの命を救っておくれ・・・。この
年寄りの最後の頼みじゃ・・・。」
ライアン「おじいさん・・・けど、命を救うって・・・どうやって・・・」
マイク「わしがまだ若かりし頃・・・ジェシカとジャック、3人で幸せに暮
らす一方で、ジェシカには内緒でわしは・・・良からぬ奴らと手
を組み、悪事に加担しておったのじゃ・・・。そして、130年前
の5月10日・・・わしはその日もまた、そんな奴らの誘いに乗
って、ジェシカが止めるのも聞かず、家を出て行ったのじゃ。
金さえあれば・・・家族が幸せに暮せると信じて・・・。しかし、
その日は・・・今なお語り継がれておる、国を壊滅状態に陥れ
ることになった、あの巨大ハリケーンが本土を襲った日・・・。
ジェシカはそのハリケーンに・・・」 ※1
ライアン「ハリケーンに・・・?(手に持っていた写真を見る。)」
ライアン、マイク、セリ下がる。
――――― 第 3 場 ――――― A
音楽流れ、入れ代るように、前方ジェシカ、
セリ上がる。(紗幕閉まる。)
紗幕前。ジェシカ歌う。
“今日になれば昨日より
明日になれば今日この時より
少しでも良くなると信じて
歩いているけれど・・・
何故だか少しの不安が
心を過るの・・・
大切な時間のこの時を・・・”
ジェシカ「一体、あの人は何時もどこで何をしているのかしら・・・。
フラッと出て行ったかと思えば、お金を持って帰って来る・・・。
そしてまた・・・。あの人の後ろに見え隠れする良くない影が、
とても気になるの・・・。いい儲け話しの仕事が見つかったか
らと、突然会社を辞めて、あの人達と、付き合うようになって、
急に羽振りが良くなったような気がするわ。いい儲け話しって
一体・・・」
――――― “ライアン”2へつづく ―――――
※ この“マイク”と“ジェシカ”と言う名前、よーく覚えておいて
下さい(^^)v人形劇での今年発表4作品の中の一作で、
とても重要な人物として登場します(^.^)
※1 130年以上も生きるか!・・・と、言われるかも知れま
せんが、後で、ライアンくん、ちゃんと「未来では寿命が
延びて・・・云々・・・」と、説明しておりますので、ご安心
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ―
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
〈 主な登場人物 〉
老ネコ ・・・ ネコの村の長老。
シュワッチ ・・・ レンジャー戦士に憧れて、都会へ出て行
た。
ネコ吉 ・・・ ネコの村に住む。
ミータ ・・・ ネコの村に住む。
一番ネコ
ノラ ・・・ 都会に住む。シュワッチと友達になる。
食いしん坊 ・・・ネコの村に住む。
ボウネコ ・・・ ネコの村に住む。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
――――― 第 1 場 ―――――
音楽流れる。
上手スポットに、希望に瞳を輝かせ、
彼方を見遣るシュワッチ、浮かび上がる。
シュワッチ「僕・・・歌って踊れるスターになりたいんだ!!あの
テレビの中のレンジャー戦士のように、悪い奴らを懲
らしめる、正義の味方になりたいんだ!!だから、僕
は都会へ行く!!都会へ行って、スターになるんだ
!!」
音楽大きくなり、シュワッチ力強く歌う。
“町へ行くんだ夢を叶える為に
どんな小さな夢だって
見てよかったと思える為に
町へ行くんだ!
願いを胸一杯詰め込んで
昇った朝陽に手を振ろう
大いなる希望
新たな冒険
住み慣れた村を飛び出して
今こそ町へ出かけよう!!”
上手スポット、フェード・アウトする。
同時に下手スポットに、村のネコ達(老ネコ以外)
心配そうな面持ちで浮かび上がる。
ネコ吉「シュワッチ!!」
他のネコ達、声を揃えて「シュワッチ!!」
舞台、フェード・インする。
ミータ「あんなこと言って、シュワッチがこの村を出て行って3ヶ
月・・・」
ボウネコ「どうしてるのかなぁ、シュワッチ・・・。」
一番ネコ「こんな田舎から出てって、誰でも直ぐにスターになれ
るんなら、世の中スターだらけだ!スターになんか、そ
う簡単になれっこないんだよ!!」
ネコ吉「一番ネコ・・・。」
食いしん坊「僕も一緒に行きたかったなぁ・・・。」
一番ネコ「ばぁか!おまえが行ってたら、直ぐに腹空かせて逃
げ出してくるに決まってるだろ?都会で暮らしていくな
んて、おまえみたいにのんびりしてる奴には、到底無
理なんだよ!」
ネコ吉「そう言えば、一番ネコは昔・・・町に住んでたことがあっ
たんじゃ・・・」
一番ネコ「(少しばつが悪そうな顔をする。)あ・・・ああ・・・もう忘
れちまったよ!そんな昔のこと・・・」
ミータ「(嬉しそうに。)逃げ出して来たのね?」
一番ネコ「煩いな!!都会の水は、俺には合わなかっただけさ
・・・!」
食いしん坊「都会の水って、どんな味?」
一番ネコ「知るか!!」
