りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ねこの村は大騒ぎ” ―全6場― 完結編

2012年08月29日 18時23分23秒 | 未発表脚本


    ――――― 第 6 場 ――――― A

         客席下手より。シュワッチ、ミータ、ネコ吉、
         食いしん坊話しながら登場。
         ゆっくり上手方へ。

  シュワッチ「あのさ・・・僕が皆に貰った人形・・・何処へ置いたか
         知らないかい・・・?」
  ミータ「なぁに!?シュワッチ、私達の苦労の作を無くしちゃった
      の!?」
  シュワッチ「いや・・・あの・・・確かに自分家に持って帰ろうと思っ
         て、大切に持ってたんだ!!途中・・・ちょっとノドが
         乾いたから、川へ下りて水を飲もうと思ったんだけど、
         落としちゃ不味いから、人形を橋の袂に置いておい
         たんだ・・・。それが・・・上がって来た時には・・・」
  食いしん坊「川へ落ちたのかなぁ・・・?」
  ネコ吉「それなら水音で分かるだろ?」
  シュワッチ「大切な人形を落っことしたら大変だと思って、ちゃん
         と落ちそうにない橋の横穴に入れといたから、勝手
         に落っこちないよ・・・。」
  ミータ「じゃあ可笑しいじゃない。誰かが持って行っちゃったとで
      も言うの?」
  シュワッチ「そんな!!・・・だからひょっとして、持ってたっての
         は僕の思い過ごしだったのかな・・・って。何処かに
         忘れてきてやしないかと思って聞いたんだよ・・・。」
  食いしん坊「そうだね・・・。」
  ミータ「・・・思い過ごしなんかじゃないわ・・・!きっと誰かに盗ま
      れたのよ!!」
  シュワッチ「ミータ・・・?」
  ミータ「きっとあいつよ!!」
  ネコ吉「あいつ・・・って・・・?」

         ミータ、上手へ走り去る。

  シュワッチ「あ・・・おい!!」

         他のネコ達、ミータを追い掛けるように
         上手へ去る。
   
    ――――― 第 6 場 ――――― B

         舞台、フェード・インする。
         一時置いて、上手より後方を気にするように
         ノラ、手にシュワッチの木彫りの人形を持って、
         息を切らせながら下手よりに立ち止まって、手に
         持っていた人形を見詰める。

  ノラ「・・・畜生・・・こんな人形・・・!!(投げ付けようと持ち上げ
    るが、躊躇ったように。)」

         その時、上手よりボウネコ登場。
         ノラを認めて。

  ボウネコ「ノラ!!」

         ノラ、驚いて人形を落とす。慌てて拾うが、
         人形の首が取れているのに、困ったように
         オロオロする。後ろに隠して、ボウネコの
         方へ振り返る。

  ノラ「・・・やあ・・・」
  ボウネコ「何、落っことしたの?」
  ノラ「な・・・なんでもないさ・・・!!」
  ボウネコ「何?何?」
  ノラ「なんでもないって言ってるだろ!!おまえには関係ないん
     だから、早くあっちへ行けよ!!」
  ボウネコ「・・・ふうん・・・」

         ボウネコ、下手へゆっくり行きかける。
         ノラ、背後に人形を隠し持ったまま、
         ボウネコの動きに合わせて背を変える。
         ボウネコ、行く振りをして悪戯っぽく微笑んだ
         かと思うと、ノラの不意をついてその背後に
         回る。

  ノラ「(驚いて。)あ、おまえ!!」
  ボウネコ「(真顔になって。)それは・・・」
  ノラ「(観念したように、前に人形を出す。溜め息を吐いて。)バ
    レたか・・・」
  ボウネコ「・・・首が取れてる・・・」
  ノラ「仕方ないだろ・・・!!おまえが急に声をかけるから驚いて
    ・・・!!」
  ボウネコ「・・・なんでノラが、シュワッチの人形を持ってるの・・・
        ?盗んだの・・・?」
  ノラ「ちが・・・違うよ!!シュワッチが忘れてったから・・・持って
     ってやろうと・・・」
  ボウネコ「(ホッとしたように溜め息を吐いて。)なぁんだ・・・よか
       った・・・。そうだよね!!人のものを盗るのはよくないこ
       とだもの!ノラがそんなことする訳ないよね!ごめん・・・
       。」
  ノラ「・・・何、謝ってんだよ・・・」
  ボウネコ「だって、人形が壊れたの、僕のせいだもの・・・。一緒
        にシュワッチに謝りに行くよ・・・。」
  ノラ「う・・・うん・・・」

