好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

『ラスト・ビジネス』第35話「最後の仕事(ビジネス)」

2018-06-07 | ゲームブック二次創作
マティウスの姿は、瞬く間に歪み、引き延ばされるように薄くなって消えた。
元通り、普通の石造りになった部屋。
窓から外の光が射してきている。

「うーん。何だか、簡単にやられちゃった気もしますね」
「……そうだな、自分の銃弾を避けられるのではと思ったんだけれど」
「もしかしたら彼も、わたくし達に止めてもらいたかったのかもしれませんわ。
 あの方の心が悪魔に勝ったのです」
「そっか。とにかく、やっとこれで終わりだな」

――ダメだよ、おにいちゃん。最後の仕事が残ってる!

「!?」

子供の声が聞こえたような気がして、俺はエリュテイアのペンダントを見た。
宝石は、青い光を放っている。
俺は視線を巡らせた。
よく見ると、部屋の中に、黒い端切れのようなカケラ達が散っている。
もっとよく見ると、その中に一つ、他の物より一回り大きいのがあった。
考える前に、俺は白銀のナイフを投げ放っていた。

ナイフがカケラに刺さった瞬間、世にもおぞましい断末魔が響きわたった。
突如、大風が荒れ狂い、俺たちは慌ててその場に伏せた。
静まってから体を起こすと、エリュテイアのペンダントに、
何かがすぅっと吸い込まれていくのが見えた。