~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No42 昔ながらの!正しい景気回復は望めるのか?

2006年03月15日 | 景気
3/10ロイター・・・総務省が発表した1月の全世帯家計調査速報によると、全国全世帯の消費支出は実質ベースで前年比3.5%減となった。12月は同0.8%増だった。実額は29万4170円。名目では、前年比3.0%減となった。前月比(季節調整済)では、実質で1.9%減少した。



3/14ロイター・・・日本百貨店協会が発表した2月の東京地区百貨店売上高(13社28店舗)は、前年同月比0.9%減の1266億円と、4カ月ぶりに前年実績を下回った。

衣料品は0.4%増と4カ月連続のプラスとなった。婦人服関係が4カ月連続プラスになる一方、紳士服関係は4カ月ぶりにマイナスに転じた。子供服、その他衣料は引き続きマイナス。 季節需要から婦人靴、ハンドバッグ、アクセサリー中心に動き、0.4%増となった。  雑貨は外商需要低迷から2.2%減、家庭用品は14.2%減、食料品は2.6%増となった。


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相次ぐ好調な景気指標を受けて、5年ぶり量的緩和の解除に至った日本。
そんな明るいムードに水を差す指標も陰ながら出ています。家計の消費支出額が昨年対比で減少したり、高額消費が好調と伝えられたはずの百貨店売上高が伸び悩んでいたり(それも都心)・・。

景気上昇の論調が多いときには、このような暗い数字は目立ちません。報道的にタイムリーでなくオイシくないネタということです。片やいざなぎ景気超えか?と見出しが踊っているので、この手はコメントしづらいという事情があると思います、マスコミとしては。

10月から4ヶ月連続で消費者物価指数が前年比0%以上を記録しているわけですが、そもそも品目別によく見てみると、物価を押し上げている貢献度ダントツNo1は、原油価格上昇によるガソリン・灯油の値上がりです。需要が伸びて値上がりしたわけではありません。

最も上昇率が高い品目は高齢化社会の進展による「介護料」(12月59.3%UP)だというのも、妙にナットクはできますが国全体の需要増を反映しているとは言い難いものがあります。

こうして見ると、消費者物価指数というマクロ指標は国内景気の状況を正しく表している数字とはいえないと思われます。昨年の外人買いが起爆剤となった株価や不動産などの資産価格の上昇や、内需ではなく海外需要で稼いだグローバル企業の業績、政府の全面援助(我々の税金)のおかげで史上最高の収益を上げている大手金融機関など、これら今の好景気要因は当然ながら国内の実需つまり消費額や物価に関係がありません。

04年から現在までの景気拡大局面はまさに実需と関係のないところで進行しているかりそめの姿と、改めて言えると思います。

この景気拡大は「海外実需」「海外投資家」「ゼロ金利」「大企業保護政策」などをキーワードとして、ひとえにこれらがセットになってうまく噛み合っている事の成せるワザといえるでしょう。

企業の新規雇用拡大がニュースになっていますが、勤労者全体の70%を占める中小零細企業はそこまで人手不足でしょうか? 新卒者を奪い合っているのもまた、好条件に支えられた上場企業の世界の話だと思われます。

同じような主旨を昨年末(No32)書きましたが、今も状況は全く変わっていないと考えます。

蛇足ですが、量的緩和策はデフレ対策というか国内の実需にとって全く無意味な金融政策だったといわざるを得ません。ジャブジャブのマネーは内需に回らず、世界の投資家がグローバルな投機マネーとしてタダ同然でよろこんで使っただけという結果論に終わりました。

ゆえに今回の量的緩和の解除は国内景気には直接影響はないはずです。むしろ資産上昇・大企業絶好調が波及して⇒本物の実需景気回復・緩やかなインフレ⇒ゼロ金利終焉⇒マトモな金利圏へ・・・というシナリオに、仮に今後なっていくとすれば・・・

その時は、世界で唯一タダ同然で資金を調達できていた日本から海外投資家が本格的に遠ざかっていくことで資産価格が調整を迎える危険性はあるにせよ、その代わり地に足がついた昔のような(笑)本当の意味の国内景気がかなえられるかもしれません。預金にも、昔のようにちゃんと利子が付くような状況・・日銀福井総裁は本気でそれを夢見ているようです。私自身もできればいつかそういう正常な状態に戻ってほしいと思います。

インフレが続けば金利負担上昇を相殺して政府の債務も実質的に楽になる可能性もあります(これも楽観論ですが)。

しかし時間があまり無いように感じます。それまでアメリカを中心とした海外実需が持ちこたえられるのか? 世界的な金融引締めトレンドがグローバル資産バブルを崩壊させないか? 国と地方の超債務は持続可能な状態か?・・・

百歩譲って、どれも大丈夫だとしても、バブルではないマトモな景気は数年間の間に循環するものです。昔ながらの国内景気回復が構造的に永続する保証はどこにもありません。



このブログで過去に幾度となく指摘してきた米国消費が主役の「世界的ドルマネーバブル」にうまく乗っかっている現在の日本“資産+大企業”景気は、原則として米国と一蓮托生である以上、現実的には残念ながら米国がコケないよう必死で支え続けることぐらいしか今のところは選択肢がなさそうです。