         ボウネコ、ノラ、ゆっくり下手方へ行きかける。
         と、下手より一番ネコ登場。一時、一番ネコ、
         ノラ、お互いを見据える。

  ボウネコ「あ!一番ネコ!」
  一番ネコ「2人で何処行くんだ?」
  ボウネコ「うん・・・シュワッチに謝りにね・・・。」
  一番ネコ「謝りに・・・?(ノラが手に持っている人形に気付く。)
        どうかしたのか?」
  ボウネコ「シュワッチが忘れてった人形を、ノラが届けようとして
        たのを、僕が壊しちゃったんだ・・・。ごめんよ、一番ネ
        コ・・・折角、一生懸命作ってくれたのに・・・」
  一番ネコ「そんなこと構わないさ・・・。ただ・・・本当にシュワッチ
        が忘れて行ったのかな・・・って・・・」
  ボウネコ「え・・・?」
  ノラ「・・・何が言いたいんだよ・・・」
  一番ネコ「あいつは人に貰ったものを、忘れるような奴じゃない
        ってことさ・・・」
  ノラ「俺が盗んだとでも言いたいのか、昔のおまえみたいに・・・
     ?」
  一番ネコ「なんだと・・・!?」
  ボウネコ「やめてよ、2人共!一番ネコ、ノラは人のものを盗ん
        だりしないよ!それにノラ、一番ネコはもう昔の一番
        ネコじゃないんだ!だから2人共、仲良くしてよ!」
  一番ネコ「ボウネコ・・・そうだな・・・。」
  ノラ「ふん・・・!」

         そこへ上手より、ミータ走りながら登場。
         続いてネコ吉、シュワッチ、食いしん坊、
         息を切らせて走り登場。

  ネコ吉「待って・・・!ミータ・・・」
  食いしん坊「(肩で息をしながら。)僕・・・もう、走れない・・・」
  ミータ「(ノラを認めて。)いた!!」
  一番ネコ「皆、どうしたんだよ、そんなに慌てて・・・」
  ミータ「(ノラが手に持っている人形に気付いて。)あ・・・!!やっ
      ぱり!!(人形を指差す。)」
  ノラ「やっぱり・・・って何がだよ・・・(思わず後ろに、人形を隠す。
     )」
  ミータ「やっぱり、あなたがその人形を盗んだのね!!」
  ボウネコ「違うよ!!ミータ!!この人形は、シュワッチが忘れ
       てったのを、ノラが届けてあげようとしてて・・・」
  ミータ「忘れてったですって?何処によ!!」
  ボウネコ「・・・何処に?えっと・・・何処で拾ったの?ノラ。」
  ノラ「も・・・森の中だよ・・・!!」
  ミータ「嘘よ!!シュワッチは橋の袂に置いたって言ってるのよ
      !その人形がどうして勝手に森の中へ歩いて行ったりす
      る訳!?可笑しいじゃない!!誰かが持って行ったとし
      か思えないわ!!だってシュワッチは・・・」
  ノラ「(呟くように。)煩いなぁ・・・(ミータの言葉を遮るように。)そ
     うさ!!俺が橋の袂に置いてあったこいつを盗んだのさ!
     !(人形を見せる。)」
  ボウネコ「・・・ノラ・・・」
  一番ネコ「・・・やっぱり嘘吐いてたんだな・・・」
  ノラ「“やっぱり”ってなんだよ。(鼻で笑って。)ああ、そうさ。おま
     えが初めっから疑ってたとおり、俺はおまえと一緒になって
     町でやってた盗みを、ここでも止められないんだよ!!」
  シュワッチ「・・・どうして・・・」
  ノラ「・・・どうしてもこうしても・・・これが本当の俺なんだ!!」

         一番ネコ、ノラ、睨み合う。
         音楽流れる。     ※
         ノラと一番ネコの喧嘩の踊りになる。
         囃し立てるミータと食いしん坊。
         慌てるシュワッチとネコ吉。
         オロオロするボウネコ。
         (全員の踊り。)

      一番ネコ“俺が倒す悪い心
            おまえの中 生まれて育った悪”

      ノラ“たとえ誰が何をしても
         俺の中に根付いてしまった悪”

      ネコ吉“誰もが一度は闘う”

      ネコ達“行け!!”

