~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No51 次の世界金融バブルへの仕込みは始まっている?

2006年06月28日 | 投資・運用
6月20日(ブルームバーグ):米投資家ジョージ・ソロス氏は20日、5月初め以来の新興市場資産の値下がりについて、日本銀行が量的緩和政策を解除し、今後の政策金利の引き上げ方針を示したことが主因だったとの見方を示した。

欧米の金融当局が政策金利を引き上げるなか、日銀もゼロ金利政策を解除するとの見方を背景に、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)新興市場指数は5月に11%下落した。日銀は3月に過去5年に及んだ量的緩和政策の解除を発表した。

ソロス氏はこの日、トルコのイスタンブールでテレビ会見を開き、日銀が政策変更の前に銀行システムに注入した約32兆円の資金について、その多くが結果的にトルコやブラジルを含む新興市場へ流れたと指摘。「日銀が過剰流動性を減らすという状況は世界の通貨、債券、株式に対して影響を与えた。これは過剰流動性の修正であり、トルコ市場も影響を受けている」と語った。


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海外の株式リサーチ会社によれば、世界的な株・債券・商品などの1ヶ月間の急落で、世界の金融市場では6兆2600億ドル(720兆円)の価値が失われたといいます。

5月9日から6月13日までの間、ブラジル株式は29.59%下落、史上最高値を高進したインド株式は32.44%安、メキシコ株式は24.72%下げました。

日経平均株価は4月の高値から2ヶ月で3,500円も下落、下落率は約20%にのぼります。この下落率20%は、3ヶ月で21%下げた1987年10月のブラックマンデー(世界的株価大暴落)当時に匹敵するといわれていますから、今回の急速な下落は、近年例を見ないものでした。

最近では、下落に至るまでの上昇が「世界的バブル」だったのでは?という論調も、ようやくチラホラ出てくるようになりました。上がっている時はいつでも何らかのポジティブ要因を並べて“意味のある上昇”と喧伝され、煽られる形で個人投資家はつかの間の夢を見ます。
このあたりの事は、世界金融が一点の曇りも無く絶好調だった今年1月から、当ブログ(ファイルNo35~)で一貫して危惧し続けたことで、それが現実化し、またしても懲りない歴史を繰り返したにすぎません。しかし文明的人間の、あくなき金銭欲は何時の世も止めることができませんので、ある程度仕方のない繰り返しではあります。

ヘッジファンドで世界的に有名なジョージソロスが、急落の主因は日本の量的緩和の解除にあるという、上の報道を見たときは思わず失笑してしまいました。

そもそも彼や彼の周辺がムーブメントを起したヘッジファンドや投資業界が、ゼロ金利下の日本で資金を調達し、それを急激に世界中へバラ撒いたことが今回のバブル増大に大きく貢献したのは明らかです。主因はデフレ下でやむなくゼロ金利を続けた日銀ではなく、それを(ある意味)悪用しバブルを助長した彼ら仕手筋自身にあるという認識はないのでしょうか。 

長年世界で最も賢く稼いできた達人ですから、それを意識していない訳がありません。最初に仕掛けたのも彼らなら、一気にハシゴをはずし莫大な利益を確定したのも彼ら業界の一握りのトップ集団達であることは、当人達が一番わかっているはずです。

そう考えるとソロスの日銀主犯説は、本当はヘッジファンド自身にあるバブル仕掛けの直接原因をカモフラージュするための“確信犯的”アナウンスではないかと勘繰ってしまいたくなります(今回ソロスが個人的にウマく売り抜いたかどうかは知りませんので悪しからず・・あくまで業界の代表格と見た場合の仮説です)。


今、米FRBによる政策金利の今後の利上げ回数が、短期的な世界金融資産の行方の全てを握っているかのように日々報道されています。利上げを続けるほど世界のリスクマネーは収縮していくというのが世界一般的コンセンサスであります。

そんなとき一握りの業界トップ集団は、昨今の金融引締めをもってしても余りある過剰利益マネーを一旦フトコロへしまった後、近々またどこかへ稼ぎに出すタイミングとチャンスを虎視眈々と狙っているような空気を感じます。

米景気減速が明らかになり⇒インフレ期待値が後退して⇒FRBの利上げが停まるのを見越して(それはたぶん今か近い将来)最も効率よく稼げるどこかのマーケットへ、その超ビッグマネーは再び静かに潜入していくはずです。古い例えだと“アメーバ”のように。

あまたの個人投資家が、今回の急落でリスクに臆病になり、一部では信用取引の追証など終戦処理に手間取っている間、気が付けばアメーバはもうどこかに仕込み始めているかもしれません。

そうなると興味は、果たしてアメーバはどんなマーケットに向うのか、です。
BRICs(新興国)神話をウマく喧伝しブームを形成していった今回の歴史に学ぶと、次もまた情報社会におけるアナウンス効果を利用して、大衆を洗脳してくる可能性は高いといえます。海外の有名アナリストや業界トップ群の発言・記事・広告を通じたメッセージ・パブリシティ(告知)にできるだけ多く気を配っておくことで、世界(見えざる力)は次に何をしたいのかが見えてくるかもしれません。

今回急落の憂き目に遭った人や、バブルに乗り遅れ参加できなかった人が(懲りずに!?)もし次のバブルこそうまく乗りたいと思った場合、
現在見事に無視されている長期的なファンダメンタルズ分析や毎日のテクニカル指標に気を取られるよりも、頭脳的・確信犯的に世界金融を動かしている“パワー”の意向に耳を澄ます努力のほうが、けっきょくは早道だったりするのではないでしょうか。

言い換えれば、本当に有益なアナウンスと意図的に流されるアナウンス、その他大部分の日和見なアナウンスを嗅ぎ分けるセンスを持つことが、経済指標よりもある意味重要な、バブル投資を成功させる鍵になるような気がします。