そこへ下手奥より、老ネコゆっくり登場。
老ネコ「何か揉め事かな?」
ネコ吉「老ネコ!違うんだ、今、皆でシュワッチのことを話してた
んだ。」
ミータ「スターになるんだって行ったっきり、何の音沙汰もなし!」
食いしん坊「テレビにも出ないし・・・」
ボウネコ「もう3ヶ月・・・」
一番ネコ「生きてるのか死んでるのかも分かりゃしないさ!」
ネコ吉「一番ネコ!!」
一番ネコ「だってそうだろ!?都会のビルの隅っこで、食うもん
もなくて・・・ネズミを取る元気もなくて、今にも死にそう
で引っ繰り返ってたって、町の奴らにはちっとも構やし
ないのさ!!他の奴に構う暇があったら、自分の心配
してろってな!!」
ミータ「酷い・・・(泣きそうになる。)」
ネコ吉「言い過ぎだよ、一番ネコ。」
老ネコ「まあまあ・・・、シュワッチは元気じゃよ。」
ミータ「本当!?」
老ネコ「ああ。」
ボウネコ「どうして知ってるの!?」
一番ネコ「帰って来たのか!?」
ネコ達、一番ネコの言葉に其々嬉しそうに
歓声を上げる。
老ネコ「いいや、帰ってきたんじゃないわ。」
ネコ達、ガッカリしたように溜め息を吐く。
老ネコ「だが、帰って来るらしい。」
ネコ達、飛び上がって喜ぶ。
ミータ「何時帰って来るの?」
老ネコ「(手紙を見せて。)今朝、シュワッチから届いた手紙じゃ
よ。」
一番ネコ「見せてくれよ!!(老ネコの持っていた手紙を取り上
げる。)」
一番ネコ、手紙を広げる。他のネコ達、
周りに集まる。
食いしん坊「何て書いてあるんだい?」
ボウネコ「早く読んでよ!」
一番ネコ「む・・・む・・・むら・・・の・・・」
ミータ「もう!!何言ってんのよ!!」
一番ネコ、字が読めずに首を傾げて、
難しそうな顔をして手紙を見詰めていると、
ネコ吉、その手紙を取り上げ読み始める。
ネコ吉「村の皆へ・・・。お元気ですか・・・」
ネコ吉の声に被って、シュワッチの声に変わる。
シュワッチの声「僕はとっても元気です!!今では町の生活に
も漸く慣れましたが、初めてここに着いた時、雲
に届きそうな高いビルや、テレビでしか見たこと
のない車が、実際に目の前をビュンビュン走っ
ているのを見た時には、冗談かと思いました。
そうそう、この間、初めてレンジャー戦士の撮影
現場へ見学に行って来たんだ。実際に見る、赤
レンジャーや青レンジャーは、テレビで見るより
随分小さいんだぜ!町には村では想像もしなか
ったような驚きや発見が、毎日あるんだ!ところ
で最近よく皆の夢を見ます。ここに来て改めて、
村の良さに気付いたって言うか・・・。皆に会いた
いよ・・・。だから一度、村へ帰ります!!今、直
ぐに!!」
嬉しそうなネコ達。
フェード・アウト。
――――― 第 2 場 ―――――
上手客席前より袋を担いだシュワッチ登場。
続いてノラ、不思議そうに回りを見回しながら
登場。話しながら客席前を通って下手方へ。
ノラ「(だるそうに。)おい、シュワッチ!おまえの言ってる村は、
まだなのかよ・・・。俺、もう歩き疲れてクタクタだぜ。」
シュワッチ「もう少しさ!(下手方を指差して。)ほら!あそこに
見える橋!!あの橋を渡れば、もう僕の故郷、ネコ
の村だよ!!皆どうしてるかなぁ・・・。3ヶ月も会って
ないんだもんな。僕はあの村で生まれて、あの村で
育ったんだ。だから今までこんな長いこと・・・」
ノラ「(シュワッチの言葉を横取りするように。)皆と離れて暮らし
たことはない!!」
シュワッチ「・・・ノラ・・・」
ノラ「全く・・・おまえと知り合ってから、俺はネコの村のことを聞
かなかった日はないぜ!お陰で・・・」
ノラ、語りかけるように歌う。
“俺は今じゃネコの村博士
何でも知ってる誰よりも
丸でそこに住んでたように
目を閉じれば手に取るように
見えてくるんだ何もかも
おまえは何でも言いたがり
俺は黙って聞くばかり
そんなに素晴らしいところなら
一目はお目にかからなきゃ
さぁ見せてくれ!
おまえの自慢の仲間達!!”
シュワッチ、ノラ、下手より舞台へ。
シュワッチ「(嬉しそうに周りを見回して。)懐かしいなぁ・・・。もう
何年も留守にしてたみたいだ!!」
ノラ「随分、田舎なんだなぁ・・・。(周りを見回す。)」
シュワッチ「皆は何処にいるんだろ・・・。おーい!!(周りを探す
ように。)」
そこへ、上手より話しながら村のネコ達
登場。
ミータ「だからラッピングは初めから私に任せてくれればよかっ
たのよ!」
一番ネコ「ミータにこんな特技があったとはねぇ。」
ミータ「失礼ね!!」
食いしん坊「それを言うなら一番ネコだって・・・」
ネコ吉「そうさ!(手に持っているプレゼントの箱を見て。)だけ
ど、素敵なプレゼントになったね!」
シュワッチ、村のネコ達に気付く。
シュワッチ「皆!!」
村のネコ達、シュワッチに気付く。
お互いに駆け寄る。
ネコ吉「シュワッチ!!」
他のネコ達口々に「シュワッチ!!」
ミータ「(シュワッチに抱きつく。)おかえりなさい、シュワッチ!!