      ノラ“さあ!!”

      ネコ達“やれ!!”

      ノラ“こい!!”

      ネコ達“やっちまえ!!”

      一番ネコ“誰もが持つ誰にも見せない悪”

      ノラ“誰もが必ず闘う”

      ネコ達“誰もが一度は闘う
           やれ!!やれ!!やれ!!やれ!!
           やれ!!やれ!!やれ!!やれ!!”
           (段々、掛け声をかける人数が増えていくように。)

         曲の終わりと同時に、ノラの振り下ろした手が
         間に入って止めようとしたボウネコの頬を、
         強く叩く。

  ボウネコ「あっ!!(頬を押さえる。)」
  ネコ吉「ボウネコ!!」

         全員、驚いて呆然とする。
         その時、上手より老ネコ登場。

  老ネコ「好い加減にするんじゃ!!」 
  
         全員の間に、一瞬気まずい雰囲気が漂う。
         其々、視線が定まらないようす。

  老ネコ「大丈夫かの?ボウネコ。」
  ボウネコ「・・・打たれた頬より・・・(胸を押さえて。)ここが痛い・・
        ・。喧嘩している2人を見てると、胸が痛いよ・・・!!
        (泣く。)」
  一番ネコ「・・・ボウネコ・・・」
  老ネコ「その通りじゃ・・・。喧嘩などと言うものは、体だけでない
      ・・・心までも傷付け合う、つまらないことなんじゃ。よく分
      かったじゃろう?喧嘩が解決の方法なら、仲間など持た
      ずに自分一人で生きていけばいいんじゃ。そうすれば、
      心も体も傷付け合うことはない・・・。皆分かっていながら、
      どうして友達が欲しいと思う?何故、仲良くしたいと考え
      るんじゃろう・・・?いきがって、たった一人で生きて行け
      ると思っても、心の何処かで満たされない部分があるか
      らじゃよ・・・。偶に喧嘩をするのもいい・・・。じゃが、後の
      フォローもお互いにきちんとしなくてはな・・・。(微笑む。
      一番ネコとノラの手を取り、握手させる。)」
  一番ネコ「・・・老ネコ・・・」
  ノラ「・・・俺・・・シュワッチやおまえが羨ましかったんだ・・・。」
  シュワッチ「・・・ノラ・・・」
  ノラ「俺・・・町で何時もシュワッチからこの村のことを聞いてた
    んだ・・・。本当に毎日・・・ここがどんなに緑溢れる、素晴らし
    いところで・・・優しい仲間が沢山いること・・・。一番ネコも知
    ってる通り・・・俺は生まれた時から独りぼっちだったからさ!
    !シュワッチが村に帰るって言うのを聞いて、無理矢理付い
    て来たんだ・・・。」
  シュワッチ「違うよ!僕が一緒に来ないかって誘ったんだよ!」
  ノラ「そして・・・ここで一年前、突然いなくなった一番ネコが、楽
    しそうに暮らしてるのに出会った時・・・何故だか無性にイラ
    イラして・・・。この間まで一緒に町で悪いことばっかりして暮
    らしてた一番ネコが、今はこの村でヌクヌクと生活してるなん
    て、許せなかったんだ・・・!ごめんよ・・・ボウネコ・・・思いっ
    切りひっぱたいて・・・痛かったろ・・・?」
  ボウネコ「(嬉しそうに微笑んで首を振る。)ううん!!」
  老ネコ「優しい気持ちは、傷付いた心も体も癒してくれるんじゃ
      よ・・・。」
  ノラ「(恥ずかしそうに周りの皆を見回して。)皆にも・・・ごめん・・
    ・」
  一番ネコ「俺達の方も・・・ごめん・・・」
  ネコ吉「少し調子に乗り過ぎたね・・・ごめん・・・。」
  ミータ「ごめんなさい・・・」
  食いしん坊「ごめんよ・・・。」       ※2
  老ネコ「さぁ、これでまた新しい仲間が増えたの!」
  ノラ「・・・え・・・?」

