~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No27 株高と円安の報道から、投資リスクを推察

2005年12月06日 | 投資・運用
円安と株高についての関連記事(日経)をここ数日拾ってみました。アットランダムな記事を並列に並べることでマクロなトレンドを推測する手掛かりにと思ったからです。(以下12/3~6日経記事:論旨抜粋)


●インターネットで株式を取引するオンライン証券の口座数が急増(オンライン専業5社一年前150万⇒現在250万口座)、その6割が株投資未経験者、20~30代が急増している。個人のオンライン取引率は83%に達し、オンライン専業大手5社の預かり高だけで市場全体の一割を占める。・・12/5

●円の実効レート※は11月で104.7、プラザ合意直後の85年以来20年ぶりの水準まで低下。
※物価水準を加味した円の主要通貨に対するレート。73年を100とする。日本の対外競争力を示すもので、国内物価や人件費が下がると実効レートも下がり、輸出に有利となる。


●国内株式市場での外国人の買い越し額は過去最高、しかし円相場は上昇しない。それは・・

*(外国人が)超低金利の円を使って資金を調達し日本株に投資する動きが拡大、円建ての海外ファンドも多い。

*一方、日米の金利差が3%以上に開き海外の高金利を当てこむ日本の個人投資家が外貨建て商品を購入、ドル買いを加速させている。来週からのボーナスで外貨建て投信の購入が一段と増える可能性が高い。

●(みずほ総研試算) 05年は米国⇒日本への投資額299億ドルに対し、日本⇒米国への投資資金が753億ドルと、差し引き450億ドルあまりが米国へ流入している。


●原料の輸入が多い電力や製紙など、円安がマイナスに働く業界もあるが全体ではプラス(株高)効果が大きい。市場では円安効果を期待して輸出企業の株価が上昇している。・・以上12/3

●ドル円はこの5ヶ月で10円程度の円安ドル高。株価の上昇などで余裕が出てきた個人が外為証拠金取引などリスクの高い取引に積極的に乗り出している。「個人の外貨取引は半年前の10倍以上に増えた(大手欧州銀行筋)」・・12/6

●対ユーロも142円、99年ユーロ導入以来最安値を更新。ECBが5年ぶり利上げを実施し低金利が続く日本との金利差拡大が手掛かりとなった。・・12/6

●タイ(バーツ)やシンガポールドルなど対アジアでもアジア通貨高・円安。
インドネシア(ルピア)は9月から15%の上昇率、韓国(ウォン)も10%など軒並み高い伸びとなっている。原油高一服での買戻しや、(日本からの)アジア通貨建て株式への投資増がアジア通貨高につながっている。・・12/6


・・・

それから経団連奥田会長の「バブルのような雰囲気が漂っている。他人が買っているから乗り遅れないように~というような動き」発言もありました。

これらの記事群からいくつかマクロ推察してみます。

①オンライン化普及による個人(特に若い世代)の“株・投信・外貨”投資が、すでに市場全体で無視できない存在(影響を与える存在)になりつつある。

②外国人投資家(ウォール街を始めとした)は日本株買いに邁進しているが、日本の低金利政策が見直されるとなった場合、彼らはいっせいに引いていく可能性が高いのではないか。

世界中が利上げモードに入った現在、超低金利で資金調達できるジャパンマネーは唯一オイシい。このオイシさがいつまで続くのか、そのタイミングを最も気にしているのは既に日本へ大枚betした外国人投資家で、引き際の速さは折り紙つき。

もちろん、日本のインフレ懸念などは気にせずもっとゼロ金利が続いてくれることを願っているはずだし、政治家やメディアを通じてもっと続けるようメッセージをさかんに送っているように感じるのは私だけだろうか。

③外国人があるタイミングで引き揚げて、株価が調整したとき一番損害を被るのは今年さかんにオンラインで買い出した若い個人の投資浅経験者かもしれない。

④日本人の外貨(および外貨投信)投資の勢いは株投資を上回るような想像を超えた勢いがある。もはや実質的にキャピタルフライト(資本逃避)の域といえるかもしれない。今後も預金低金利が続く予想を前提に、余ったマネーが外貨に行き場を求めている。

ただし円実効レートが相当なレベルまで安くなっているため、何かのキッカケで相場が調整する危険性をはらんでいる。為替の上下に左右されない長期を見込んで投資するべきで、余裕のない短期でのリスクマネー、特に円安による為替差益を期待した運用はすでに危険水域に来ていることを認識し冷静に考える時期ではないか。