」
シュワッチ「ただいま、皆!!」
ネコ吉「元気にしてたかい?」
シュワッチ「見ての通りさ!!」
食いしん坊「久しぶりだなぁ・・・!!」
シュワッチ「おい、食いしん坊!また一段と大きくなったんじゃな
いか?(笑う。)」
ボウネコ「ねぇねぇ、お土産は?」
一番ネコ「おい!」
シュワッチ「勿論さ!!ほら!!(持っていた袋を、ボウネコの
方へ差し出す。)」
ボウネコ「わぁ!!(袋を抱かえて座り込み、ゴソゴソ中を覗く。)
」
ミータ「私達からもあるのよ!!ね、皆!!」
ネコ吉「(シュワッチに箱を差し出して。)はい、シュワッチ!」
シュワッチ「うわぁ・・・(箱を受け取って、。)ありがとう、皆!!」
ネコ吉「一番ネコが一生懸命、作ってくれたんだよ。」
シュワッチ、包みを開けると、中から
シュワッチ似の木彫りの人形が出てくる。
ボウネコ「木は僕が探してきたんだ!」
ネコ吉「食いしん坊が色塗り、ミータがラッピング・・・」
一番ネコ「ネコ吉のアイデアなんだぜ!だからあれだ・・・これは
皆で作った合作って奴だ!」
シュワッチ「・・・ありがとう、皆!!」
途中、退屈そうにゴロンと横になって、
皆の話しを聞いていたノラ、わざとらしく
咳払いをする。
皆、一斉にノラの方を向く。
ノラ「おい、シュワッチ!感激の再会はそれくらいにしといて、俺
のことも紹介してくれよ。(立ち上がる。)でなけりゃ、退屈で
退屈で寝てしまいそうだ・・・。(欠伸をする。)」
シュワッチ「あ・・・ごめんよ!」
ネコ吉「誰だい?シュワッチ。」
シュワッチ「え?うん!紹介するよ!町でできた友達で・・・」
一番ネコ「ノラ・・・」
シュワッチ「そう!!ノラ・・・え・・・?」
ノラ「(一番ネコを認めて。)一番ネコ!?一番ネコじゃないか!
!」
シュワッチ「知ってるのかい?」
ノラ「知ってるも何も・・・なぁ、一番ネコ!!(一番ネコに近寄っ
て、肩に手を掛ける。)」
一番ネコ、暗い面持ちをして横を向く。
ノラ「俺達は同じ町で生まれ育った兄弟みたいなものなのさ!
なぁんだ一番ネコ、突然町からいなくなったと思ったら、こん
な田舎でくすぶってたのか!(笑う。)」
シュワッチ「へぇ・・・ノラと一番ネコが友達だったとはね!世の
中広いようで狭いって言うのは、こういうことを言う
のかな?(笑う。)」
ノラ「退屈凌ぎのつもりだったが・・・楽しくなりそうだな、一番ネ
コ!!」
一番ネコ、複雑な面持ちをする。
音楽でフェード・アウト。
――――― 第 3 場 ―――――
下手スポットに、老ネコ浮かび上がる。
老ネコ「・・・あれは今から丁度、一年程前のことじゃった・・・。所
用で出掛けた都会の町で、偶々悪さをしておる一匹の野
良猫と出会ったんじゃ・・・。それが今の一番ネコじゃった
・・・。」
上手方スポットに、目つきの悪い一番ネコ、
一番ネコに怯えるように立つ子猫が浮かび
上がる。
老ネコ、そのまま正面を向いて立ち、2匹の
猫の遣り取りを見ているように。
一番ネコ「おい、おまえ!!その手に持っているのはなんだ?」
子猫「(手に持っていた袋を、慌てて後ろへ隠すように。)な・・・
なんでもないよ・・・」
一番ネコ「嘘吐け!!(匂いを嗅ぐように。)・・・俺様の鼻には、
何かとんでもないご馳走の匂いがするがね・・・!!」
子猫「ほ・・・本当になんでもないよ・・・」
一番ネコ「その袋を俺によこせよ!!(無理矢理、袋を取り上げ
る。)」
子猫「あ・・・!!やめてくれよ!!それは祖母ちゃんのお見舞
いに、母ちゃんから預かった・・・!!」
老ネコ(下手スポット、正面を向いたまま。)
手に持っていた杖を、一振りする。
老ネコ「これ!!」
一番ネコ(上手スポットのまま。)誰かに
頭を叩かれたような格好をする。
一番ネコ「(頭を押さえて。)いてっ・・・!!(正面を向く。老ネコ
に気付いたように。)何すんだよ、じじい!!」
老ネコ、一番ネコ、其々正面に相手が
いるような芝居。
老ネコ「その袋を子猫に返してやるんじゃ。」
一番ネコ「いやだね!!」
老ネコ「そんな小さな子猫を苛めてどうするんじゃ。格好悪いの
ぉ。(笑う。)」
一番ネコ「うるせぇ!!俺は腹が減ってんだ!!じじぃになんと
言われようと、俺はこの袋の中のご馳走で、腹一杯に
なるんだ!!」
老ネコ「おまえ、腹が減っておるのか?」
一番ネコ「・・・ああ!!そう言ってるだろ・・・!!」
老ネコ「それじゃあ、わしについて来い。腹一杯飯を食わせてや
るぞ。」
一番ネコ「・・・え?」
老ネコ「何驚いたような顔をしとるんじゃ。さぁ、そいつを子猫に
返して、一緒に来なさい。」
一番ネコ「・・・じじぃ、からかってるのか!?」
老ネコ「(笑う。)何もからかっちゃおらんよ。もし嘘じゃったら・・・
(ポケットから金貨を取り出して見せるように。)この金貨
を1枚、おまえにやろう。」
一番ネコ「(呆然とする。)・・・本物の金貨だ・・・」
老ネコ「さぁ、年寄りの好意は素直に受けるもんじゃぞ。(微笑む
。)」
一番ネコ「・・・(ゆっくり頷いて、袋を横の子猫の渡す。再び正面
を向いて、上目使いに相手を見るように。照れ臭そう
に微笑む。)」
上手スポット、フェード・アウト。
――――― “ねこの村は大騒ぎ”2へつづく ―――――
(どら余談^^;)
今日は、またまた朝からインターネットがつながらず・・・
先月修理してもらったばかりで可笑しいなぁ・・・と思いながら、
先月のようなことになっては・・・と早めに再び故障ダイヤル