         皆、嬉しそうに頷く。

  ネコ吉「改めて・・・ようこそ、ねこの村へ!!」

         ネコ達、明るく歌う。

         “歓迎しよう新しい仲間
         招き入れよう喜んで
         共に手を取り楽しもう
         明日の暮らし夢見て笑おう
         済んだことは水に流し
         微笑み歩こう今日から未来へ”

  ミータ「シュワッチは都会へ戻るの?」
  シュワッチ「うん・・・僕も気付いたんだ・・・。ここがどんなに素晴
         らしいところなのか・・・。町へ戻ってレンジャー戦士
         になるより、僕はこの村で皆と楽しく暮らしたい・・・っ
         て・・・。」
  ボウネコ「本当!?」
  シュワッチ「うん!!」
  ネコ吉「おかえり、シュワッチ!!」

         “歓迎しようねこの村へ
         優しい気持ちがあるのなら
         誰でもおいで僕らの村
         偶に喧嘩もするけれど
         済んだことは水に流し
         微笑み歩こう今日から未来へ!”

         微笑んで手を取り合い、未来に瞳を
         輝かせ、彼方を見遣る猫達。







          ――――― 幕 ―――――









    ※ この場面も、決まった曲が付いていたようで、曲名が
      書いてありました^_^;割りと有名な曲なので、歌詞を
      見て、どんな曲に合いそうか考えて頂くと、ひょっとする
      と曲名が分かるかも知れないですね(^.^)

   ※2、台詞の後ろに、句読点のある部分とない部分があるの、
      お気づきでしたでしょうか?この作品に限らず、どの作品
      にも今の台詞には「・・・。」と句読点が付いているのに、
      次の台詞には「・・・」と、なっていることが多々あると思い
      ます(^.^)
      これは決して書き忘れなどではなく、台詞を話す人物が、
      句読点の“あるない”の表現をして話しているんだ・・・と
      ご理解頂き、皆さんもご覧になった時に、句読点を意識
      して読んでみて下さい"^_^"
      


 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

    まだ“ネコの村・・・”が書き終わっていませんが、先に次回
   掲載作品について、少しお話しておきたいと思います(^_^)
 
    一つ、今の私の原点にあるような作品で、下書き状態で
   ほったらかしにしてあった作品を見つけました^_^;
   (本書きしていない作品・・・と言うことは、今まで、誰にも
   お見せしたことがない、本当の“未発表”作品であります。)

   下書き状態のまま・・・と言うことで、以前、皆さんにも写真を
   見て頂いたことがあると思いますが、ぐちゃぐちゃに近い・・・
   あっち飛び、こっち飛びして書きなぐっているものなので、
   読むのに随分時間がかかってしまったような作品なのですが、
   読み終わってみて、とても面白く・・・人形劇以前の作品では
   ありますが、今現在の私作品にとても近い・・・ファンタジーな
   お話なので、次回はそちらを皆さんにご覧頂こうかなと思い
   ます(^^)v    
 
   で・・・タイトルですが・・・
   いつものように主人公の名前を・・・と思ったのですが、この
   主人公の名前が“スティーブ”なのです^^;
   スティーブと言う名前が度々、他の作品でも登場するので、
   この作品でキーワードとなる「風になる・・・」と言ったことば
   を、今作品のタイトルとして使用したいと思います(^.^)

   それでは次回、“風になる・・・”お楽しみに♪
   











 
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“レナード” ―全13場―

2012年08月29日 18時22分47秒 | 未発表脚本


   下の説明では、グーグル版のみで、ご覧頂こうと思って
   いましたが、こちらにも移動して来ることに致しました^^;

