ジェフ「あ・・・おい、次って・・・!!」
フレッド「相変わらず女性に対して、そう言う曖昧な態度をとる
から、相手は皆勘違いしてしまうんだよ。」
ジェフ「別にそう言うつもりは・・・」
フレッド「おまえと長いこと付き合ってる俺くらいになれば、おま
えの言葉は、優柔不断でも好い加減でもなくて、心底、
優しさからでた言葉だと分かるけど・・・。外見だけ見て、
おまえに寄ってくる女達にしてみれば、それは単なる罪
な言葉にしかならないぜ。」
フレッド、語りかけるように歌う。
“昔からそうだった
おまえの優しさは
女性にしてみればただの罪
撥ね退けることを知らない
なんでも少しの暇を見つけて
OKしてしまう”
ジェフ、答えるように歌う。
“自分に出来ることは
可能な限り力を貸したい
したくないとか できないとか
やってみなけりゃ分からない
それが単なる好い加減と
言い放たれても仕方ない”
フレッド、歌う。
“俺にはそれがいいことか
悪いことかは分からない
ただその偽りの
言葉であったとしても
聞いた者はほんの少しの
期待と勇気を与えられ
夢を持つのは本当のこと”
2人歌う。
“それが罪なのか
俺達には分からないこと・・・
時々ふと彼方を見遣る・・・”
音楽でフェード・アウト。
――――― 第 3 場 ―――――
(カーテン開く。)
車の行き交う音、人々の雑踏が聞こえる中、
フェード・インする。
(音は段々遠ざかる。)
下手よりローズ、ジョーイ、話しながら登場。
ジョーイ「この間、俺が帰った後、あの兄ちゃんと何話したんだ
い?(嬉しそうに。)」
ローズ「別に何も話してないわよ。」
ジョーイ「へぇ・・・その割りに、ゆっくり帰って来たじゃないか。」
ローズ「いやね、聞いてたの?」
ジョーイ「聞いてたんじゃないやい。聞こえてきたんだよ、姉ちゃ
んが嬉しそうに歌なんか口ずさんで、階段上ってくるの
がさ。」
ローズ「煩かった?ごめんなさい。」
ジョーイ「謝んなくったっていいさ。姉ちゃんの綺麗な歌声くらい
聞き耳立てて聞く奴がいたって、耳塞ぐ奴はいないよ。
俺ん家の怒鳴り声に比べりゃ・・・。で?兄ちゃんと何の
話ししてきたんだい?歌うたいたくなるようないいこと、
あったんだろ?キスくらいした?」
ローズ「ジョーイ!!」
ジョーイ「(悪戯っ子のように、舌を出す。)」
ローズ「・・・ジョーイがね・・・いい子で嬉しかったのよ。」
ジョーイ「え・・・?俺が?(笑う。)冗談ばっかり!いいよ、もう聞
かないから。あの日のことは、姉ちゃんの胸の中に仕舞
っときなよ。」
その時、上手よりローズに想いを寄せる
青年(ニック)登場。ローズを認め、近寄る。
ニック「やぁローズ、おはよう!」
ローズ「おはよう、ニック・・・。」
ジョーイ、ニックを見据える。
ニック「今日もまた一段と綺麗だなぁ・・・。花柄のワンピースが
よく似合ってて、僕の為に着てきてくれたのかなぁ?嬉し
いなぁ。さぁ早く店へ行こう!今ならまだ他の奴らは誰も
来てないから、2人でゆっくり語り合おうよ。(ローズの肩
に手を掛ける。)」
ローズ「あの・・・私、寄るところがあって・・・」
ニック「早く行こうぜ!」
ジョーイ「(ニックを見据えたまま。)野郎!!姉ちゃんから汚い
手を退けな!!」
ニック「何だ!?(ジョーイを睨んで見る。)・・・誰かと思えば・・・
ジョーイ坊やじゃあないか。坊やはさっさと靴磨きに行っ
て、せっせと働きな!安い儲けを得る為にな!!」
ジョーイ「何だと・・・!!おまえの方こそ!!(思わず手に持っ
ていた荷物を落として、ニックに殴りかかる。)」
ニック、サッと避けて、反対にジョーイの
頬を一発殴る。
ジョーイ、思わずよろけて膝をつく。
ローズ「止めて!!」
ジョーイ「(頬を押さえて。)糞う・・・!!」
ローズ「(ジョーイに駆け寄って。)大丈夫!?(ニックを睨む。)
私、乱暴する人は嫌いよ!!先に行って頂戴、ニック!!
