【ワシントン=中山真】
米情報機関がインターネット上の個人情報などを収集していた問題を巡り、米政府はメディアに暴露した米中央情報局(CIA)元職員の刑事訴追を急ぐ。
ただ、元職員が香港に逃亡したことで、身柄引き渡しには中国の意向が絡む。米議会には暴露の背後に中国当局の存在を疑う声もあり、米中の新たな火種が生まれる可能性がある。
米政府は暴露したCIA元職員のエドワード・スノーデン氏をどのような罪状で起訴するか、慎重に検討を進めているもようだ。
香港は米国との間で犯罪人引き渡し条約を結んでいるが、米国は同氏が引き渡しの例外となる「政治犯」と認定されるのを避けたい。
身柄引き渡しは中国の意向も絡むため、難航するとの見方が出ている。
米下院情報特別委員会のロジャース委員長(共和党)は13日、国家安全保障局(NSA)から非公開の説明を受けた後「中国との関係を徹底的に調べる必要がある」と強調。スノーデン氏と中国当局との関係に言及した。
NSAが大手通信会社のベライゾンから通話記録を提出させていたことや、インターネット上にある情報の秘密収集活動の存在が、欧米メディアによって明らかになったのが6日だ。
その直後にサイバー問題が中心議題の一つとなった米中首脳会談がカリフォルニア州で開かれた。
もしスノーデン氏が中国当局の指示で動いていたならば、米中首脳会談直前に問題を暴露することで、中国のサイバー攻撃を非難する米国をけん制しようとしたとの見立ても成り立つ。
スノーデン氏は香港紙の取材に「米側が中国をサイバー攻撃していた」とも証言し、中国が主張してきた「我々も被害者だ」との立場と一致する。
当のスノーデン氏は外国政府との関与を否定。議会内でも「具体的に中国とのつながりを示すものはない」との声もあり、現時点では真相は闇の中だ。
中国政府はスノーデン氏の身柄や言動について沈黙しており、同氏による暴露の動機解明も今後の焦点になる。
日経記事2013.06.15より引用