   説明通り、未熟な作品ではありますが、よければこちらも
   またご覧下さい(^^)v


                                 どら。


 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



  この作品は、私が色んな話しを書き始めた当初、自分の趣味的

  に書いたもので、まさか自分の書いたものが、誰かの目に触れる

  ことがあろうとは、考え及びもしないで書いていた、ホントに今読ん

  でみると、何て未熟で好き放題書いた話しだな・・・と、思うのです

  が、今回、このグーグル版“ワールド”Onlyで、ご紹介してみようか

  な・・・と思いました^_^;

  色々とマズイところもあるかと思いますが、敢えて書き直すことは

  せず、当初のままご覧頂こうと考えていますので、皆様、読みなが

  ら一人突っ込みでお読み下さい(^_^;)

 

 

 

    

                                  どら。

 

 

 

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

 

    〈 主な登場人物 〉

 

    レナード  ・・・  バーのマネージャー。

 

    フランシス  ・・・  社長令嬢。

 

    チャールズ  ・・・  刑事。

 

    レオーネ  ・・・  黒ずくめの男。

 

    ヘンリー  ・・・  専務の息子。

 

    ダニエル  ・・・  社長秘書付社員。

 

    B・J  ・・・  バーの従業員。

 

    ウィリアムス  ・・・  専務。

 

    ジャネット  ・・・  他のバーのマダム。

 

 

 

    その他

 

 

    

 

    ※ 登場人物がとても多いので、ここら辺にしておきます^_^;

 

 

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

 

 

         ――――― 第 1 場 ―――――

 

          音楽で幕が上がる。と、舞台は裏町。

          住人の男女、陽気に歌い踊る。

 

          “人生何もないかも知れない

          俺達にも何もないかも知れない

          けれどどんな日にも

          必ず明日があって 必ず朝がくる

          nothingから始めよう

          nothingでいいじゃない

          nothingだから

          未来に向かって飛び出そう”

 

          舞台中央、レナードセリ上がり歌う。

          住人の男女の踊りに誘われるように、

          レナード踊る。

          全員の掛け声と、決めのポーズで

          カーテン閉まる。

 

         ――――― 第 2 場 ―――――

 

          カーテン前。

          上手より、ズボンのポケットに手を

          突っ込んだチャールズ、ゆっくり登場。

          続いて、バー“マントル”のマダム、

          ジャネット登場。

 

  チャールズ「(笑いながら。)レナードのお陰で、俺の仕事が

         なくなるよ。」

  ジャネット「だって態々、刑事のお世話になるより、レナード

        の頼めばあっと言う間だもの。本当に頼りになる

        わ。それにレナードは、刑事みたいに差別はしな

        いもの。私達みたいな者の為にも、一生懸命力を

        貸してくれる・・・。」

  チャールズ「おいおい、俺は差別してるつもりなんて・・・」

  ジャネット「分かってる。チャールズは他の刑事達とは違うわ

        。けど、皆が皆、チャールズみたいな刑事ばかり

        じゃないのよ。こんな商売してる私達のこと、そこら

        辺のゴミくず位にしか思ってない奴らが殆どだって

        こと・・・。」

  チャールズ「確かにね・・・。」

 

          カーテン開く。

          舞台は裏町のバー“nothing-ナッシング-”。

          チャールズ、ジャネット、話をしながら

          舞台上へ。

 

  ジャネット「そんな顔しないでよ。別に私達は何とも思ってやし

        ないわ。全くチャールズは、生真面目なんだから。

        (笑う。上手より登場したレナードを、目敏く見つけ、

        声を張り上げる。)レナード!!」

  レナード「(2人に気付いて近寄る。)よお、来てたのか?」

  ジャネット「この間は本当に助かったわ。」

  レナード「大したことないさ。」

  チャールズ「大手輸入会社のMCAの常務が、脅迫紛いのこと

         をやってたとはね。」

  レナード「あれから店に来ないか?」

  ジャネット「ええ。あんな奴に、うちの店の中で大きな顔されて

        たんじゃ、堪ったもんじゃないわ。どこで聞いて来た

        か知らないけど、うちの女の子が、昔、刑務所に入

        ってたことを、客にバラされたくなかったら金を寄越

        せだなんて、馬鹿にしてるわよね。」

  レナード「また何かあったら、何時でも言いに来いよ。」

  ジャネット「ありがとう!!(腕時計にチラッと目を遣って。)

        そろそろお店に戻らなきゃ。一応、商売敵になるん

        だけど、うちの店にも偶には寄ってよね、レナード!

