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株高、NISA世代が支え手 個人株主最多の7000万人

2024-07-02 23:21:42 | 日本経済・金融・給料・年金制度

日経平均株価が2日、3カ月ぶりに4万円を超えた。

この支え役になっているのが、1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)をきっかけに投資を始めた個人投資家だ。

 

2023年度の個人株主数(延べ人数)は前年度比462万人(7%)増の7445万人と過去最高を更新した。

企業が株式の持ち合い解消で売り圧力を強めるなか、個人と外国人がその受け皿となる構図となっている。

 

東京証券取引所など国内の4証券取引所は2日、23年度の株式分布状況調査を発表した。

個人の株主数は1949年度の調査開始以来で最高となり、10年連続で増えた。上場廃止の影響で70万人減った半面、株式の分割や売買単位引き下げにより247万人増えた。

 

この個人株主数は上場企業の株主数を単純に足した延べ人数だ。株式の名義書き換えをする証券保管振替機構(ほふり)が実際の株主に近い人数を集計している。

こちらは23年10月〜24年3月で1525万人と前年同期比で約36万人増えた。

 

個人株主の広がりの背景にあるのは1月に始まった新NISAだ。

株式の個別銘柄と投資信託を購入できる「成長投資枠」と、投信を積み立てる「つみたて投資枠」からなる。購入可能額は合計で年360万円に拡大し、個人が長期の資産形成に活用しやすくなった。

 

金融庁の調べでは、3月末時点のNISAの口座数は約2322万口座と23年12月末から10%増えた。14年に旧NISAが始まってから23年末までの累計買い付け額は35兆円だったが、24年1〜3月だけで6兆円増えた。

日本証券業協会によると、1〜5月のNISA口座の買い付け額(約6兆6000億円)のうち8割が成長投資枠で、そのうち個別株が6割を占める。投資信託では海外株式型が人気だが、個別株は9割以上が日本株に向かう。

 

個人はどんな銘柄を購入しているのか。主要証券10社に1〜5月のNISA口座経由の買い付け状況を聞いたところ、個別株トップはNTTだった。

23年6月末に株式を25分割し、1万5千円程度で購入できる。投資に回す資金余力の小さい若年層には魅力的だ。

 

 

2位は三菱UFJフィナンシャル・グループ、3位は日本たばこ産業(JT)だった。共通するのは株価に対する年間配当金の割合を示す指標である配当利回りが高い点だ。

三菱UFJは25年3月期まで4期連続の増配を計画する。JTは配当性向75%を掲げる。配当利回りは4%台と、日経平均株価の構成銘柄の平均(2%)を上回る。

 

金額ベースでみると、個人の存在感は薄れる。個人株主比率は0.7ポイント低下の16.9%だった。

日経平均が2月に1989年の大納会でつけた最高値(3万8915円)を更新する過程で、多額の投資残高を持つ高齢投資家から利益確定の売りが膨らみ、23年度を通じての売越額は3兆8165億円あった。

 

もっとも若年層の利用が目立つ新NISAでのつみたて投資は長期投資を前提にしているため売られにくい特徴を持つ。

マネーの世代交代は、4〜6月期にもたついてきた日経平均が4万円を回復する原動力になった。

 

23年度に日本株を最も買ったのは外国人株主だ。日本株保有比率は31.8%と前年度比1.7ポイント上昇し過去最高だった。

 

 

 

東証が23年3月に上場企業へ資本コストを意識した経営を要請し、改革に取り組む日本企業の裾野が広がった。

日立製作所は子会社売却など構造改革が評価され、海外株主比率が23年度に51%と前の年度比5ポイント弱増えた。

 

三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之氏は「外国人は米欧や中国との相対比較で日本株を選んでおり、NISAを含む資産運用立国やデフレ脱却への期待が大きい」と指摘する。

対照的に株式の積極的な売り手に回っているのが事業会社だ。事業法人の保有比率は19.3%と、22年度に比べて0.3ポイント下がり過去最低を更新した。

 

日本企業は戦後、安定株主づくりの一環として取引先や財閥、グループ間で株式を持ち合ってきた。

経営の規律がゆるむとして海外の機関投資家から批判されたが、足元でその解消が加速する。

 

トヨタ自動車は23年度に政策保有株を含めて合計約3300億円の株式(非上場株含む)を売却した。大手銀行や地方銀行の株式保有比率も2.1%と過去最低となった。

大手損害保険4社はカルテル不正などを受け、2月末にそろって政策保有株をゼロにすると表明した。23年3月末時点で約6.5兆円に上る株式が削減対象となる。

 

 

 

持ち合ってきた政策保有株の売却は今後も増える見通しで、外国人や個人がこの受け皿になる可能性が高い。

ルネサスエレクトロニクスは23年度に日立やNECなどが保有株を売り出し、海外株主比率が40%弱から47%に増加した。

 

岸田文雄政権は個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の拠出限度額の引き上げを検討するなど、個人の「貯蓄から投資」への流れを促す施策を進める。

若年層による自助努力の資産形成が定着してくれば、企業が国内外で稼ぐ成長の果実を個人が取り込みやすくなり、家計の一助とする効果も見込めそうだ。

(上田志晃、越智小夏、本脇賢尚)

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

ひとこと解説

税優遇策によって健全なリスクテークを促す政策が効果を発揮しつつあるように見えます。

昨年4月以降、とくに今年に入ってからの株価上昇または比較的高水準で推移する傾向が、国内株式投資への関心を高めているように思います。

ただ国内投資家による熱心な投資行動は目立っていないように思います。

売買は外国人投資家が7割前後となっており、外国人の存在感が大きい相場になっているように見えます。

さらに円安による企業収益の改善や米国の経済・株価も日本の株価に大きく影響していますので、企業がもっと積極的に投資を行って稼ぐ力と生産性が高まっていくことを期待しています。

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日経記事2024.07.02より引用
 
 
 
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