に電話して調べて頂いたところ、なんと今回はマンション自体
の・・・なんでしょうか・・・機械?が故障してて、マンション全戸
の電話回線が不通だと言うことが判明・・・(ーー;)
お昼から修理に来て頂き、無事、事なきを得ました(>_<)
よかった~・・・(・。・;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(おまけフォト^^;)
今日の小学校公演で、開演前に出番待ちして
いるお人形達です♪
向こうの方に、クリフくんの姿も見えます。
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
ローズ「(一瞬、呆然とジェフを見詰める。嬉しそうに微笑んで。)
・・・その昔・・・遠い遠いお伽の国に、ある女の子がお父
さんとお母さんと仲良く暮らしていました・・・。おうちは決
して裕福ではなく、一つのパンを3人で分けるような食事
しかできませんでしたが、いつも笑い声に満ち溢れ、それ
はそれは小さな家から、その愛情が食み出さんばかりの
温かい家庭で、女の子はとても幸せに暮らしていました。
ある年の12月・・・秋の精に、雪が降ると、冬の精が現れ
自分は消えてしまうからと、雪を降らせる力を持ったサン
タクロースは、秋の精にその力を封印されてしまい、その
年は雪に恵まれませんでした。毎年、雪を楽しみにしてい
た女の子は、いつも外に出ては空を見上げ、雪はどうし
たのだろう・・・クリスマスには降ってくれるかしら・・・と考
えていました。雪が降らないままのクリスマスイブの日・・・
いつものように郵便配達に出たお父さんは、村の雑貨屋
さんで、一握りの雪の結晶のような金平糖を、女の子へ
のクリスマスプレゼントに買い求め、もう暗くなった帰り道
を、我が家へと急ぎました。しかし岐路を急ぎ過ぎた為に
、お父さんはうっかり足を滑らせて、崖から落ちて死んで
しまったのです。女の子とお母さんは、お父さんが亡くなっ
たことは知らないで、この日の為にいつもはパン一切れ
で我慢して用意した、クリスマスのささやかなご馳走を前
に、いつまでも、いつまでもお父さんの帰りを待ちました。
天国へ行く途中、お父さんは空からそんな2人の様子を
知り、なんとかして2人に力強く生きる勇気を与えたいと
考えました。そこでお父さんは神様に最後に2人と一分
間だけ、お別れを言う時間を貰えるようにお願いをして、
2人の前へ現れました。お父さんは涙に暮れる2人を前
に、優しく微笑んで、いつまでもいつまでも2人を彼方から
見守っているから、悲しまなくてもいいんだよ・・・心はいつ
も3人一緒だと言い残し、光に包まれました。そうして天国
へ行ったお父さんは、女の子にクリスマスプレゼントを渡
すのを忘れていたことに気付き、女の子のもとへ届けたい
と握っていた金平糖を、空からばら撒きました。その時、
それを見ていたサンタクロースは、全身全霊の思いと願
いを込めて、秋の精の封印を解き放し、やっと雪を降らせ
ることができたのです。それを見た女の子は、涙で濡れ
ていた瞳を拭い、思わず両手を広げ天を仰ぎました。す
ると、トナカイに乗ったサンタクロースが、女の子の前へ
現われ“お父さんからのプレゼントだよ”と、金平糖を手
渡してくれたのです。雪と金平糖の思いがけないプレゼ
ントを貰った女の子は、空に向かって叫びました。“メリ
ークリスマス!!”そして女の子は心に固く誓ったのです。
もう泣かないからね・・・おしまい・・・。」 ※
ジェフ「(思わず拍手する。)いい話しだね・・・。サンタクロースの
贈り物か・・・。(空を見上げて。)雪・・・降るといいな・・・。」
そこへ下手よりスザンヌ、誰かを捜すように
登場。ジェフを認め駆け寄る。
スザンヌ「ジェフ!!こんなところにいたの!?皆捜してたわよ
、会議が始められないって!!」
ジェフ「仕舞った・・・」
スザンヌ「(ローズを認め、怪訝そうに。)誰だか知らないけど、
ジェフにこんなところで油売らせないでよね!!」
ローズ「ごめんなさい・・・」
ジェフ「よせよ、スザンヌ!!俺が勝手に息抜きしてただけなん
だ!!じゃあローズ、また今度ゆっくり話そう!!」
ジェフ、下手へ走り去る。
スザンヌ、ローズを睨み、ジェフに続いて
去る。
ローズ、2人が出て行った方を見ている。
スポットに浮かび上がる。(カーテン閉まる。)
ローズ、呟くように歌う。
“何故かしら・・・
心にポッカリ穴が開いたよう・・・
風のように連れ去った
あなたを思って心が痛い・・・
何故かしら・・・
こんな思いは初めてで・・・
ただとても切なくて
あなたがいなくなった今・・・
あなたにとても会いたくて・・・
ついさっきまで側にいた
あなたの温もりが
とてもとても懐かしい・・・
遠い昔に会ったような
そんな思いが溢れかえる・・・
もしかしたら
これが恋なのかしら・・・
これが愛なのかしら・・・
もしかしたら
あなたに恋したのかしら・・・
あなたを愛したのかしら・・・”
フェード・アウト。
――――― 第 5 場 ―――――
フェード・インする。(カーテン開く。)と、
中央よりに一つのベンチ。下手より、
スザンヌ、ニック、話しながら登場。
上手方へ。
スザンヌ「一体誰なのかしら、あの女!!“また今度ゆっくり話
そう”だなんて!!この間のクラス会で彼氏が一緒じ
ゃなかったのは、結局私一人!!けど、どんな男だっ
て誰一人ジェフに勝る人はいなかったって言うのに!