        愛してるわ!(レナードの頬にキスする。)おやすみ

        、チャールズ!」

  チャールズ「おやすみ。」

 

          ジャネット下手へ去る。

          チャールズ、カウンターの椅子に座る。

          レナード、カウンターの中へ入る。

 

  レナード「(棚から酒瓶を1本取って、チャールズの方へ差し出

       す。)」

  チャールズ「ああ、貰うよ。全く・・・おまえは俺達を失業させよう

         ってんじゃあないだろうな。(笑う。)」

  レナード「(笑って。)まさか・・・。おまえ達の仕事に、俺は興味

       なんかないよ。」

  チャールズ「だけど、ここら辺の奴らは、何かあったら先ず警察

         よりレナードだ。」

 

          チャールズ、レナードに語り掛けるように

          歌う。

 

          “刑事なんか当てにならない

          問題があればnothingに行けばいい

          レナードに言えば何とかなる

          この界隈きっての頼りの男

          刑事なんか信用するな

          レナードは人を比べたりはしない

          男でも女でも誰であろうと

          レナードなら解決してくれる”

 

          レナード、楽しそうにチャールズの歌を

          聞いている。

 

  レナード「(笑う。)えらい信用だな。(チャールズの前へコップ

       を置く。)」

  チャールズ「(コップを取って。)本当だぜ。お陰で俺の管轄は、

         問題がこっちの耳に入った時には、もう解決してる

         って訳さ。全く・・・有り難いのか有り難くないのか

         ・・・」

 

          B・J、カウンターの方へ近寄って。

 

  B・J「いらっしゃい、チャールズさん。」

  チャールズ「(振り返って、B・Jを認める。)よお、頑張ってる

         か?」

  B・J「(チャールズの背後を覗き込むように。)あれ?今日も

     一人?最近、何時もの綺麗な彼女、一緒じゃないんです

     ね?喧嘩でもしちゃったのかな?(冷やかし口調で。)」

  チャールズ「馬鹿、あいつとはもう終わったよ。」

  B・J「えーっ!?」

  チャールズ「結婚したんだ。」

  B・J「再び、えーっ!?俺、密かに憧れてたのにー!!」

  レナード「B・J!無駄口ばかり聞いてないで、仕事しろよ。」

  B・J「ちぇっ、はーい。(離れる。)」

  チャールズ「・・・結婚したよ・・・(独り言のように。)」

  レナード「チャールズ・・・」

  チャールズ「終わったことさ・・・。」

 

          その時、回りの様子に呆気にとられるように、

          見回しながら、素足のフランシス下手より登場。

          カウンターに座る。

 

  フランシス「あの・・・こんにちは・・・」

  レナード「あ・・・いらっしゃい。何にする?」

  フランシス「えっと・・・オレンジジュース・・・」

  レナード「(笑って。)おいおい・・・ここは昼間の喫茶店じゃない

       んだぜ。」

  フランシス「じゃあ、何を頼めばいいのかしら?」

  レナード「そりゃあ例えばカクテルとか・・・ビールとか・・・」

  フランシス「それじゃあ、そのカクテルを下さい。」

  レナード「カクテルって言ったって色々・・・(溜め息を吐いて。)

       まぁいいか・・・」

  チャールズ「(フランシスの足元を見て。)君・・・靴は・・・?(レ

         ナードと目を見合わせる。)」

  フランシス「あ・・・あの・・・なくしちゃって・・・」

  チャールズ「なくしたって?」

  フランシス「ええ、なくしたんですわ。さっき・・・その・・・路地で

        ・・・!」

  チャールズ「(レナードと目を合わせて、首を傾げる。)」

  レナード「素足のお嬢さん、足のサイズは?」

  フランシス「あの・・・9・・・」

  レナード「OK。(奥へ入る。)」

  チャールズ「この辺では見かけない顔だね?」

  フランシス「ええ。この町は初めて・・・。あの・・・あなたは・・・

        ?」

  チャールズ「ああ、失礼。俺はこう見えても、一応サンフラン

         シスコ市警捜査第1課の刑事でね。」

  フランシス「刑事!?」

  チャールズ「刑事ったって、今は勤務外だ。友達の店に飲み

         に来た、ただの男だよ。仕事柄、つい探るような

         聞き方をして悪かったね。」

  フランシス「いいえ・・・」

 

