トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ 船舶仲買業に就職
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不快な大都市上海
父ベリーは長らく沿岸警備隊長を務めていたと言っても、熟知しているのは、せいぜい本国のみ。 このため、トーマスを同伴しこれまで一度も見たことのない他国を見学できることをトーマス以上に喜んでいた。
また当時は蒸気船(帆船併用)といえども燃料は石炭や薪であり、数十キロ走ると各港に立ち寄り、燃料を補給せねばならなかった。
、グラバー父子は、まずはイギリス本国を南下、ドーバー海峡を経て、イギリス海峡へ、さらにフランス、ポルトガル、西アフリカ、南アフリカの喜望峰を経て、ようやくインド洋へと顔を出した(この頃スエズ運河は未完成)。
JM商会の本社がある香港へ親子が現れたのはアバディーンを出発して実に六ケ月後の六月と言われている。 タフで好奇心の旺盛な親子は長い船旅の疲れも見せず、翌日にはグラバーの勤務地となるJM商会の上海店へ向けて出発知った。
初めて香港に降り立った時のグラバーは、とても小綺麗でにぎやかな町だと好感を持った。それから二日後に着いた上海の街は、香港よりもさらに賑やかで外国人も多数いた。
然し、何となく不潔感のある町で事実、嫌な臭いがグラバーの鼻腔をついた。 但し、彼が務めることになっているJM商会の上海店は海岸通りに面した外国人居留地の一角にあり、嫌な臭いはいつのまにか消えていた。
当時の清朝はアヘン戦争の敗戦により、南京条約全十三条を締結、イギリスは五つの港の解放と多額な賠償金、新たな英・清朝間の外交通商関係などを勝ち取った。
グラバー父子が初めに立ち寄った香港はこの戦勝により奪い取ったものであり、清朝の最大の港、上海開放も戦勝によるもの。 父ベリー・グラバーはジャディとマセソンの二人に
「くれぐれもトーマスをよろしく頼みます。 しかし、決して甘やかすことことなく、厳しく仕事を教えて欲しい」。 そう言い残してスコットランドへと戻っていった。
トーマスは旅の余韻に浸る間もなく、貿易商社マンとしての第一歩を踏み出した。 しかし、働く場所こそ変わったものの、仕事の内容はアバディーンで体験した帳簿の作成、複写、船荷証券の作成など、グラバーにとっては全く魅力を感じることのない仕事であった。
「こんな仕事で一生を棒に振るなど、まっぴらごめんだ」。仕事を始めて十日も経たない間にグラバーは帳簿作成に嫌気がさし始めた。
「自らは大きな仕事に取組み帳簿の作成は部下にやらせる。 自分は人の上に立つ大物なのだ」。 とグラバーは早くも次の人生のユメを見始めていた。
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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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