!あの時、ジェフが一緒に来てくれさえしていれば、私
は皆から羨望の眼差しで見られたのは、間違いなかっ
たのよ!!」
ニック「(スザンヌの話しは上の空のように、一枚の写真を胸に
抱き。)愛しい愛しい君は、僕の者!」
スザンヌ「(振り返ってニックを見る。)ちょっと聞いてるの、お兄
さん!!」
ニック「え・・・?ああ、聞いてるよ。おまえがまたジェフに振られ
たって話しだろ?」
スザンヌ「違うわよ!!あの“ローズ”とかって言う女のこと!!
」
ニック「“ローズ”?僕のローズと同じ名前だとは許せないな。」
スザンヌ「(ニックの持っていた写真を取り上げて。)どのローズ
よ!!」
ニック「やめろよ、スザンヌ!!」
スザンヌ「(写真を見て。)・・・この女・・・この女が私の言ってた
ローズよ!!」
ニック「・・・嘘だ・・・」
スザンヌ「本当よ!!(写真をニックへ差し出す。)」
ニック「ローズは付き合ってる人はいないって・・・」
スザンヌ「一体何時の話ししてるの、兄さん!!確かにあの時
ジェフとその女は親しげだったのよ!!」
ニック「そんな・・・」
スザンヌ「お兄さんが愚図愚図してるから、横取りされるのよ!
!」
ニック「どうしよう、スザンヌ・・・!!」
スザンヌ「どうしようなんて言ってないで、さっさと行動あるのみ
よ!!」
スザンヌ、ニックに訴えるように歌う。
“本当に好きなら奪いなさい!!
恋は駆け引き
情けは無用
愚図愚図してたら捕まらない!!”
ニック「だけど・・・」
“だけどなんて言ってると
何時まで経っても今のまま
ずっと不安で心配で
その内相手は
指の間を擦り抜ける!!”
ニック「そうか!」
スザンヌ「そうよ!男なら強引に行かなくちゃ!!私だって、ジ
ェフのこと諦めたりしないんだから!!」
ニック「そうとなれば、善は急げ!!」
スザンヌ「(大きく頷く。)」
スザンヌ、ニック、上手へ急ぎ足で去る。
入れ代わるように、下手よりジェフとジョーイ、
話しながら登場。
ジョーイ「チョコレート、ありがとう!!すっごく美味かったよ!!
俺、あんなの食べたことないや・・・。」
ジェフ「そうか、良かったな。」
ジョーイ「それが姉ちゃんと一緒に食べようと思って、そう言った
ら姉ちゃん、甘いもの嫌いなんだってさ。長いこと隣に住
んでたけど、知らなかったなぁ・・・。」
ジェフ「(何か思い出したように微笑む。)おまえとローズって・・・
本当の姉弟以上にお互いを大切に思っているのがよく分
かったよ・・・。」
ジョーイ「え?俺はどうか分かんないけど、姉ちゃんは俺にはす
っごく優しいんだ・・・。よく父ちゃんに締め出されて泣い
てる時、姉ちゃんは何時も一緒にいてくれたんだ・・・。
雨の時でも、雪が降って寒くて凍えそうな時でも・・・。姉
ちゃんが初めて働きに出て、給料貰った時も、一杯ご馳
走してもらったんだぜ!あの頃の俺は、ろくすっぽ食べ
させてもらってなかったから、すっごく嬉しかった・・・。俺
、姉ちゃんの為だったら何だってする!!そう決めてる
んだ!」
ジェフ「・・・そうか・・・」
ジョーイ「俺、姉ちゃんの彼氏になる奴は、ちょっとやそっとの奴
じゃ許さないんだ!姉ちゃんを心から大切にしてくれて、
愛してくれる奴・・・。そう言う奴が現れない限り、俺が姉
ちゃん守って行く!!(チラッとジェフを見て。)そう思っ
て頑張ってくのも、もうちょっとの間かな・・・?(急に真面
目な顔付きになって。)兄ちゃん・・・この間、靴磨きに一
緒に来た、兄ちゃんの隣にいた男の人・・・兄ちゃんの友
達かい・・・?」
ジェフ「ああ、フレッドなら学生時代から苦楽を共にしてきた親友
さ。」
ジョーイ「・・・そうか・・・」
ジェフ「あいつが何か・・・?」
ジョーイ「・・・兄ちゃんにとって、大切な人なんだ・・・。そんな人
のこと、俺がどうこう言うのはどうかと思うんだけど・・・」
ジェフ「・・・どうした?」
ジョーイ「・・・俺・・・見たんだ・・・」
ジェフ「見たって・・・何を・・・?」
ジョーイ「覚えてるだろ・・・?ここで初めて俺が兄ちゃんと出会
った時のこと・・・」
ジェフ「ああ・・・」
ジョーイ「俺・・・あの夜、殺人を目撃したんだ!!それで追われ
てた・・・」
ジェフ「・・・何だって・・・?」
ジョーイ「たまたまあの日に限って、裏通りを抜けて帰ろうとした
ら偶然・・・。何人かいた黒尽くめの男達の中に・・・間違
いない・・・あの時の人がいたんだ!!」
ジェフ「まさか・・・」
ジョーイ「本当なんだ!!俺、頭悪いけど目だけは確かなんだ
!!信じてくれよ、兄ちゃん!!俺、嘘は言わない・・・
!!兄ちゃんの友達なら悪い人じゃないかも知れない
・・・。だからひょっとしたら見間違いかも知れないし、た
またま居合わせただけかも知れない・・・。けど、俺あい
つらに顔見られてるんだ!!何時かきっと殺される!!