          レナード、奥から靴を持って出て来る。

          カウンターの外へ。跪いてフランシスの

          足を自分の膝の上へ置き、持って来た

          靴を履かせる。

 

  レナード「ぴったりだな。」

  フランシス「あの・・・」

  レナード「従業員の履き古した靴だから気にするな。おまえに

       やるよ。」

  フランシス「でも・・・」

  レナード「素足で表を歩き回ってたら、綺麗な足が血だらけに

       なるぜ。(立ち上がって微笑む。)」

  チャールズ「相変わらず女に優しいね。」

  レナード「馬鹿野郎。」

 

          その時、店の入り口から2人の黒づくめの

          男、肩で風を切るように登場。

          レオーネとスタン、回りを見回すように。

          丁度、店を出ようと歩いて来たアベックと

          ぶつかる。

 

  レオーネ「いってえな!!(声を張り上げ、アベック男の胸元

       を掴む。)ぶっ殺すぞ!!」

 

          店の中の客、一斉にその方に注目する。

          それに気付いたレオーネ、男を離す。

  

  アベック男「すみません!!(脅えるように。)」

  スタン「気を付けな!!」

 

          アベック男女、慌てて下手へ去る。

          その男達を見たフランシス、顔色を変えて

          立ち上がり、慌ててカウンターの陰に身を

          潜める。レナード、そんなフランシスの様子

          を不審に思いながら、見詰める。

          レオーネ、スタン、一見して店の偉い人らしき    

          レナードを認め、近寄って行く。

          他の客達、その方を気にしながらも、さっき

          までと変わらず、飲んだり踊ったりしている。

          レナードも、一寸近寄る。チャールズ、立ち上

          がってレナードの後ろに控える。

 

  レナード「お客さん、店の空気を乱すような行為は、慎んで頂

       けませんか?」

  スタン「何だと!?」

  レオーネ「おい!(スタンを止める。)誰だ、てめえ・・・」

  レナード「(ただ黙って、レオーネを見据える。)」

  レオーネ「(思わず目を逸らせて。)まぁ、いい。俺たちゃ人を

       捜してるんだ。(スタンに。)おい。」

  スタン「(背広の内ポケットから、一枚の写真を取り出して、レ

      ナードの方へ差し出す。)」

  レオーネ「この女を見なかったか?」

  レナード「(チラッと写真に目を遣る。)いいえ・・・。この女性が

       如何かしたんですか・・・?」

  スタン「そんなこと、てめえにゃ関係ないだろ!!」

  レオーネ「よせ!!来なかったんならそれでいい。(回りをぐる

       っと見回して。)行くぞ!!」

 

          レオーネ下手へ去る。スタン、客達に

          暴言を吐きながらレオーネに続いて去る。

          レナード、2人が去るまで、その方を見て

          いる。

 

  チャールズ「(2人が去るのを見計らって、レナードの耳許で。)

         彼女か?」

  レナード「(入口の方を見たまま。)ああ・・・。(思い出したよう

       に、座り込んでいるフランシスに近寄り覗き込む。)・・・

       もう行ったぜ・・・おい・・・(フランシスの腕を取って、立

       ち上がらせる。)誰なんだ、あいつら・・・」

 

          フランシス、ただ脅えるように俯いている。

 

