~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No47 絶好調BRICsの市場は危険水域か?

2006年05月05日 | 投資・運用
5/4日経一面・・・BRICsの外貨準備、G7抜く・・・ 有力新興国BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の政府・中央銀行が保有する外貨準備高が3月末時点で主要7カ国(G7)の合計額を上回った。世界最大の外貨準備保有国となった中国に加え、他の3カ国も輸出や海外からの直接投資が増加したためだ。高度成長を続ける4カ国への外貨流入は今後も加速、ドル相場などへの影響を通じて国際金融市場での存在感を一段と増しそうだ。

外貨準備は政府・中央銀行の保有する外国通貨や金で、政府の対外的な支払準備資産として国家の信用力を示す。BRICsの3月末時点の外貨準備は2004年末と比べ4割増え、G7の合計1兆2539億ドルを超えた。 (論旨抜粋)


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連休中の日経1面に載っていたこの記事だけでなく、BRICsへの直接投資がこの5年で10倍になったとか、BRICs投資信託の新商品はいつも即完売になる等の話題で、最近は「BRICs」を聞かない日がないほどです。

確かに、日・米・欧の低金利政策による世界的カネ余りがもたらしたここ2~3年の世界同時好況(株高)の恩恵を最も受けたのは紛れもなくBRICsなどの新興諸国であり、裏付けとして多国籍企業群のBRICs進出による直接投資が大きく貢献したのは言うまでもありません。

新興諸国は内需を喚起しながらも、90年代末のアジア通貨危機の教訓を生かし、国の信用力を高めるべく稼いだ外貨をストックすることに余念がありません。G7以上の外貨準備を積んできたという事実は、何があっても以前のような信用不安、通貨暴落を起こさないぞという意気込みを感じます。

この右肩上がりの強い流れは磐石なようにも見えます。このままずっと続いていくのでしょうか。

判断する上でひとつ感じているのは「実体経済」 と「金融市場経済」を分けて考えたほうが良さそうだということです。

海外企業による直接投資やグローバル化がもたらした爆発的な輸出入増加、現地雇用増による内需拡大・・・先進国並みを目指す経済インフラの整備・・・これら経済の基礎的な流れは中期的に好不況の波があるにせよ今後も縷々と続いていくように思われます。

ひるがえって、ファンド等の海外投資家はそんな大きな潜在力を秘めたBRICsなどに、まるで最後のオアシスであるかのような扱いをした結果、海外からの金融投資量は実体に対して明らかに過剰になり、すでに大きな調整局面に入りつつあるのではないかという観測が広がってきています。

更にその観測にひとつの根拠を与えているのが日・米・欧政策金利の上昇による投資資金の減少というわけです。投資家が資金余力がなくなって98年のように新興国から一斉に引き揚げていくのではないかという、“恐怖シナリオ今また再び”のような憶測です。

冒頭のような国の信用力を上げるニュースは、それを防ぐための“ある程度”有効な助けになると考えます。

しかし、必要な資金が実体経済を満たしているのであれば、それ以上は過剰で割高ということになります。

もちろんBRICs市場全てが同時に下落モードに入るというわけではなく、エリアによって
時間差があると考えられていますが、現在BRICsの中で特に株価収益率で割高感が目立つのがロシア(東欧)市場やインド市場と考えられます。

ロシアは世界きっての資源国であり、インドの潜在力は中国以上とも言われていて、基礎的な成長力は今後も高く引き続き有力な二国であるわけですが。

株式市場は成長見込みを早め早めに織り込んでいって、資金が前倒しで流れ込んでいきますから、資金流入過多であればいつか経済の実力ポジションまで調整があるのは当たり前のことですが、妄信的にBRICs=オイシイ水 と思い込んでしまうと意外にそういったリスクが目に入らず、聞こえなくなるものです(・・・自戒の念も込め)。

これと似たような状況が、現在高騰中の原油・金などを始めとしたコモディティ(商品)取引市場にもいえます。 新興国の増えつづける需要に対し、特に自然資源などは絶対的な供給が不足しているといわれ、そのこと自体は事実である可能性が高いとしても、それを先回りした投機資金が過剰に入りすぎている状態だと認識します。

商品先物市場の特性として元来、取引の7~8割が実需と関係のない投機資金といわれていますから、自然資源の絶対的供給不足だけに目をつけて下手に投資すると仕手筋に振り回されてしまいます。投機市場ゆえに原油価格などは、調整が図られたとしても実需取引価格まで戻るかどうかは疑わしいですが・・。

BRICsなどエマージング諸国に話を戻すと、米国の景況不安・・投資の調達金利が上昇・・資金流入過多・・などのいくつかの理由により、証券市場の短中期レベルの小さくない下落は現時点で覚悟したほうが良いと見るのが順当と思われます。

しかしIMFの政策や各国の備えも効いているため、98年のアジア通貨危機のような一斉危機的な状況まではいかないだろういうのが今のところの認識です。

これからBRICsへいざ投資という場合は、突っ込むタイミングに最大の注意を払うべきと考えます。また、少なくとも3年以上の長期で塩付けにできる資金に限ったほうが安全といえるでしょう。

余談ですが、ここ数ヶ月UAEやサウジなど中東の主要市場が暴落していますね。原油で潤っているのは国家の一部だけ、一般市民や庶民投資家は大きな痛手を被っているとのことです。暴落はイラン等の地政学的リスクが理由ではないというから二度ビックリです。
市民投資家の売りが更なる投売りを呼んでいるらしい。国の信用力や投資インフラが乏しいのも暴落を呼ぶ原因でしょう。しかし中東やエジプトは長期的にはとても有望な市場であると見られています。 BRICsよりも数年先を見て考えると、かえって面白いかもしれませんね。