」
ニック「今のはこいつが先に手を出したんだからな。ま、ローズ
に免じて今日のところは、これくらいで勘弁しといてやる
ぜ!今度また、俺に同じような口を聞いたら、一発くらい
じゃ済まないぜ!!じゃあローズ、先に行って待ってるか
らさ、早く来てくれよ!」
ニック、下手へ去る。ジョーイ立ち上がる。
ローズ「(ジョーイの頬を見て。)大丈夫だった?ごめんなさいね
・・・。(思わず涙ぐむ。)」
ジョーイ「(無理に笑って。)いやだな、姉ちゃん・・・。泣くなよ、こ
んなことくらいで・・・。俺は殴られ慣れてるから、こんな
の全然、平気なんだぜ。あいつの方が殴り損してんだか
ら・・・」
ローズ「ジョーイ・・・」
ジョーイ「(真面目な顔をして。)それより姉ちゃん・・・店、代わり
なよ・・・。あんないやな野郎と同じところで働くことない
よ!!いくら店長が姉ちゃんの知り合いだからって・・・
!!」
ローズ「心配してくれてありがとう・・・。」
ジョーイ「本当にだぜ、姉ちゃん!!真剣に違うとこ考えてみな
よ!!何なら、俺も一緒に探してやるからさ!!」
ローズ「(黙って微笑んで頷く。)ジョーイの方が、お兄さんみた
いね・・・。(チラッと時計を見て。)じゃあ私そろそろ行くね
・・・。店長に買い物頼まれてるから・・・。」
ジョーイ「・・・うん・・・。」
ローズ、手を振って上手方へ行く。
ジョーイ「気を付けろよ!!」
ローズ「(振り返って微笑む。)ありがと・・・!」
ジョーイ、ローズが出て行くのを見ている。
出て行ったのを見計らって、落としたまま
になっていた折りたたみ椅子を広げ、それ
に腰を下ろして靴磨きの道具を出す。
そこへ下手よりジェフ、フレッド、話しながら
登場。
ジェフ「どの辺にいるのかね・・・。(周りを見回し、ジョーイを認
め嬉しそうに。)いたいた・・・」
フレッド「あの子ども?」
ジェフ「ああ。ひょんな切っ掛けで知り合ってさ・・・。」
2人、ジョーイの前へ。
ジョーイ、道具を広げながら、人が来た
気配に気付いて。
ジョーイ「いらっしゃい・・・。」
ジェフ「ジョーイ。」
ジョーイ「(顔を上げて、ジェフを認め嬉しそうに。)兄ちゃん!!
」
ジェフ「どこにいるのか捜したんだぜ。」
ジョーイ「その日の気分によって変わるんだ。(フレッドを認めて
。)その人・・・(ハッとしたように、驚いた面持ちをする。)
」
フレッド「(ジョーイの顔色に気付いて。)・・・こんにちは・・・。」
ジェフ「俺の同僚なんだ。」
ジョーイ「(下を向いて、顔を隠すように。)・・・こんにちは・・・。」
フレッド「じゃあ俺は先に行くから・・・。」
ジェフ「ああ。」
フレッド、足早に上手へ去る。
ジョーイ「(独り言のように。)・・・あいつだ・・・」
ジェフ「(足置きに足を掛けて。)頼もうかな?」
ジョーイ「あ・・・ああ、OK!ピカピカにしてやるよ・・・!!」
ジョーイ、歌を口ずさみながら、ジェフの
靴を磨き始める。
“おいらは町の靴磨き
おいらが磨けば
どんな靴でもピッカピカ
まっさら同様 見違える
安い料金 短い時間
ちょっと通り過ぎる間に
あっと言う間の靴磨き
おいらは町の靴磨き”
ジョーイ「はいよ、出来上がり!どうだい、綺麗になっただろ?」
ジェフ「ああ、ありがとう。(ポケットから金を出し、ジョーイに差し
出す。)これで足りるかな?」
ジョーイ「いらないよ。」
ジェフ「何言ってんだ、ほら!(ジョーイの手を取って、金を握ら
せようとする。)」
ジョーイ「(手を引っ込めて。)いらないったら!!この間、助け
てもらったお礼!!」
ジェフ「馬鹿。何もおまえから礼を貰おうなんて、思ってないさ。
(笑う。)」
ジョーイ「礼がしたいんだよ!!」
ジェフ「また父ちゃんに叱られるぞ!」
ジョーイ「いいんだよ!」
ジェフ「(金を無理に握らせて。)俺はこの金を払ったからって、
パンが食えなくなる訳でもないんだ。おまえは違うだろ?」
ジョーイ「だけど!!」
ジェフ「受け取らないんなら、もうここへは来れないな・・・。」
ジョーイ「(少し考えて。)・・・分かったよ・・・。仕方ないな・・・じゃ
あ貰っとくよ・・・。そのかわり、また来てくれよ兄ちゃん!