  レナード「(チャールズと目を合わせて。)言いたくなきゃ、別に

       言わなくたっていいさ・・・。(溜め息を吐いて。)けど、

       何か訳ありみたいだな?おまえ・・・帰る所はあるのか

       ・・・?」

  フランシス「(俯いたまま、ゆっくり首を振る。)」

  チャールズ「家出娘か・・・?」

  フランシス「違うわ・・・!!」

  レナード「(チャールズの顔を見て、“何も言うな”と言うように、

       首を振る。)じゃあ・・・暫く、ここにいればいい。」

  フランシス「え・・・?」

  レナード「ここの2階は宿屋になってるんだ。丁度、今一部屋

       空いている。そこを使うといいさ。」

  チャールズ「そうだな・・・。あいつらに見つかりたくないんだった

         ら、ここは絶好の隠れ場所だぜ。何たってこいつは

         この辺りじゃ凄腕で通ってるんだ。」

  フランシス「けど私・・・お金は・・・」

  レナード「そんなことは気にするな。(辺りを見回して。)B・J!」

 

          B・J気付いて近寄る。

 

  B・J「何っすか?」

  レナード「(フランシスの肩に手を置いて。)えっと・・・あ・・・おま

       え名前は・・・?」

  フランシス「・・・フランシス・・・」

  レナード「フランシスを2階の部屋へ案内してやってくれ。」

  B・J「はい。どうぞ!」

  フランシス「(B・Jに付いて行きかけて振返る。)あの・・・ありが

        とうございます・・・。(頭を下げる。)」

  レナード「(微笑む。)」

 

          B・J、2階の部屋へフランシスを案内する。

          フランシス、階段を上りながら、気にするよう

          に振り返りB・Jに付いて行く。

          チャールズ、上がって行くフランシスの方を

          見ている。レナード、カウンターに座っていた

          他の客に、酒を出したりしている。

 

  チャールズ「いいのか?」

  レナード「何があったか知らないが、素足で逃げて来なけりゃ

       いけないようなことが、彼女の身に起こったことは事

       実だ。」

  チャールズ「そうだな・・・。署に戻って、一回捜索人の届けが

         出てないか、調べてみるか・・・。俺が刑事だと分

         かった時の彼女の顔付も気になるし・・・。だが、

         ヤバいようなら、余り首を突っ込むなよ。」

  レナード「(笑って。)誰の心配をしてるんだよ。」

  チャールズ「(笑う。)そうだったな。」

 

          その時、ジェイン下手より登場。

          チャールズを認め近寄る。

 

  ジェイン「いたいた!ここだと思ったわ!こんにちは、レナード

       。」

  チャールズ「何だ、ジェイン。俺は今日は非番だぜ。」

  ジェイン「分かってるわよ。レナード、何時もの頂戴。」

  レナード「OK。」

  チャールズ「俺はちょっと調べ物があるから、もう署に戻るぜ。

         (立ち上がる。)」

  ジェイン「(チャールズの腕を掴んで。)待ってよ!冷たいのね

       。一杯くらい付き合ってくれたっていいじゃない!」

  レナード「(ジェインの前へコップを置く。)」

  ジェイン「今日は非番って、自分で言ったのよ。調べ物って何

       ?私も手伝ってあげる!」

  チャールズ「いいよ。」

  ジェイン「遠慮しなくってもいいのよ!」

  チャールズ「(ジェインの言葉は耳に入っていないように。)

         じゃあな、レナード!何か分かったら連絡するよ。」

  レナード「ああ。」

 

          チャールズ、下手へ去る。

 

  ジェイン「もう!何時もチャールズはああなんだもの。いくら私

       がモーションかけたって・・・」

  レナード「あいつはまだ、前の彼女が忘れられないのさ・・・。」

  ジェイン「・・・あのチャールズのことを振って、御曹司と結婚し

       たお嬢様?」

  レナード「違うな・・・。チャールズは相手のことを真剣に考えて

       、態と振られるような真似をしたんだ。あいつらしくね

       ・・・。」

 

          レナード、カウンターの中にいたロイに

          何か言って、奥へ入る。

          代わりにロイ、客の相手をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

       ――――― “レナード”2へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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    (どら余談^^;)

 

    グー版“ワールド”の“ジェフリー”のアイリーンさんと、この

    フランシスさん、似たような境遇ですね^_^;

    書いた時期は全く違うので、多分こんな設定・・・好きなの

    かも知れません(^_^;)