だからその前に・・・!!」
ジェフ「おい!!落ち着けよ・・・。分かったよ。おまえがそこまで
言うんだ・・・。他人の空似だってこともあるだろう。一度、
確かめてみるから心配するな。いいな?」
ジョーイ「・・・うん・・・」
ジェフ、ジョーイ、何か話している風に。
その時、上手より何か揉めているように、
ニック、ローズ登場。
ニック「(ローズに纏わり付くように。)ねぇ、いいだろ?これから
僕ん家に来てくれよ。」
ローズ「困ります・・・あの・・・」
ニック「そんなこと言わずに、店に行くまでまだもう少し時間があ
るじゃない!折角、ローズの為に美味しいクッキー焼いた
んだ!」
ローズ「でも・・・」
ニック「(思わずローズの腕を掴んで引っ張るように。)ねぇ、お
いでよ!!」
ローズ「離して・・・」
ジョーイ、ローズに気付き、驚いて駆け寄る。
ジョーイ「姉ちゃん!!」
ジェフ、気付いてジョーイに続く。
ジョーイ、ニックに殴りかかり、
2人喧嘩になる。
ローズ「ジョーイ!!」
ニック「この餓鬼!!」
ジョーイ「姉ちゃんに何すんだ!!」
ジェフ「(慌てて2人に駆け寄り、止めに入る。)やめろ!!やめ
るんだ!!」
2人、ジェフの制止に離れて、息も
荒々しく睨み合う。
ジョーイ「兄ちゃん、放っといてくれよ!!こいつは一度叩きの
めしてやんなきゃならないんだ!!」
ニック「偉そうに!!」
ジョーイ「なんだと!!」
ジェフ「(ジョーイを押さえて。)やめろ、ジョーイ!!」
ニック「糞う・・・もう少しだったのに、余計なところへ出て来やが
って・・・!!」
ジョーイ「何がもう少しなんだよ!!」
ニック「関係ないね!!」
ジェフ「(ニックに向いて。)おまえも子ども相手に恥ずかしくない
のか?」
ニック「全然!!(何か気付いたように。)ははぁ・・・、おまえが
ジェフだな・・・?おまえが代わりにやるか!!(ジェフに
殴りかかる。)」
ジェフ、サッと避け、ニックの腕を掴む。
ニック「いててて・・・」
ジェフ「怪我しないうちにやめるんだな。」
ニック「離せ・・・!!離しやがれ!!」
ジェフ「(ニックの腕を離して。)自慢じゃないが、俺は柔道3段
空手3段なんだ。(ニヤリとして指を鳴らすように。)」
ニック「(呆然とジェフを見詰める。後退りしながら。)え・・・3・・・
あ・・・いや・・・(作り笑いして。)・・・冗談だろ・・・いやだな
・・・(大分離れて。)畜生!!覚えとけ!!馬鹿野郎!!
」
ニック、上手へ走り去る。
ジェフ「・・・子どもみたいな奴だな・・・。」
ジョーイ「・・・凄い・・・兄ちゃん・・・柔道空手3段って・・・」
ジェフ「ばーか、冗談だよ。腕力に自信なくはないけど、柔道空
手なんてやったこともないさ。(笑う。)」
ジョーイ「・・・なーんだ・・・。(思わず笑う。ハッとしてローズを見
る。)姉ちゃん、大丈夫だったか!?」
ローズ「(頷く。声を上擦らせて。)・・・ありがと・・・」
ジョーイ「姉ちゃん・・・?」
ジェフ「ローズ?」
ローズ「・・・大丈夫・・・(言い聞かせるように。)大丈夫・・・(思わ
ず泣き出す。)」
ジョーイ「姉ちゃん!?(慌てて。)」
ジェフ「(優しく微笑んで、ローズをそっと抱き寄せる。)もう、大
丈夫だから・・・。」
ローズ、一瞬驚いた面持ちをするが、
安心したように微笑む。
――――― “ジェフ・カート”4へつづく ―――――
※ すみません~・・・(>_<)
ものすごーく読み難いですよね~(-_-;)
私も書き写しながら、今どこら辺を書いてるのか何回も
分からなくなりました~^_^;
後で読み直してみて、抜けている言葉があったことに
気付いて入れなおしたのですが・・・大変でした(@_@)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(おまけフォト^^;)
ちょっとピンボケぎみですが・・・^_^;
11月の記念公演チラシ(失敗^^;)です(^^)v
必要に迫られて慌てて作った為、字体が変換され
ていたことに気付かず印刷してしまいました"^_^"
失敗ですが、折角なのでご覧下さい(*^_^*)
成功は、そのうち“公演お知らせ”のページにて・・・。
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
うらら一寸前へ。(男達下がる。)
うらら「松太郎・・・」
松太郎、松の木の後ろから登場。
ゆっくり前方へ。
松太郎「うらら・・・。」
うらら「(松太郎を認めて。)松太郎!!急にいなくなるから心配
したじゃない!!」
松太郎「ごめん・・・」
うらら「それより大変よ!!この松の木が明日、切り倒されるん
だって・・・!!」
松太郎「知ってる・・・」
