死ぬ間際にタイトル決まるかも

ちと書いてみたかっただけ

なぜ君は絶望と闘えたのか

2010年10月02日 | 映画
 
1999年4月14日に山口県光市で発生した母子殺害事件。
2008年7月、被害女性の夫であり、被害女児の父である本村洋の9年間の闘いを綴った「なぜ君は絶望と闘えたのか-本村洋の3300日」が刊行されたが、その著者であるジャーナリスト、門田隆将(りゅうしょう)のドラマだ。
WoWoWの製作・放映。

この事件は覚えている。
覚えてるというより本事件は過去のものではなく、現在でも裁判は係争中なのだ。

このドラマで描かれているのは先ず、少年犯罪の加害者は「あらゆる面で司法や国よって保護されるのに対し、被害者遺族は全くそれがないこと」であるが、その他にも
・犯罪ニュースを扱うマスコミの在り方
・被告人を裁く裁判所(司法)の在り方
についても問いかけている。

それらが登場人物による鋭い一言により、ストレートに表現されてて分り易い。

例えば、犯罪ニュースを扱うマスコミの在り方について、門田が
「(マスコミは)皆、バスに乗り遅れたくないんです。行き先はどうでもいい。取り敢えずバスに乗って、マズイことになれば挙(こぞ)って降りだす。申し訳ありません。」
と語ってるし、被告人を裁く裁判所(司法)の在り方では
「『前例がこうだったから・・・2人しか殺してなかったから、無期懲役です』といった判決が許せない。事件にちゃんと向き合って被告人を裁こう、という意思がない。」
という本村の台詞がある。
併せて「(マスコミに踊らされた)世論が、裁判を変えると大変だ」という、柄本明演じる日本弁護士会の一人の台詞もドキっとした。

何といっても門田役の江口洋介がクールで良い。
元々好きだからって事もあるだろうが、演技がワザとらしくないし、熱い場面でもウザったく感じない。
門田は独身だが、江口は家庭を感じさせないこういう役が似合ってる。

眞島秀和演じる本村洋さんはテレビでよく見てたが、実はあまり好感が持てなかった。
ドラマの中のワンシーン・・・蕎麦屋で本人がいることも知らず、テレビを観てるオッサンが「何か理屈っぽそうな人やなぁ」と言うが、私も以前からそう思ってたからだ。

その後、本村が門田に「マスコミの人たちを前に話す、なんてボクにとっては本当に『非日常』なんです。だからどうしてもカメラに向かって話すと、難しい言葉を並べてしまって・・・」みたいな事を言うシーンがある。
これで本村に対しての「誤解」が少し解ける。
本村にとって優しい演出だ、と思った。
眞島は本当に熱演だった。
単純だが、このドラマで本村さんも眞島も好きになった。

                

番組は前編・後編各90分の大作。
見応えがあった。
番組製作者が「地上波の民法ではスポンサーやテレビ局の規制があり、なかなか思い通りの番組が創れない。その点、WoWoWは(基本的に視聴料金がベースとなっているため・・・かな?)制約がなく、かなり思い切ったものが創れるから良い。」と、何かの記事で読んだことがある。
この番組の中でも、マスコミ企業の都合によって、いくつもの「真実」や「正義」が葬られていることに触れている。

裁判は現在でも係争中だが、このドラマのラストは・・・・・以降ネタバレだが・・・・・
2008年に広島高等裁判所で下された死刑判決で幕を閉じる。
事件発生から9年の長い歳月が経っている。
が、死刑判決の決め手になったのは「情状酌量の余地があるという事で、前回までの裁判では無期懲役の判決であったが、今回までの長い歳月の間に行ってきた被告人の『虚偽の証言など卑劣な行為』は、これに当てはまらない。」というもの。
長い歳月を経た結果の皮肉なものになっている。

死刑判決後、接見した著者が「死刑判決をどう捉えた?」という質問に対し「胸のつかえがとれた。」という被告人の台詞が心に残った。
ドラマの最後に流れる「この作品に協力してくださった皆様に心から感謝いたします」というスーパーに重みが感じられた。
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