~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No.26 株価15000円回復をどう感じ取るか?

2005年12月03日 | 投資・運用
12/2日経  ・・日経平均15000円回復関連記事より・・各文面抜粋

○日本企業は長く苦しんだ「債務」「設備」「雇用」の三つの過剰を解消し、持続的な利益成長が可能になった。

○株式持合いの解消、会計ビッグバン、売買手数料の自由化、オンライン化などによって、個人や外国人が正しい企業価値を計れるようになり市場への参加が進んだ。

○株高は経営者や消費者の心理を明るくし、設備投資や消費を押し上げる効果がある。

○「いざなぎ景気」をも上回る景気拡大局面の長さも語られはじめている。

○上場企業の今年度決算の見通しは3年連続最高益更新、先月末OECDは日本の06年成長率見通しを米国・ユーロ圏を上回る上方修正率で2.0%とした。

●夏以降の急騰で日本株は企業の利益水準から見て割安とはいえない水準になったとの指摘もある

●株価の恩恵にあずかれない家計・企業・地域もなお多い。

●少子高齢化、年金制度不安、定率減税廃止、米国の住宅景気の減速などの影響を見極める必要がある

●(いまの)景気が米国と中国を中心とした世界経済に依存したものであり、●経済危機に対応した金融政策の継続(ゼロ金利・量的緩和政策)と、●先進国で最悪の財政状態の上に乗った株式活況であることを忘れた楽観論は禁物だ。

・・・

同じ日の同じ新聞のなかで○と●の180度違う記事文が各所に混在している感じです。ここまで玉石混合な論調なのは、期待とともに多くの日本人心理の奥底に横たわる「バブル」と「デフレ」のアレルギー的な後遺症を反映しているからでしょうか。

このように並列で書き並べると冷静に比較できるのですが、実際にはどの記事も例外なく○(明るい見通し)は大きな見出しと共に記事前半に、●(懐疑的)は見出しがなく後段に控え目な感じで書かれています。

これでは記事を隅まで読むことがない大半の読者は、どうしても大きい見出しの○に目を奪われがちになってしまっても不思議ではありません。
(はやりのゲーム理論的には、それは楽観心理を育てるということでしょうか)

一面トップに出ている15年間の日経平均株価の推移グラフを眺めると、今の15000円が小泉内閣発足前夜の価格に過ぎないということが見て取れます。バブル崩壊10年後の水準へ戻っただけではないか、まだまだ通過点だからもっと回復しそうだ・・とシンプルに考える場合もあるかと思います。

しかし○論調が目立つ中でこそ●記事が発するリスクを記憶しておかねばなりません。
ほんの数ヶ月前まではネガティブな記事ばかり目立っていたことをつい忘れてしまうのがムードに流されやすい我々庶民であります。(・・と自分にも言い聞かせている)

評論や報道は、結果が出てから後付けで180度論調を変えることにやぶさかではありません。それはバブル時以来幾度も味わってきていることです。
「この上昇は本物だ」「以前とは全く状況が違うから・・」結果が出ればそのような論調が繰り返されます。仮説が立てば理由はあとからいくらでもつけられる、理由が多ければ多いだけ真実のような気がしてくる。

だが後で振り返ったとき、多くの理由づけよりひとつの読みが真実だったという過去経験を思い出し、今一度冷静になる必要があるんだと再び言い聞かせます。

個人的には、上の○と●に分けた多くの記事より、同じ日の同じ日経にあった、あるひとつの記事のほうが自分の考えている感覚が明確になる気がしました。

それは、世界的なカネ余り現象の中で日本の低金利・円安・株高が不気味なほどの調和を保っていることで、これがいつまで続くのだろうかというボヤっとした疑問を私が持っていたからです。

以下論旨抜粋します。

・・・


12/2日経 第三面
欧州ECBが5年ぶりに利上げ、米と欧は同時利上げ局面へ入った。インフレ懸念を抑え景気拡大を長持ちさせるためだが、グローバルな投資資金はなお潤沢だ。内外金利差を映つしドル円は120円に下落、輸出採算の好転を織り込み株価は15000円に乗せた。

韓国などアジア諸国も利上げに動いていて、日本と住宅バブル崩壊の英国を除いた世界の中央銀行は利上げモードに入った。

かつてなら利上げの先に景気減速を見込むところだがこんかいの雰囲気はちょっと違う。
業績好調な企業のキャッシュフローが潤沢で、カネ余りが続いている。
米国でも企業経営効率が高まるなど、(政策)利上げ局面でも(市場)長期金利は世界的に低位にとどまり株価も堅調だ。

日本も同じ構図にある。おまけは量的緩和継続の読みで円安が進み、輸出採算が向上、収益増を見込んで株価も上昇している。カネ余りで低金利、円安、株高という、経営者や投資家に心地良い雰囲気が広がっている。

「いいとこ取り」が長続きする保証はない。円安ドル高は米赤字を一段と増やし、マグマをためている面もある。投資家が株や不動産でリスクをとりだした半面、リスクを意識せずに簡単に収益が上がるとの考えが広がれば、バブルの芽となりかねない・・・


・・・

この記事からは、グローバル競争⇒企業リストラ(効率化)⇒カネ余り⇒低金利⇒円安⇒採算向上⇒株高・・という、あくまで“大企業群”を話の中心に置いての好連鎖の存在がおぼろげながら浮き上がっているという論理が読み取れます。

問題はこの循環が、連鎖を断ち切るような何かのキッカケが起こった場合、一気にネガティブ方向へ逆連鎖する危険性があることです。
米国ドルマネーバブル(当ファイルNo14~18参照)リスク、原油価格リスク、日本財政リスク(国債下落)、円安からの反転、日本独歩株高からの海外マネー引き揚げ、その他世界のどこかで起こる事件・・など、地雷はあちこちに転がっていることを、好調そうに見える今だからこそ再認識したいと思っています。

だからこそ小さな報道でもおろそかにせず注視していく必要があります。
引き揚げタイミングの難しさは、これから本格的になってくると感じるこの頃です。

2 コメント

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Unknown (ひろ)
2005-12-03 03:55:41
株高、株安、円高、円安、どう動いても、後付でいくらでも説明できると思っています。

われわれにできることは、どう動いてもいいように準備しておくことではないでしょうか。
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Unknown (kanconsulting)
2005-12-03 10:36:08
トラックバックありがとうございました。こちらからもTB送信します。
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