うらら「え・・・?」
松太郎「僕も今の話し・・・聞いてたから・・・」
うらら「でも・・・どこで・・・」
松太郎「・・・うらら・・・驚かないで僕の話しを聞いて欲しい・・・」
うらら「松太郎・・・」
松太郎「・・・僕は・・・人間じゃないんだ・・・」
うらら「・・・人間じゃない・・・?」
松太郎「(頷く。)僕は・・・君の前の家の庭にあった・・・松の木の
精霊なんだよ・・・」
うらら「・・・嘘・・・」
松太郎「(首を振る。)嘘じゃない・・・。だから、僕は君以外の人
には見えないんだ・・・。」
うらら「・・・あ・・・だからあの人達・・・」
松太郎「うん・・・。僕は君の前の家で、いつも君の成長を見てい
た・・・。いつも君が明るく笑う、その声を聞くだけで、僕
は幸せだったんだ・・・。それがある日突然・・・うららが引
越したと聞いて、僕はもう二度と君には会えないのかと、
とても悲しんだんだ・・・。」
うらら「松太郎・・・」
松太郎「自分の涙で・・・僕自身が枯れてしまうんじゃないかと
思う程に・・・。そんな風に泣く僕を見かねて、松の木の
精霊の主が、僕を君の側へ・・・君と同じ姿へと変えて、
寄越してくれたんだよ・・・。ただし・・・期限付きで・・・」
うらら「・・・期限・・・って・・・」
松太郎「夏休みの間だけ・・・君の・・・君だけの友達として・・・」
うらら「夏休みが終わったら・・・」
松太郎「夏休み最後の日・・・また僕は・・・僕の本当の体へと帰
るんだ・・・。」
うらら「・・・前の家の松の木へ・・・帰るってこと・・・?」
松太郎「うん・・・。でも僕はこの一夏、君と一緒に過ごした思い
出を胸に・・・これからもあの懐かしい場所で・・・生きて
いける・・・。」
うらら「いや・・・そんなのいやよ・・・(泣く。)」
松太郎「でも聞いて、うらら。ここからが本当に大切なことなんだ
。」
うらら「(松太郎を見る。)」
松太郎「僕は今、自分の体から離れてこの松の木の体を仮の
宿として、ここに存在出来ているんだ・・・。」
うらら「仮の・・・宿・・・?」
松太郎「(頷く。)夏休みの間、この松の木こそ僕そのものなん
だよ。だから夏休みが終わるまでに、もしこの仮の宿と
してる松の木が、倒れたり枯れたりするようなことがあ
れば、僕はもう自分の体に戻ることは出来ない・・・」
うらら「・・・え・・・?じゃあ、松太郎は・・・」
松太郎「この世から存在が消えてなくなるんだ・・・」
うらら「駄目よ!!」
松太郎「だからなんとか後少し・・・夏休みが終わるまで、この松
の木を守って欲しい・・・!!」
うらら「松太郎・・・分かった・・・分かったわ!!」
音楽流れ、うらら歌う。
“私が守る大切なもの
私に任せて
必ず助けるわ”
松太郎歌う。
“君に任せる僕の命
君の思い出と共に
生きる為”
うらら歌う。
“出会えた奇跡が
再び奇跡を
起こすわ必ず
だから信じて
あなたを守るわ”
松太郎「ありがとう!!」
松太郎、うらら下がる。
一時置いて、上手より男達、下手より
子ども達登場。
男1「(子ども達を認めて。)こらこら、今日からここは立ち入り禁
止だぞ。」
ケン「立ち入り禁止・・・?」
男2「ああ、そうさ。」
男3「今からこの松の木の伐採作業をするんだ。危険だから早
く出て行きなさい。」
少年2「えーっ!!この木、切られちゃうの?」
ケン「何でだよー!!」
男1「ここには、大きなマンションが建つんだよ。」
少年3「そしたらもうここで遊べないの!?」
男2「そう言うことだな。」
男3「さあ、おしゃべりしてないで、さっさと出て行くんだ。」
少年2「ちぇっ・・・また俺らの遊び場所が減るのかよ・・・。」
少女1「この松の木・・・可哀想・・・」
ケン「うん・・・」
子ども達、松の木を気にしながら、下手方へ
行きかける。(男達、工具類を取り出し、伐採
の準備を始めている。)
その時、下手よりうらら、走り登場。
うらら「待って!!」
少女1「あなた・・・」
ケン「誰?」
少女1「ほら、隣のクラスに新学期早々転校して来た・・・」
少年2「ああ・・・そう言えば・・・」
うらら「待って!!待って頂戴!!この松の木を切ったりしない
で!!」
男1「え・・・?」
男2「君は昨日の・・・」
うらら「お願い!!こんな立派に大きくなった木よ!!それを、
マンションを建てる為に切り倒すなんて止めて!!」
男1「(笑う。)昨日も言ったけどねぇ、君・・・。この木の伐採は
もうとっくの前から決まってたことなんだよ。今さら何があっ
たって、それを止めることなんて出来ない話しなんだ。」
音楽流れ、うらら歌う。
“お願い
この木を切らないで
命の源だから
こんなに大きく
今まで育った
そんな風に簡単に
切るなんて言わないで!!”