!」
ジェフ「ああ。じゃあまたな。」
ジェフ、手を上げて下手へ去る。
ジョーイ、嬉しそうに金を仕舞い、道具を
片付ける。そこへ上手より、そっとジョーイ
を窺うようにフレッド登場。
フレッド「・・・やっと・・・見つけたぞ・・・」
フレッド、スポットに浮かび上がり歌う。
ゆっくり下手方へ。(カーテン閉まる。)
“少しの良心
痛まぬでもないが
自分が生きる為ならば
多少の犠牲は仕方ない
たとえ何の罪もない
無垢で真っ白な者だとしても
この手が悪で染まり行く
影に脅え
眠れない日々を送り
たとえ眠りについたとしても
悪夢に脅かされるのは
過去に犯した罪の為・・・
未来に重ねる罪の為・・・
ただ今だけは安らかに眠りたい・・・
ただ眠りを得られる
その為だけに・・・!!”
音楽残してフェード・アウト。
――――― 第 4 場 ―――――
(カーテン開く。)
フェード・インする。下手奥より歌いながら
ゆっくりジェフ登場。
“何か少し変わったような・・・
思いは違いはしないけれど・・・
考え方の変化が心の変化と
見方が少し違っただけ・・・
過去を振り返る時に
後悔することはしたくないと・・・
ただそれだけを思い
歩き始めただけで
昨日までとは全く違う
自分の道が見え始めただけ・・・”
中央ジェフ、誰かを捜すように周りを見回す。
そこへ上手よりローズ登場、ジェフを認め、
嬉しそうに駆け寄る。
ローズ「こんにちは!」
ジェフ「(振り返ってローズを認める。)やぁ。」
ローズ「誰か捜してるんですか?」
ジェフ「ああ、ジョーイをね・・・。会社でいいものを貰ったんだ。
(スーツの内ポケットから包みを取り出す。)あいつに持っ
て行ってやろうと思って・・・。」
ローズ「何?」
ジェフ「チョコレートさ。よかったら君もどうだい?」
ローズ「わぁ、私もチョコレートは大好き・・・。ジョーイ、喜ぶわ、
きっと!!でも私はいいから、あの子にあげて下さい。」
ジェフ「(微笑んでローズを見る。)それにしても・・・何時もはこの
辺に・・・。今日はジョーイの奴、どうしたんだい?」
ローズ「今日はジョーイのお母さんの亡くなった日なんです・・・。
今日だけはあの子、仕事はお休みしてお母さんのお墓参
りに行ってるの・・・。」
ジェフ「そうなのか・・・。じゃあこれ、君からあいつに渡しといて
やってくれるかい?」
ローズ「(包みを受け取って。)ありがとうございます・・・。(頭を
下げる。)ジョーイのこと、気に掛けて下さってるのでしょ
う?」
ジェフ「・・・いや・・・」
ローズ「あの子、この間あなたが靴磨きに来てくれたって、とて
も喜んで私に話すんです・・・。何かあなたのことを、本当
のお兄さんのように感じてるみたいで・・・。あなたに貰っ
たお金は、お父さんに渡さないで、そっと自分の宝箱の中
に仕舞ってあるんだって言ってました・・・。」
ジェフ「そんな風に言われると、何だか恥ずかしいよ・・・。俺の
方があいつには色々と教えられることが多いのに・・・。」
ローズ「私もそう・・・。ジョーイのお陰で、どれ程力付けられてい
るか・・・。」
ジェフ「同じだな・・・。(笑う。)」
ローズ「(つられるように笑う。)ええ・・・。」
ジェフ「それより・・・今度は君の話しが聞きたいな・・・。(微笑む
。)」
ローズ「・・・え?」
ジェフ「“サンタクロースの贈り物”・・・聞かせてくれるかな・・・?
」 ※
――――― “ジェフ・カート”3へつづく ―――――
※ ここからローズさんの、と~っても長い“語り”に入り
ます^^;
・・・ので、ページを変えさせて頂きますね"^_^"
もし舞台で公演するならば、この語り場面はカーテン
後ろでシルエットのみの、物語の回想場面などにする
と、素敵な場面になるかも知れないですね(^.^)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
この作品も、以前どこぞの脚本でも書いたように、私が
大好きでよく読んだ小説に、随分影響された言葉使いを
多用しているのが見て取れます^_^;
この“お姉さん”と“少年”の遣り取りなんて、一番顕著に
現れた、その影響された言葉使い部分です(>_<)
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta