日本の「死の商人」の懐を儲けさせた政府ー企業の癒着システム

日本の「死の商人」の黄金期（満州侵略・中国侵略・太平洋戦争）https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/38b134bffd2398a75752aa317e96e8e7

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『軍需インフレ』の源泉である軍事費の中から、民間の軍需工業に支払われる部分は陸軍８０％、海軍７５％と言われていました。

その大半は『前渡金』、つまり前払いの形で支払われました。　しかも軍需品の発注高は、各企業の生産能力をはるかに超えるものでした。

すでに１９３８年（昭和13年）、つまり太平洋戦争の始まる３年前においてさえ、三菱重工業は生産能力の４．２１倍、池貝鉄工所は３．３１倍の未消化受注高をもっていました。

満腹で苦しくうなっている人間の前にこれでもかとごちそうを与えていたんでした。　もちろんこれは政府と『死の商人』の民間の間の癒着で、政治家がむりやりに竿ビスしているようなものでした。

 

そればかりではありません。軍需品の発注とこれに対する支払いは文字通り滅茶苦茶でした。　
たとえば、１９４５年（昭和２０年）４月の会計検査院の臨時軍事費決算検査報告は、軍需品の価格査定、納入、前渡金支払いなどについて、法令に違反したもの５３件、５億２６００万円を指摘し、「措置よろしきを得ない」と非難しています。

つぎにこの報告にあげられた２、３の実例を上げます。

（１）１９４４年（昭和１９年）４月、陸軍省航空兵器総局は興東特殊鋼株式会社という会社に自動車５０台を発注しました。　前渡金４３万円余を支払いましたが、期日までに納入されたのはわずか一台でした。

にもかかわらず、ひき続いて同年１１月には５００台、１２月には２２０台、翌年１月には１６０台と合計８８０台の追加発注が行われ、契約高の三分の二ないし十分の八に当たる前渡金４１３万円余が支払われました。

しかしこの会社は依然として製品をほとんど納入せず、敗戦までに納めたのはわずか３１台だけでした。　６，７００台分に当たる金を前取りしておいて納入がただの３１台とはひどい話です。

 

（２）契約に際して行われた価格の査定の乱脈ぶりも酷いものです。　海軍経理部が東洋鑪伸銅株式会社に対し原材料を支給して加工を請け負させた〇式金物（曲射法甲１１年式榴の加工賃は造兵廠でやれば、一個わずか５円７０銭のものが、なんと４倍近くの２２円でした。　

（３）某航空会社の１９４４年（昭和19年）6月の決算によると、資本金３００万円に対し、「兵器等製造事業法」による官設備は１億円、前渡金は２億３４００万円、つまり自己資本は総額のわずか８．２％に過ぎませんでした。

（４）三井化学の子会社「日本化工」は軍と結びついて防毒面の加１６０％に及ぶ利益を上げました。

 

軍需製品の花形、航空機産業における『前渡金』は大きな比重を占めてますが、戦争が長引くにつれ、『前渡金』は年々増加の一途をたどり、それは敗戦直後には、三菱重工業一社だけでも１３億円に達しています。

昭和１８年上半期には、主要軍需会社の外部負債は自己資金の２倍以上にのぼりましたが、そのうち臨時軍事費の『前渡金』（買上未決算、前渡金、仮払金等の大部分を含む）は圧倒的で。航空、造船、機械の三大軍事部門では、その比重は５０～７０％に及びました。

 

 

（関連情報）

・明治維新　「死の商人」大倉財閥の始祖　大倉喜八郎https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/de59f5b27fef6bcc03d68fc93e1340a2

・明治維新　日本の「死の商人」三菱財閥の祖　岩崎弥太郎https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/98a159e6c384d72d1b605ede523acd4d

・日本で最初の民間兵器工場　室蘭の『日本製鋼所』そしてジーメンス・ヴィッカース事件https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/36c003cef7e69b41c9f52fa000462461

・寺内陸相の『泰平組合』という「死の商人組織」https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/14731ae702543030fc714ab55bbb4e5d

・日本の「死の商人」の黄金期（満州侵略・中国侵略・太平洋戦争）https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/38b134bffd2398a75752aa317e96e8e7