男3「そう言われてもねぇ・・・」
うららに感化されるように、子ども達
お互いに顔を見合わせ歌う。
“そうだよ・・・
僕らが生まれる
前からこの場所で
長い時を
過ごした筈だよ”
うらら、子ども達歌う。
“お願い
この木も生きてる
長い時を
人間がその是非を決めること
出来る筈ない
皆もこの木と
同じに生きてる
誰にもそのこと
止める権利ない”
うらら「だからお願いします!!どうか・・・どうかこの木を切らな
いで・・・!!」
男達、困ったようにお互い顔を見合わせ、
何か話したりしている。
ケン「おまえ・・・勇気あるな・・・。」
うらら「え・・・?」
少年2「俺達の遊び場だった松の木・・・」
少年3「うん・・・小さい頃はよく、この木に登ったり・・・いっつも俺
達皆で、この木の周りに集まって、遊んでたっけ・・・」
少年2「この広い野原で走り回っている時も、この木はいつも俺
達の砦だった・・・。」
ケン「・・・そうだよ・・・おじさん!!この木を切り倒すのなんて止
めて!!」
少年2「お願いだよ!!」
うらら「せめて・・・せめて何処か他の場所へ・・・」
男2「他の場所・・・ったってなぁ・・・」
男1「・・・あ・・・そうだ・・・おい!(他の男達に耳打ちする。)」
男3「ああ・・・そうか、あそこなら・・・」
男1「よーし、分かった!!そんなに言うならこの木を切らずに
おいてやろう!!」
うらら「え・・・?本当に・・・?」
男1「ああ、本当だとも!」
子ども達「(其々顔を見合わせて。)やったーっ!!」
男2「俺達だって、樹齢何百年ものこんなご神木を、切っちまう
なんて出来れば勘弁願いたいからな。」
男3「ただし・・・この場所からは移動してもらうよ。」
うらら「え・・・?」
男1「君も言っただろ?何処か他の場所って。」
男2「川沿いの桜並木の端っこに、植え直してやるよ。」
子ども達「わあーっ・・・!!」
うらら「(嬉しそうに微笑んで。)ありがとう!!おじさん達!!」
ケン「よかったな!(うららの肩に手を掛ける。)」
うらら「うん!!」
少年2「やったな!!」
子ども達、うららの回りに集まって、
喜び合う。
男1「さぁ、じゃあ早速準備にかかるか!!」
男2、3「ああ!!」
うらら残して、子ども達、男達下がる。
そこへ上手より、松太郎登場。
うららの側へ。
松太郎「うらら・・・」
うらら「(松太郎を認め。)松太郎!!」
松太郎「ありがとう・・・」
うらら「(首を振る。)ううん・・・。これで松太郎は消えてなくなら
ないわね!!」
松太郎「・・・うん・・・(心持ち淋しそうに。)」
うらら「夏休みが終わるまで思いっきり・・・!!・・・どうしたの・・・
?」
松太郎「うん・・・あのね・・・うらら・・・僕・・・」
うらら「何・・・?」
松太郎「・・・この木が移動させられる前に・・・元の体へ戻らなけ
ればいけないんだ・・・」
うらら「・・・移動させられる前に・・・って・・・」
松太郎「夏休みが終わる前に・・・うららとお別れしなくちゃいけ
ないってことなんだ・・・」
うらら「・・・嘘・・・」
松太郎「もう・・・時間がない・・・」
うらら「時間がないって・・・」
松太郎「もう、この木の移動が始まる・・・。僕は行かなくちゃ・・・
」
うらら「・・・嫌・・・どうして・・・!?この木があれば、松太郎は夏
休みが終わるまでここにいることができるんでしょ!?そ
の後は私がもう一度、松の木の主にお願いして・・・」
松太郎「(首を振る。)この木が今ある・・・この場所が・・・僕の仮
の居所だったんだよ・・・。だから・・・どこか別の場所へ
行くと言うことは、僕の引越しも終わりなんだ・・・。」
うらら「嫌よ・・・行かないで・・・行かないで、松太郎!!(泣く。)
」
松太郎「泣かないでうらら・・・。もううららには新しい友達もでき
た・・・。僕がいなくても君は淋しくなんかないよ。」
うらら「あなたは特別よ!!」
松太郎「僕の姿は見えなくても・・・心はいつも君といる・・・。だ
から会いたくなったら、僕を感じて・・・」
うらら「松太郎・・・」
音楽流れ、松太郎歌う。
“優しい風 温かな気持ち
僕はいつでも君の側に・・・
姿は見えなくても
心は君と共にいるよ
だから悲しくなんかない
君と過ごしたこの夏が
僕の心を満たすよ
いつまでも・・・
だから君も新しい
出会いに思いを馳せてごらん・・・
新しい未来を見詰め
歩いてごらん・・・
僕も必ず・・・
君の側に・・・”
うらら「松太郎・・・」
松太郎、松の木下がる。
うらら歌う。
“あなたと過ごした夢のような
素敵な思いに溢れ返る
優しい思いが私を包む・・・
いつも側にあなたがいるわ
だから忘れない
いつまでもあなたのこと・・・
目の前に続いて行く道
心にあなたを感じている
だから忘れない・・・
きっと必ず・・・
私の側に・・・”
うらら「松太郎・・・ありがとうー!!」
明るい音楽に変わり、下手上手より子ども達
飛び出すように登場。
ケン「うららー!!」
少年2「うららー!!」
ケン「何してんだよ!!」
うらら「皆・・・」
少女1「私達と遊びましょう!!」
うらら「うん!!」
子ども達歌う。
“気付こうとしなければ
気付かないこと沢山ある
けどほんの少し横を向けば
見詰める仲間がそこにいる
誰もが皆友達だ
ほんの少し手を出して
掴めば仲間だいつだって”
うららの声「松太郎・・・あなたがいたから、また私は新しい場所
で新しい友達と歩いて行けるのよ・・・。私に会いに
来てくれて・・・本当にありがとう・・・!!」
ケン「ご神木の松の木でも見に行ってみるか!!」
少年2「ようし・・・じゃあ川沿いまで競争だぞ!!」
少年3「わーい!!」
子ども達、歓声を上げ、下手へ走り去る。
うらら「あっ、待って・・・待ってよー!!(下手へ行きかける。)」
その時、一風が吹き抜ける。
声「うらら・・・」
うらら「(立ち止まり、回りを見回す。)松太郎・・・?」
ケンの声「うららー!!早く来いよー!!」
うらら「(下手方を見て。)うん!!(微笑んで。)松太郎・・・あな
たも一緒に行きましょう!!」
うらら、下手へ走り去る。
音楽盛り上がり
――――― 幕 ―――――
それでは次回掲載作品のご案内ですが・・・
次回は、前回お知らせしていた通り、“ネコ吉”“ミータ”
の若かりし頃のお話しをご覧頂きたいと思います(^^)v
・・・と言っても、実は新作ではなく・・・ファミリーミュージカル
脚本を書かせて頂きだした頃に書いたお話しで、名前を
たまたま最近書いていた猫達に変更して、紹介しようかな
・・・と思いついた、新旧合作作品とでも言いましょうか・・・
そちらをご覧頂きたいと思います^_^;
「ねこの村は大騒ぎ」(読み直してみたのですが、大騒ぎと
言うより、ねこ達のちょっとした友情物語になっています。)
お楽しみに♪
どら。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
読みは“しょうたろう”ですが、書くときはずっと“まつたろう”
と打っていました~(^_^;)
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta